2008年07月03日

阿房列車物語―百鬼園回想  平山三郎

阿房列車では百關謳カと同行するヒマラヤ山系氏という人物が出てくる。阿房列車での彼は朦朧だの曖昧だのどぶ鼠だのけっこうな書かれようである。これはある意味親しいということなのでもあるのだが、この本はその山系氏こと平山三郎が書いた百關謳カの思い出本である。
先生の生い立ちから阿房列車についてのこと、さらに先生逝去後に書かれた思い出話などが盛り込まれている。
阿房列車についての文章は先生の文章をなぞるくらいであって平山さんからみた阿房列車についてのことがあまりかかれてなかったのがちょっと期待はずれではあったが、入魂の間柄だけに先生と平山さんの交流などが綴られていて、そこから先生の人柄がしのばれる。
平山さんに子供ができたとき、百關謳カは名前をいろいろ考えるのだが、男の子の名前ばかりを考える、しかもそれが杉一郎だの杉之助だの杉人だのなぜか杉のつく名前ばかりである。これはいずれも杉並区の杉をとったものということだったのだが(平山さんが住んでたところ)案に相違して女の子が生まれた。でもそこでつけてくれたのは比奈子というかわいらしい名前。
先生はどこまでが冗談なのか本気なのかよくわからないところがあるなあ、と笑ってしまった。
阿房列車物語―百鬼園回想 (1981年)
阿房列車物語―百鬼園回想 (1981年)平山 三郎

論創社 1981-03
売り上げランキング : 310408


Amazonで詳しく見る
by G-Tools
タグ:百關謳カ
posted by てけすた at 21:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 本のこと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年07月01日

阿房列車シリーズ 内田百

「第一阿房列車」の冒頭で「なんにも用事はないけれど、汽車に乗って大阪へ行ってこようと思う」と書いてるとおり、「阿房列車」とは汽車に乗って降りたところで泊まっては酒を酌み交わし、時間があればその土地を見てまわる、という時間の使い方が大変贅沢な旅の随筆である。
同行者ヒマラヤ山系さんとのどこかとぼけた会話や、百關謳カ独特の観察眼が大変に楽しい。
旅の先々で出会う国鉄の人をAさんとかBさんというふうな味気ない言い方でなくて垂逸さんや何樫さん、甘木さんという風に名前っぽく読んでるのがなんともいい。
で、垂逸さんとか何樫さんはわかったのだけど、甘木さんがどういう由来なのかわからなかった。
「第三阿房列車」の阿川弘之の解説でその由来が書かれていて納得。縦書きの妙ですな。
「特別阿房列車」で出てきた宿泊料金の話とか、「列車寝台の猿 不知火阿房列車」のちょっと幻想小説っぽい内容など、面白い文章の見本みたいのが見られるのもまた楽しい。
第一阿房列車 (新潮文庫)
第一阿房列車 (新潮文庫)内田 百けん

新潮社 2003-04
売り上げランキング : 99514

おすすめ平均 star
star近代紀行文学の代表作?!
star列車に乗る心
starなぜか眠くなる本。

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

第二阿房列車 (新潮文庫)
第二阿房列車 (新潮文庫)内田 百〓@6BE1@

新潮社 2003-10
売り上げランキング : 43184

おすすめ平均 star
starマイペースさんの記録にマタリ。
star理系的
starいかに旅・人生は現と幻の狭間を行き来するものであるのか?

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

第三阿房列車 (新潮文庫)
第三阿房列車 (新潮文庫)内田 百〓@6BE1@

新潮社 2004-06
売り上げランキング : 100150

おすすめ平均 star
starなまけるには体力が必要
star粒がそろっています。
star成る程と心底納得できる言葉を知りたくはありませんか?

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
posted by てけすた at 12:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 本のこと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年06月26日

鬼麿斬人剣 隆慶一郎

打った刀は「四谷正宗」と名高い刀匠山浦環源清麿が自決した。弟子の鬼麿は師匠が息絶える直前に、昔旅の途中で数打ちした粗略な刀を見つけて折って欲しいという遺言をされる。
だが、詳しい数や場所は述べなかったので鬼麿は手がかりがあまりないままでの探索へと出ることになる。
清麿に拾われる前は山人として暮らしていた鬼麿は野人のごとき気質でその巨大な体躯から繰り出される剣は近寄るものことごとく切り裂くほどの腕前である。
清麿の旅が曰くありだったため、鬼麿の探索旅もそれに絡んだ敵や障害が登場する。それを持ち前のたくましさで次々と切り抜けていく様子は実に痛快である。
また鬼麿の磊落な魅力はもちろんのこと、師匠の足跡を辿るこの旅で、読者にも清麿の人となりがだんだんと浮かび上がってくる。
最初は晩年の酒で身を持ち崩してしまった哀れな人にしか見えなかった人物が、だんだんと魅力的な人物に見えてきたのであった。
鬼麿斬人剣 (新潮文庫)
鬼麿斬人剣 (新潮文庫)隆 慶一郎

新潮社 1990-04
売り上げランキング : 87293

おすすめ平均 star
star気軽に読める決闘小説
star隆慶一郎の源流
star細かいところには目を瞑って・・・

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
タグ:伝奇小説
posted by てけすた at 21:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 本のこと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年06月25日

雲奔る(小説雲井龍雄) 藤沢周平

米沢藩士雲井龍雄は秀才の誉れ高く、勉学を続けていくうちに、学問よりもそこから見える社会の動きに心を惹かれるようになる。彼が生きた時代はちょうど幕末維新の頃であり、龍雄は最初に反幕攘夷、幕府がなくなってからは討薩の志を強くもつ。
幕末の時代といえばどうしても西南諸国を中心にした小説をイメージしてしまうのだが、これは反対側からみた幕末の小説である。
史実をなぞる部分が多くてあまり小説を読んでいる感じがしない。雲井龍雄の激烈な熱意と行動は彼個人の性格もあるのだろうが、また幕末という時代に生きる志士そのものでもあるのだろう。
歴史小説を読んでいていつも不思議に思うのは歴史のある時期に優れた人物が次々出てくることがあって、それが歴史の要請なのか、優れた人物が多いから歴史が動くのかどちらなんだろう、ということだ。たぶん両方なんだろうが、この本もそんな思いを感じた一冊。
雲奔る―小説・雲井竜雄 (文春文庫 (192‐4))
雲奔る―小説・雲井竜雄 (文春文庫 (192‐4))藤沢 周平

文芸春秋 1982-01
売り上げランキング : 266491


Amazonで詳しく見る
by G-Tools
タグ:歴史小説
posted by てけすた at 21:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 本のこと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年06月23日

魔の山(上)(下) トーマス・マン

サナトリウムへ従兄のヨーアヒムを見舞いと自身の軽い休養を兼ねて3週間の予定でやってきた主人公ハンス・カストルプはその場所と「平地」とサナトリウムの住人たちがいっている通常の世間との違いに最初はとまどいつつだんだんと感化されてゆく。
病気と死が近いこの地では市民生活といえるべき「時」に縛られることがなくなりある意味自由な生活を送っているのではあるが、果たしてそれはどういう意味を持っているのだろうか、と思わされる。
セテムブリーニというイタリア人がハンス・カストルプにこの「上」に染まることを危惧し、幾度も警告をする。
このサナトリウムでは主人公は単純かつ明朗な青年から精神的に深みのある青年へと変化を遂げてゆくのであるが、同時にそれは「平地」との生活からだんだんに切れてゆくことを示していた。
社会生活を真っ当に送ることは人間として当然の営みであって理性と進歩を掲げるセテルブリーニの言葉には安心できる明快さがある、がなぜか「興ざめ」する。一方ナフタの恐怖を軸とした全体主義にも傾聴したくなるような論理があるが、明らかに嫌悪すべき内容である。
この2つの対立をハンスがどう捉えたのかは本文に譲るとして、洗練されるということは退廃するということと同義語になりうること、また痛快だったのは病は人を賢くするという通説に対する反論がこの小説のあちらこちらに見られたことであった。
それにしても、この本は分厚い。上下巻とも600ページくらいあり、ハンスはいつ「平地」に戻れるのか、と思うのと同じくらい、この本はいつ読み終われるだろうか、という思いをしばしば持った。
魔の山〈上〉 (岩波文庫)
魔の山〈上〉 (岩波文庫)関 泰祐 望月 市恵

岩波書店 1988-10
売り上げランキング : 117093

おすすめ平均 star
star教養小説って響きは堅苦しいけど
star買いですが・・・。
star文庫本は2人訳者

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

魔の山〈下〉 (岩波文庫)
魔の山〈下〉 (岩波文庫)関 泰祐 望月 市恵

岩波書店 1988-10
売り上げランキング : 145638

おすすめ平均 star
star日本人が全く知らない世界−−例えば172ページを読んでみよう。
starトーマス・マンの時間芸術(下)
star哲学的な小説

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
posted by てけすた at 21:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 本のこと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年06月20日

よくなってるのかわるくなってるのか (モリー先生との火曜日を読んで)

今1日置きにシングレアを服用。1日おきにセレベント吸入。毎日1度のパルミコート吸入というスケジュールで喘息管理をしている。
調子はすこぶるいいが、じゃあ、ためしにシングレアを抜いてみましょうかとばかりに飲まないとセレベントを代わりに吸ってもPF値が上がらなくなってきた。
PF値の記録を見ると、去年はシングレアを飲まなくてもそこそこの値を保っていたのでなんとなく状態が下がってきてるのではないかと危惧してしまう。
そんなことを考えてしまうのも、「モリー先生との火曜日」という本を読んでしまったからなのであった。
あの本は難病のモリー先生がかつての教え子に人生の意味、死にゆく人間からみたもの、そういったことを伝えてそれはそれで感動的ではあるのだが、それよりもモリー先生が日ごとに身体を動かすことができなくなってゆくことに私は恐れおののいた。
いつしか、人はよくなることのない場面へ突入してしまうことがある。
喘息がもしそうだったらどうしよう、という恐れが先にたってしまったのだ。
モリー先生自体はそういった感情もまた堪能してそこから離れるということをやっているといってはいるけど、なんだか恐ろしいですよ。
まあ、でも自分が社会文化に適応できなくなってきたときに、世の中に流布している価値観などを後生大事にもっていても仕方ない。自分の文化を作り出さなければ、という指摘には全くそのとおりだなあ、と思った。
モリー先生との火曜日
モリー先生との火曜日Mitch Albom 別宮 貞徳

日本放送出版協会 1998-09
売り上げランキング : 13149

おすすめ平均 star
star現代社会の垢を落としてくれる作品
star家族を大切にしてささえあい生きていく人生
star心が温まりました☆

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
タグ:喘息
posted by てけすた at 21:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 本のこと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年06月16日

ちくま日本文学001 内田百

以前「阿呆の鳥飼」を読んでなんとなくその可笑しみのある文章は好感が持てたのだが、他に読みたい本があってそのまま1年以上も経過してしまった。
最近「百年の誤読」という本で百關謳カが蜀山人の「人が来るのはうっとうしいがあなたのことではない」といった意味の文言をもじって「人が来るのは楽しいのだけどお前のことではない」といったようなことを書き出して玄関に貼ってあった、と紹介してたのを読んで俄然興味がわいてきた。
とはいえ、なにを読んでいいのかわからないのでとりあえずこの本を選んでみた次第。
特異な幻想小説が前半に、読んで面白い随筆は後半に載っている。幻想小説のほうは時代背景の違いもあってわかりにくい部分があったが、自分が件という牛の化け物になる「件」は最高だった。自分はどうやらこういうものになってるらしいが、見学にくる野次馬が件の性質をああだこうだと喋っててそれに対抗する様子が面白い。
百關謳カはよく借金をしてたそうであるが、「無恒債者無恒心」で給料日は取立てがくるので憂鬱だといってしまう、その思考の仕方が斬新だった。なければ返済のしようがないので気楽だというのである。
借金する人というのは給料日をそんな風に考えてるのだろうか?と素朴な疑問。
内田百 [ちくま日本文学001] (ちくま日本文学 1)
内田百 [ちくま日本文学001] (ちくま日本文学 1)内田 百

筑摩書房 2007-11-20
売り上げランキング : 97254


Amazonで詳しく見る
by G-Tools
タグ:百關謳カ
posted by てけすた at 12:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 本のこと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年06月14日

逆軍の旗 藤沢周平

藤沢周平はどちらかというと架空の物語、すなわち時代小説を書く作家というイメージがあるが、この本は歴史を題材にした短篇小説集である。
表題「逆軍の旗」は明智光秀が本能寺の変を起こしたときの前後を描いた作品。「上意改まる」は兄がいささか我を張る性格で、それがために招いた悲劇を、「二人の失踪人」は敵討ちの話、そして「幻にあらず」は後年遺作となった「漆の実の実る国」の素描ともいうべき上杉鷹山の話である。
どの作品も藤沢周平らしい人間の弱さとその弱さゆえに自分を奮い立たせる奮闘の様子が描かれている。
とくに「逆軍の旗」では光秀の信長に対する恐れと、それがための本能寺の変を起こす決意というものからそれを感じ取ることができる。
著者自身もあとがきで光秀の謎が深まったと書いてるように、彼がどのような心境で事を起こしたのかそれは想像することしかできないが、この作品での、権力の前で立ちすくむ人間としての光秀に共感や同情を覚えた。
逆軍の旗
逆軍の旗藤沢 周平

文芸春秋 1985-03
売り上げランキング : 166780

おすすめ平均 star
star登場人物と共に、悔しさをかみ締め
star読み難い
star短編の名手が描いた、明智の三日天下

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
タグ:歴史小説
posted by てけすた at 20:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 本のこと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年06月10日

人間臨終図巻(全3冊) 山田風太郎

15歳の八百屋お七から始まる、古今東西いろんな人間の臨終の様子を集めた本。1000人近くの人間の死がそこには盛り込まれている。
これだけたくさんの死について読んでも、なお自分の死というものはわからないものだが、一つ感じたことは、自分の死ぬ時期というものは案外自分でわかるものなのではないか、ということである。
というのも、縁起を担いでわざと散らかしっぱなしの部屋で旅行に出かけてた向田邦子が事故でなくなる1ヶ月前に妹が見た部屋はきれいに片付いてた、というエピソードを初めとして、自分がもう死ぬということをわかってるのだろうか、と思わせるようなエピソードを残した人が結構いたからである。
残念ながら
いかなる人間も臨終前に臨終の心象を知ることが出来ない。いかなる人間も臨終後に臨終の心象を語ることができない。なんという絶対的は聖域。
―山田風太郎―

なのであるが。
まあ、それにしても、えんえんとこの本を書きつづけた著者には尊敬の念を覚えるな。
ちなみに、著者本人は
1922-2001年79歳で没す。(Wikipedia山田風太郎の項より
人間臨終図巻〈1〉 (徳間文庫)
人間臨終図巻〈1〉 (徳間文庫)山田 風太郎

徳間書店 2001-03
売り上げランキング : 7672

おすすめ平均 star
star若く死んだ順に有名人を紹介
star歴史をかいま見る
star死に様偉人伝

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

人間臨終図巻〈2〉 (徳間文庫)
人間臨終図巻〈2〉 (徳間文庫)山田 風太郎

徳間書店 2001-04
売り上げランキング : 55363

おすすめ平均 star
starこれも買い
star戦中派の歴史観
star絶対損はしない

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

人間臨終図巻〈3〉 (徳間文庫)
人間臨終図巻〈3〉 (徳間文庫)山田 風太郎

徳間書店 2001-05
売り上げランキング : 58314

おすすめ平均 star
starこれも買い
star戦中派の歴史観
starハイ、それまでよ!

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
タグ:臨終
posted by てけすた at 20:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 本のこと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年06月05日

こまった人たち(チャペック小品集) カレル・チャペック

この小品集は寓意に満ちている内容を選んで編纂したものである。
チャペック一流の観察眼が見事に言語化されており、ユーモアにも溢れている。
前半は短い小説がいくつか、後半は寓意にみちた数行の文章集だ。
ひょうたんからこまといった感じで事故を起こしたら相手にとってよいことが起こったのに、その後その相手から賠償を求められるという不条理な話や、特異な能力をもった人物が回りにその能力を見せようとしたところ「専門家」と呼ばれる人たちが彼にあれこれ指図してその能力が発揮できなくなるような話など、皮肉が炸裂したような作品があったり、戦争に関わる箴言や警句もあり、イデオロギーの残酷さを示してくれる。
後半の寓話集の中で好きなのがこれ。
水に浮かぶ材木
このわたしにどんな泳ぎ方をしなきゃならないか、あの鱒が語るだろうよ!あの無知な奴が!実際、あいつは流れに逆らって泳いでいるんだぜ!

こまった人たち―チャペック小品集 (平凡社ライブラリー)
こまった人たち―チャペック小品集 (平凡社ライブラリー)Karel Capek 飯島 周


Amazonで詳しく見る
by G-Tools
タグ:警句
posted by てけすた at 21:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 本のこと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年06月04日

まとめて読書メモ

「百年の誤読」 岡野宏文 豊ア由美
20世紀のベストセラーを斬りまくる対談。
教科書に出てきたような作品や作家が面白おかしく(?)批評されてます。
なぜか「これは読んで欲しい」という評価にはあまり食指が動かず突っ込みどころ満載の貶されてる作品などが読みたくなるという不思議。
例外として貶されてるわけじゃないけど百關謳カが読みたくなってきた。まだ随筆1冊しか読んだことがないもので。
しかし、近年になるほど文芸書がベストセラーになりにくくなってるものだなあ、と一覧表をみて実感。
百年の誤読百年の誤読
岡野 宏文

ぴあ 2004-10
売り上げランキング : 18667
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


「テースト・オブ・苦虫5」 町田康
このシリーズだんだん感想が書きにくくなってまいりました。
謎の随筆集となってきております。
話題の降りかたがライフハック系です。でもオチはダメさ加減炸裂です。
テースト・オブ・苦虫 5 (5)テースト・オブ・苦虫 5 (5)
町田 康

中央公論新社 2007-11
売り上げランキング : 95724

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


受難像(カレル・チャペック小説選集1) カレル・チャペック
哲学と宗教に関連した掌編小説集。
「足跡」という小説で雪原に1つだけついた足跡について2人の人間があれこれと考えるのだが、神や神秘の暗喩としてうまい表現だなあと思った。
他の小説にも神秘や奇跡の考察が含まれているのだが、悲しいことにそれがなにを意味するのかがよくわからない馬鹿者なのだった。
もう少しあとになればわかってくるだろうか?
チャペック小説選集 (1) 受難像チャペック小説選集 (1) 受難像
カレル・チャペック

成文社 1995-11
売り上げランキング : 476055

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
posted by てけすた at 21:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 本のこと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年05月31日

テースト・オブ・苦虫2 町田康

テースト・オブ・苦虫2はまるで随筆のパロディである。
小説家兼ロッカー兼デザイナー兼VJ兼フリーターという職業柄…
といった表現は幾つかの作品に使われてるのだが、それがいずれも最後に「フリーター」とつけてしまう可笑しさ。また町田康作品特有の自意識過剰さが随筆にありがちな言い回しのパロディと化してしまってる、そのユニークさ、などといったことが私にそう感じさせてるのだろう。
爆笑したのは「男の随筆」
書き出しに
この原稿をいま**で書いている、なんて書き出しの随筆をときおり読むけどカコイイね。
ときて、能書き垂れずに核心をつくような感がいいというのだが、その実それを自分でやってしまうにはテレがあるのかくだくだと能書きを垂れ始めるのである。そしてようやく、自分もその書き出しをした後の「やってしまった」感とそれに続く能書き垂れながらの文章がなんとも自意識むんむんで面白かった。
テースト・オブ・苦虫〈2〉
テースト・オブ・苦虫〈2〉町田 康

中央公論新社 2006-05
売り上げランキング : 141984


Amazonで詳しく見る
by G-Tools
タグ:随筆?
posted by てけすた at 19:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 本のこと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年05月29日

魔界転生(上)(下) 山田風太郎

山田風太郎の柳生十兵衛シリーズの第2作目。自分の人生に不満でこの世に執着を残しそうな傑物を集め魔界転生させ、幕府に一矢報おうと紀州藩に近づいた森宗意軒たち。宗意軒は十兵衛も魔界転生させて仲間に加えようとするのだが、紀州の家臣がとんでもない光景を目撃し十兵衛に紀州のことを頼むため、転生したものたちと十兵衛は対立することになる。
映画にもなった有名な小説であり、その妖しさは1作目の「柳生忍法帖」を凌ぐ。
だが、ちょっと想像すれば十分に血なまぐさいシーンはたくさんあるにも関わらず、どこか妙にからっとした雰囲気があってあまりおどろおどろしい感じがしないのがいい。
というか、ところどころにある作家の解説がツッコミ系なのがその原因なんでしょうか?
魔界転生(上)―山田風太郎忍法帖〈6〉 (講談社文庫)
魔界転生(上)―山田風太郎忍法帖〈6〉 (講談社文庫)山田 風太郎

講談社 1999-04
売り上げランキング : 219517

おすすめ平均 star
star忍法帖、一二を争う大作
star面白さの求道者
star昔の娯楽大作

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

魔界転生(下)―山田風太郎忍法帖〈7〉 (講談社文庫)
魔界転生(下)―山田風太郎忍法帖〈7〉 (講談社文庫)山田 風太郎

講談社 1999-04
売り上げランキング : 72378

おすすめ平均 star
star伝奇小説の最高傑作!
star魔界転生
star吉川英治VS山風

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
posted by てけすた at 20:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 本のこと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年05月23日

忍者丹波大介 池波正太郎

元甲賀忍びの大介が秀吉死後、にわかにきな臭くなってきた世の中で甲賀の頭領から仕事を命ぜられるが、それが大介にとっては信義にもとることであった。
戦乱の世で裏切りや策謀が渦巻き、信義を重んじたという甲賀忍者もその渦に巻き込まれてしまう。
そんな中で一人、自分の心に忠実に生きようと生まれ育った丹波村に由来させて丹波忍者と名乗り、真田幸村との縁を経て、関が原の戦いへと話は展開する。
人には戦時に力を発揮するものと平時に優れた治世を行なうものがいる。それはよく考えれば当たり前のことなのではあるのかもしれないが、つい、負けたものは勝った者より劣ってるとか悪いと考えがちになってしまう。
歴史小説を読んでいると、作家によっていろいろな視点から物事を見ることができ、自分の思い込みや偏見などを修正してくれるので面白いものだ。
忍者丹波大介 (新潮文庫)
忍者丹波大介 (新潮文庫)池波 正太郎

新潮社 1978-04
売り上げランキング : 141509


Amazonで詳しく見る
by G-Tools
タグ:歴史小説
posted by てけすた at 20:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 本のこと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年05月18日

「絶対」の探求 バルザック

バルタザールはその土地では名門の一族で富も名もあり、最愛の妻と幸せに過ごしていたのだが、ある日、館に泊めた貴族と化学の話をしているうちに、ある考えが彼の心を捉えた。それは「絶対」物質という観念である。その日から彼はその情熱に取り付かれ、財産も家庭も顧みないような生活が始まったのだった。
人が自らを賭けて何かを追い求めるという行為はしばしば賞賛の対象になる。そしてそれは天才という名声を伴うこともある。
が、それは恐ろしくも険しい道のりである。周りからは「錬金術士」と嘲られ、財はすべて実験材料を手に入れるために投げ出し、家族は物質的精神的2重の意味で糧を奪われてしまう。
では、何かを追い求めるのをやめてしまえばいいのだろうか?
この小説では実験をやめても、やむにやまれぬ情熱は抑えきれないことを描写している。
「絶対」を手に入れられれば一夜にして金やダイアモンドなど手に入れ放題になる、といって借財を重ねたり、家族のことはおざなりに、化学のことばかり考えていたり、ここに描かれてる男はまるで何かの依存症のようである。
まるで聖女のようで、生きてるときには自分の苦しみを夫にはぶつけず、いつも思いやりを持っていた妻はやがて心労と失意の内に死んでしまうが、死ぬ間際にバルタザールに今まで苦しんできた思いのたけを打ち明ける。
彼はそのときはショックで止めても、また再び家庭を食いつぶしながら実験をはじめて、とうとう民事死というまるで禁治産者みたいな扱いにまで落ちぶれてしまうのだ。
この悪魔とまで言われた「絶対」追求への執念は読み応えがある。
娘マルグリットの活躍が痛快。
「絶対」の探求 (岩波文庫)
「絶対」の探求 (岩波文庫)バルザック Honor´e De Balzac 水野 亮

岩波書店 1978-04
売り上げランキング : 66182

おすすめ平均 star
star永遠、それは太陽に溶けた海…
star人間の崇高さと愚かさ。
starジョゼフィンに哀悼の意を表しつつ

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
タグ:人の業
posted by てけすた at 21:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 本のこと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年05月16日

市塵(上)(下) 藤沢周平

新井白石は儒者で、家宣に仕え、綱吉時代に乱れた政治を立て直そうと奔走する。
譜代大名に代表される抵抗勢力と格闘しつつ通貨改革や外交についてなど家宣の信頼を受け、断行する。
背後には政治に対する野心と自分の学識に自負がある。
市井の儒者から政治の中枢にまで上り詰めた白石は、その博識さを聖人という世間から遠ざかったようなあり方ではなく、現実に役立てようとしていた。それが野心として現れてるのかもしれない。林信篤との微妙な対立、朝鮮使節に自分と言う知識人がいるのだということを示そうとする場面や、シドッチという潜入してきたイタリア人への好奇心、などにそういった心持が描写されてる。
後世に名を残した白石といえども、家宣の死後はその境遇に変化が訪れる。
最後まで読んでみて、市塵というタイトルはなるほど、白石の心中を描写するのにぴったりとした言葉であるなあ、と思った。
市塵〈上〉 (講談社文庫)
市塵〈上〉 (講談社文庫)藤沢 周平

講談社 2005-05
売り上げランキング : 23704

おすすめ平均 star
star西洋の悪を見抜くヒントが

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

市塵〈下〉 (講談社文庫)
市塵〈下〉 (講談社文庫)藤沢 周平

講談社 2005-05
売り上げランキング : 23748


Amazonで詳しく見る
by G-Tools
タグ:歴史小説
posted by てけすた at 21:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 本のこと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年05月11日

死ぬことと見つけたり(上)(下) 隆慶一郎

毎朝死ぬことを思念するという斎藤杢之助、そのありようは「死人」である。命にこだわらない戦闘人ほど厄介なものはない。斎藤家は3代に渡ってこの心の鍛錬法を行なってきたという。
小説はこの斎藤杢之助と莫逆の友中野求馬を中心とした佐賀藩の物語である。杢之助はずっと佐賀浪人で求馬はひたすら出世をせんがために働く。その出世したい理由というのが、また凄い。殿に箴言して死を賜るのが武士の本分なのだ、という父の言葉があり、それに反発しつつもやがてその言葉をいったときの父の笑い声がよみがえり、自分は今のままではあんな風に笑えないな、と感じ始めたのがきっかけなのである。
うーん、武士道というのは凄い思考回路であるなあ。クレイジーと叫びたくなるものわかるような気がする。
しかし、この鍋島武士たちが実に面白いのである。著者は「葉隠」をたいそう面白く読んだ、と最初の章で書いているが、なるほど、思想としてではなく人間像として捉えたとき、この命を惜しまない態度というのは実に痛快なのだ。
思想として他人にこの考えを強制するのはどうなんだ?と思うけど、この考えで行動している人間を描くという試みはその本質をよく見せてくれるのではないかと思う。
面白かった。これも未完であるのが残念。あとちょっとで完結だったのになあ。
でも、考えてみれば人生もそんなものかもしれない。
死ぬことと見つけたり〈上〉 (新潮文庫)
死ぬことと見つけたり〈上〉 (新潮文庫)隆 慶一郎

新潮社 1994-08
売り上げランキング : 11049

おすすめ平均 star
star「葉隠」の真骨頂を見せてくれます。
star本当の意味での刹那主義
star下巻が楽しみ

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

死ぬことと見つけたり〈下〉 (新潮文庫)
死ぬことと見つけたり〈下〉 (新潮文庫)隆 慶一郎

新潮社 1994-08
売り上げランキング : 11044

おすすめ平均 star
star未完でも名作
star佐賀に鍋島武士あり
starうらやましい

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
タグ:時代小説
posted by てけすた at 20:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 本のこと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年05月08日

彫師伊之助捕物覚えシリーズ 藤沢周平

主人公伊之助は通いの彫り職人である。昔岡っ引をしていてその腕は確かだったのだが、妻に裏切られ死なれてからは十手を返上。ひとりぐらしでもともとの彫師に戻った。
この伊之助に昔世話になった親分から依頼が持ち込まれる。それはいなくなった娘を探して欲しいということであった。
それがシリーズ1作目の「消えた女」
2作目「漆黒の霧の中で」は川から死体が上がったところをたまたま居合わせたのだが、後日、この事件について手を貸して欲しいと同心から依頼がある。
3作目「ささやく河」でも、また殺された人物といささか関わりがあり、またしても同心から手を貸して欲しいといわれる。この死んだ人物というのがちょっとした悪党で、探っているうちに昔あった事件との関わりが浮かび上がる。
伊之助は今は岡っ引ではない。死んだ妻が岡っ引を忌避しており、それがこだわりとなってもう十手は持たないと決意しているのだ。だからこれらの話はすべて十手なしの捕物話ということになる。
ハードボイルドという言葉が解説では使われてるが、この孤高の主人公は確かにそんな印象を受ける。
その一方で親方に怒鳴られたり、同僚や同心たちとのかけあい、おまさとのつきあい、そういったものからは孤高とはまた違ういわゆる市井の人々の物語があり、それが非情さをやわらげている。
その独特の持ち味がこのシリーズの面白さなんだろうなあ、と思う。
消えた女―彫師伊之助捕物覚え
消えた女―彫師伊之助捕物覚え藤沢 周平

新潮社 1983-01
売り上げランキング : 52314

おすすめ平均 star
star伊之助登場
star本作も漆黒の闇の中でと呼びたい
starハードボイルド!

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

漆黒の霧の中で―彫師伊之助捕物覚え (新潮文庫)
漆黒の霧の中で―彫師伊之助捕物覚え (新潮文庫)藤沢 周平

新潮社 1986-09
売り上げランキング : 135531

おすすめ平均 star
star前作に続いて大活躍の伊之助
star絶妙なバランスで引き込まれる捕物帖
star暗黒面を描きながらユーモアも忘れない懐の広さ

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

ささやく河―彫師伊之助捕物覚え (新潮文庫)
ささやく河―彫師伊之助捕物覚え (新潮文庫)藤沢 周平

新潮社 1988-09
売り上げランキング : 42938

おすすめ平均 star
star過去に挑む伊之助
star本当に凄い人は、巨石を小石の様に持ち上げるので、その凄さが理解されない
star藤沢版人気ハードボイルドの第3作です

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
posted by てけすた at 12:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 本のこと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年04月26日

「超人」へのレッスン 田中聡

サブタイトルは“「五感の危機」を超えて”
となってるのだがどうしてどうして、人間って凄いものだなあと思わせるような内容で結構面白かった。
最初、著者は商品化されたモノで五感が鈍くなってきている、という論調の記事を書こうと思ったのらしいが、極限といえるまでに五感を磨き上げた達人を取材しているうちに、人間の身体文化やその豊かさに目を奪われてしまったらしい。
本書には、闇夜の浜名湖でモリをふるう漁師、水の匂いでその生い立ちや性質がわかる研究員、身体と心の「コリ」を読める気功治療師、調律師や旋盤工、靴職人など、10名の「超人」が出てくる。
読んでいて思ったことは、この人々はいずれも自分の五感を他人に譲り渡すことなく自分が思ったとおりに体を訓練してきたのではないだろうか、ということである。
この本のレッスン1で指摘していたような、外部の刺激に五感をゆだねて鈍くなるのとは正反対の生き方だ。
人間は本来非常に可塑性が高く、やろうと思えば超人にも凡人にもなれる生き物であるのだな。
「超人」へのレッスン―「五感の危機」を超えて
「超人」へのレッスン―「五感の危機」を超えて田中 聡

中央公論社 1996-03
売り上げランキング : 348621


Amazonで詳しく見る
by G-Tools
タグ:訓練 才能
posted by てけすた at 21:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 本のこと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年04月20日

天地人(上)(下) 火坂雅志

上杉家の重臣、直江兼続の生涯を描いた歴史小説。
上巻では兼続が謙信の弟子として景勝の小姓となり、大いに影響を受ける場面と御館の乱について、下巻は天下統一を図る秀吉や家康との攻防についてである。
この時代の武将たちが自分たちの益になる「利」を求めて動いたのに対し謙信は「義」を信条とするのであるが、それに深く影響を受けた兼続はその時々で変わる情勢の中で何が「義」になるのかをしばしば考えている。朋友石田三成や真田幸村との対話で兼続がどう考えてたのかが浮き彫りにされる。
秀吉が天下を掌中にしてる時代の頃が少し芝居がかった書き方になっていて、それが多少気になったのであるが、謙信との交流、家康との攻防のあたりの場面は兼続の清冽な面が伺えてよい。また、それとは逆に泥をかぶってでも生き残ろうとした最終の場面もまたよい。
一つのイデオロギーに従って動くのはたやすいことであるが、それをあえてやめ、現実的になるというのはなかなかできないことである。
天地人〈上〉
天地人〈上〉火坂 雅志

日本放送出版協会 2006-09
売り上げランキング : 4562

おすすめ平均 star
starこの内容では…
star2009年大河ドラマの原作!
starもう少し華はないか?

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


天地人〈下〉
天地人〈下〉火坂 雅志

日本放送出版協会 2006-09
売り上げランキング : 4003

おすすめ平均 star
star駄。
star2009年大河ドラマの原作!
star戦闘と人物描写に難あり

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
タグ:歴史小説
posted by てけすた at 20:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 本のこと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする