2013年04月03日

銀の匙 中勘助

中勘助は物を媒介としてその想像力を発揮するタイプの人のようだな。
始まりは幼い頃使っていた銀の匙の発見からだし、大切にしまわれたおもちゃの話などが出てくる。
想像力のきっかけとしてのものは他人からみればそれほど風変わりのものではないのだが、実は幼少時代の思い出もそういった小さなおもちゃにどこか似たところがないだろうか。
その小さなものが著者の手にかかると大人になってもう覚えていないであろう子供時代のことが生き生きとよみがえってきて、ああ、子供時代もいろいろあったんだなあ、なんて思い出すことになる。
まあ、それは読者のほうが引き出された感情ではある。

お守りをしてくれたおばさんや女の子とばかり遊んで、荒々しい遊びの場面はあまり見受けられない。また男の子として育つにはどうなんだろうと兄が指導(?)するので辟易とするシーンもある。いわゆる男の子らしさとは真っ向から対立した彼の資質は、その内面を驚くほど豊かに表現する力を与えていたと思う。
子供時代の人間関係は素朴だと我々はつい思ってしまうが、そうではないこと、そこには大人と同じ感情があり、それを子供なりの方法で過ごしていたことなどが思い出されてくるのではないだろうか。
また、日清戦争時分の考え方に幾分子供らしくはあるが、反抗してみたり、既成の修身に対する反抗など、その中には、世間一般に流布する価値観への大いなる懐疑が芽生えており、この本が面白いのは、大人になってからの自己規制に捉われることなく子供時代を描ききったところにあるんだろうな、と思う。
銀の匙 (岩波文庫)
銀の匙 (岩波文庫)中 勘助

岩波書店 1999-05-17
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タグ:人間
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2012年08月22日

武士道 新渡戸稲造

武士道などという言葉はどうもアナクロな感じがしていったいどんなことが書かれてるのだろうと思っていたのだが、封建時代の道徳について、儒教や禅の影響を受けた武士の倫理観から日本が野蛮国ではないのだという、いわば西洋に向けての弁明の書だったのである。
新渡戸博士いうところの平民主義で育った私としてはこの武士道には必ずしも是とは思わないのだけれども、それはドラマチックで、もし、他の国に住んでいて、こういう価値観を読むと神秘的で美しい感じがするだろうと思うのは私がやはり日本人だからであろうか。

武士道の義や勇や仁についてローマの古典や聖書などから比較してそれが西洋の倫理観とそれほど違わないことなどを説明していくのはなかなか面白い。
自分たちの文化が他の国のなにそれに似ていると思うことは誰にでもあるかと思うが、それを系統立てて比較してゆくのはなかなかに骨が折れる。一つには自国の文化を良く知らないこと、一つには他国の文化をよく知らないことがあるからだ。
新渡戸博士はクリスチャンであり、西洋の文化に通じていた。そして明治時代の知識人ということもあって自国の文化にも通じていた。
このことでこうした優れた文化比較論が生まれてきたのだと思うと感慨深い。
国際人国際人と日本の社会ではよくお題目のように唱えられるけれども、己を知り相手を知ることが国際人への一歩なのだという当たり前のことをまた改めて認識。
武士道 (岩波文庫)
武士道 (岩波文庫)新渡戸 稲造 矢内原 忠雄

岩波書店 1984-10
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タグ:文化
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2012年05月12日

渋江抽斎 森鴎外

渋江抽斎という人物を森鴎外が知ったのは、趣味で武鑑を集めていたときに、古書に渋江の蔵書印のあるものをよく見かけたから、ということである。そこからかの人物に興味を持ち、調べ始めたといういきさつが最初に書かれていた。まず、その探索において血族を探すところからはじめ、そして渋江抽斎の話になるのだが、この本はなんといったらいいのかな。史伝という言い方がされてるようであるが、確かに伝記とするには、抽斎の影うすいのは確か。
というのも主人公を抽斎としてみると、なんと本の途中でなくなってしまうという展開になるのである。そしてその家族や子孫がどうなったかという話が続く。また抽斎が存命中のときの話でも、その交友関係に出てくる人々のエピソードが散りばめられて、この点でも抽斎の影は薄い。
時代は、幕末から明治。あの激動の時代を生きた家族たちの物語と考えるのが一番わかりやすい。
抽斎は医者の家系だが、学問をよくしたし、劇なども好んでよくみた。彼の交友にはそんな関係の人々が出てきて、当時の様子を生き生きと伝えてくれる。
また、彼の家族、妻五百の魅力的なところや、子供の中でも不肖の息子優善の放蕩ぶりなども面白く読める。
特に五百については、若いころの鬼退治のことや、賊が抽斎を襲わんとしたときの活躍ぶりなど、もうヒロイン扱いである。
一つの時代を描くという意図が森鴎外にあったのかどうかは知らないけれども、ここに激動の時代を生きた一族を通じてその苦難が伝わってくる。感情を極力排した文章だけど、それだけに読むものには却って自分の中に潜むさまざまな感情を見出すことにもなる。
結末、子孫たちがそれぞれに生きている姿は、抽斎の面影がしのばれ、人というのは、死してもその面影は生きてるものに残るものなのだ、ということを改めてかみしめた。
渋江抽斎 (中公文庫)
渋江抽斎 (中公文庫)森 鴎外

中央公論社 1988-11
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タグ:家族
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2012年02月21日

幼少時代 谷崎潤一郎

谷崎潤一郎が晩年に記した幼き頃のいろいろな思い出。著者は明治19年生まれということで、ここに描かれる幼少時代はちょうど明治20年台~30年台にあたる。
冒頭はやはり谷崎一族の長ということではないけれども、祖父のことが書かれていてついで親類のこと、父母のこと、それから家のことや住んでいた地域の思い出、学校、級友とつながってゆく。
曲がりなりにも裕福な暮らしをしていた頃の芝居見物や物見遊山の思い出や、美しい母の記憶に谷崎潤一郎の文学(といってもそれほど読んでるわけではないが)のあのなんというか情緒的な豊かさを見るような思いである。
また、著者はしばしば風呂を親戚の家に貰いにいったときの暗がりを通っての帰り道のことや、その他、遅くなって暗い道を通らなくてはならないときの怖さについて、しばしば言及していて、ああ、明治の頃の東京も都会とはいえ、暗い場所が随分と多かったのだなあということがわかる。その暗がりは怖い場所でもあるのだが、こうして文章にしてみると、これまた情緒的な光景にうつる。
後半の恩師についての文学話も興味深い。

後年、著者は東京に故郷を見出せなくなったといっていたが、列島改造論とか叫ばれた以降は東京どころか全国で故郷を見出せなくなってきているのではないだろうかと思う。
便利で進歩していくのもまあほどほどが良くて、自分のところも東京ほどじゃないけれども、高速道路が出来て交通が複雑になると、なんとなく、谷崎潤一郎のさみしさが想像できてしまうような気がするのである。
あまり派手な中身の本ではないが、明治中葉の雰囲気を谷崎のおっとりした文章でゆっくり読むとすてきな本。私は5日間かけてよみました。
幼少時代 (岩波文庫)
幼少時代 (岩波文庫)谷崎 潤一郎

岩波書店 1998-04-16
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タグ:明治
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2012年02月03日

蒲団・一兵卒 田山花袋

私小説の始まりとして有名な「蒲団」は爆笑してしまった。
主人公の彼がうら若き女弟子に懸想したのはいいが、その彼女がある学生と恋におちたことを知りなんともいえない憤怒とがっかり感に取り付かれる。そこでかれは傷つけられた自尊心を回復すべく、二人の保護者、監督者としてふるまうようになるが、という筋書き。
何がおかしいかって、相手の女性を見て、さんざ好き勝手なことを考えるその身勝手さ、自分も気づいてるんだか気づいてないのか知らんが、その好奇心と虚栄心。のわりに保身も考えるそのしたたかさ。
これはねえ、まさに中年男のいやらしさ炸裂で、もうもうただただ笑った。
そういえば、この主人公は年齢が35~6歳だと思ったが、昔会社の人が、まさにその年齢のある同僚男性を評して「あの頃はね、最後のあがきでいろんなことに目が行く」みたいなことをいっていたなあ。その言ってた人は40近くの人だったけど。なんかそんなことを思い出しちゃいました。

とはいえ、「蒲団」がこんなんだからって、他の小説も露悪主義的かというとやっぱりそんなことはないわけで、「一兵卒」は日露戦争で死に至るある兵卒の死に際を描いた作品。彼の内面の動きと、まわりの様子がじつにリアルに描き出されてる。
蒲団・一兵卒 (岩波文庫)
蒲団・一兵卒 (岩波文庫)田山 花袋

岩波書店 2002-10-16
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タグ:私小説
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2011年08月18日

阿部一族・舞姫 森鴎外

新潮文庫で収録されてるのは以下のとおり。
『舞姫』『うたかたの記』『鶏』『かのように』『阿部一族』『堺事件』『余興』『じいさんばあさん』『寒山拾得』
『鶏』がやけに面白い。解説では俗人受けするユーモアがあるということであったが、主人公の軍人の浮世離れしたたたずまいと、彼の家に仕える人間の俗っぽさの対比が笑いをさそう。鴎外は別にユーモアとして書いたわけではなさそうなのだけど、結果的に親しみやすい小説になっている。
ところで個人的に印象に残ったのは『堺事件』と『寒山拾得』。堺事件のほうは処刑において名誉を保たせるために切腹での処刑が執り行われるが、その様子をみていたフランス公使ご一行様が驚愕のうちに途中で席をはずしてしまい、あとで処刑をやめて助命を請うところが印象深い。鴎外は切腹の場面を詳しく描き、フランス人たちの場面はさらりと流していているが、文化と文化のぶつかるところ、じつにワンダフルではあるなあ、と今やフランス人の心境に恐らく近いであろう私などは考える。
ほんと、切腹ってものすごい風習だよな。
『寒山拾得』はどこまで信じていいのかわからん。鴎外は最後にこの話の説明として当時メシアと自称していた男の話を持ち出して子供に説明したということではあるけれども、信仰と言うのは嘘と真の間に真理があるような気がしないでもないから、寒山と拾得はもしかしたら~~なんて思わないでもないんだよね。この辺のあいまいな結末がとても好きだ。
阿部一族・舞姫 (新潮文庫)
阿部一族・舞姫 (新潮文庫)森 鴎外

新潮社 2006-04
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タグ:明治文学
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2011年04月02日

文鳥・夢十夜 夏目漱石

いやあ、こんなこと書くのは文豪に対して失礼なのかもしれんが、『文鳥』のラストはえええ?!って思ってしまった。家人が世話しなかったので死んでしまいました、ってどういうことですか?気が向いたときだけ可愛がるどこぞのDQNみたいでちょっと泣けた。もちろん文豪がドキュソであるわけがないと信じたいが、まあ、文鳥も三重吉さんが押し付けていったくらいに思ったんだろうな、あの手紙の文面からすると。この『文鳥』を読んだあとに、闘病記『思い出す事など』を読んで、いろんな人の死を思い巡らせ、三十分間の自分の死について思い巡らせる記述が散見されるのだけど、あなたの気まぐれで飼った文鳥のこともどうか思い出してあげてください、とお願いしたくなった次第。
ああ、なにを書いてるんだろう。まあ人間、素晴らしい長所もある反面、ぎょっとするような面も持ち合わせてる、と思ったほうがいいのだろう。

【追記 19:42】
さっきamazonのレビュー見てて、そういえばこれ、随筆でもなんでもないから本人の実体験とは限らないんだよな、ということに気が付いた。一人称の文章がすべて本人のことだと思うなよ、自分(汗

文鳥・夢十夜 (新潮文庫)
文鳥・夢十夜 (新潮文庫)夏目 漱石

新潮社 2002-09
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タグ:文豪
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2010年10月13日

学問のすすめ 福澤諭吉

明治のベストセラー『学問のすすめ』。「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らずと言えり」で有名なあの本である。概要は人の差は学問を為すか為さないか、ということであり、独立の精神を持て、ということなのだが、いくら文明開化の時代といえども、説教ばかりではそれほど売れないと思う。これが売れたのは恐らく福澤諭吉の辛辣なる物言いと揶揄が痛快だと思う人が結構いたからではないかと想像するんだが、そんなに単純ではないかもしれん。
まあ、とにかく物議をかもし出した楠公権助論や、開化先生を徹底的に揶揄した15編、それからところどころに顔を出す漢学儒学先生への痛烈な批判、こういった憎まれ口をよくもまあ書いたもんだと感心してしまうのである。
さらに、諭吉先生の抜け目のなさというのは、解題で書いてあったのだが、当時の検閲の当務課長が何れも慶応義塾出身者であったということで、安心して書きまくったのではないかと、小泉信三氏は述べている。
ああ、こんなところばかりに目がいって、肝心の内容をちっとも覚えてない。
とにかく、『福翁自伝』に続いて、またしても福澤諭吉の人の悪さを痛感したのであった。
学問のすすめ (岩波文庫)
学問のすすめ (岩波文庫)福沢 諭吉

岩波書店 1978-01
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おすすめ平均 star
star何ども読み返して、志を高く保ちたい。
star妙に納得できる本
star個人の生き方と社会のあり方をどう重ねてゆくか!必読です

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タグ:啓蒙
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2010年08月23日

病牀六尺 /仰臥漫録 正岡子規

以前読んだ『墨汁一滴』が結構面白かったので子規の他の本も読んでみた。

『病牀六尺』
新聞「日本」に掲載された『墨汁一滴』の続き。物事への限りない好奇心はそのままに、前のものより歌や句の話は少なくなってそのかわり画についての話が多く出てくる。子規は句でも月並調をよく思わなかったように、画でも少し変わった趣のあるものを好んだらしい。組み合わせの変わったものとか描き方の変わったものとかを賞賛していた。
ところで『病牀六尺』はさらに死に近づいてきての随筆だけに終りのほうになると流石に読んでていたましいくらいになる。拷問の話と自分の身体のことを引き合わせて語る数行の文章はちょっと平静な気持ちでは読めない。いままで少しのユーモアで己の病を描いてきた子規は百二十四で書くその
「人間の苦痛は余程極度へまで想像せられるが、しかしそんなに極度にまで想像した苦痛が自分の此身の上に来るとは一寸想像せられぬ事である」
という文章の慄然とすることよ。
病牀六尺 (岩波文庫)
病牀六尺 (岩波文庫)正岡 子規

岩波書店 1984-07
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おすすめ平均 star
star末期がん患者に希望を与える書
star病人に読んでほしい
star美しい文章とちょっとの自己中がいい味出してる

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『仰臥漫録』
『墨汁一滴』『病牀六尺』が新聞連載なのでいわば表向きの文章なのに対して、こちらは日記ともいうべき個人的な雑記である。主な内容は日々の食事と病状、訪問者のこと、及び個人的雑感。
いや、私ちょっと驚いたのは子規の食欲旺盛なところ。普通の食事に菓子パンやお菓子、果物をもりもり食べてるので、メニューだけみるとこの人病気なのかしらん、と思うくらいである。はっきりいうとこのメニューが一番印象的かも。
また重病なので仕方ないが、看病する家人(主に妹)への不満がつのったりして、そのあたりの心情もありありと吐露している。子規の病の篤さからしてその吐露は実際より割り引いて考える必要はあるかもしれない。なにせ不満を述べる一方で律が病に倒れることを酷く恐れたりもしているのだから。
それにしても重病人だとなかなか本人の心情を聞くことができないが、これはそういう意味で稀有な日記かもしれないな。
仰臥漫録 (岩波文庫)
仰臥漫録 (岩波文庫)正岡 子規

岩波書店 1989-05
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おすすめ平均 star
star松山で元気だった子規と漱石の思い出
star糸瓜棚からのぞく青い空・・・
star生きるということ!!

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タグ:日記 随筆
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2010年08月10日

墨汁一滴 正岡子規

NHKドラマ「坂の上の雲」で出てくる正岡子規がずいぶんお茶目だ、と思っていた。それで少し気になりだして、機会があれば本でも読んでみようかなと思っていたのだ。といっても俳句のことはさっぱりわからないので、やはり随筆だろうと思い、ちょうど古本屋でこの『墨汁一滴』を見つけたので読んでみたのだ。
うーむ、あのお茶目さは誇張でもなんでもなさそうだ。この随筆は死ぬ1年ほど前に新聞に掲載されたものだけど、ほとんど寝たきりとは思えないくらい闊達な文章なのだ。子規の興味ある平賀元義の歌の紹介から、漢字の誤りの覚書、ほとんど難癖としか思えない歌の批評から、学生時代の面白いエピソードまでその好奇心の旺盛なこと。きっと面白い人だったんだろうなあ、と想像してしまう。寝たきりで疼痛に苦しむも、病床のいろんなものを描写してみたり、病気に関するちょっとした物語を書いてみたりするのだが、その内容も感傷的でないのがいい。あれだけの大病だと感傷的になる余裕もないのだろうということなのかもしれないけれども、閻魔様の物語の中で地蔵様が「十年くらい寿命を延ばしてやりなさい」といったのに対し、子規が滅相なことをいうな、健康ならいいけど、こんな体で十年はやるせない、というくだりを読めば性格的に陽性な部分がかなり大きい人ではあると思うのだ。
なにより私は歌とか俳句とか全くの門外漢なんだけど、子規の批評や解釈がわかりやすくて、こんなふうに読むんだ、と勉強になったこと。例えば、宝引についての一説があるのだけどそれを読んだ後にずらずらならぶ宝引の入った句を眺めてその情景が手に取るようにわかるという体験はいままでにしたことがなかった。俳句が身近に思えた瞬間。
墨汁一滴 (岩波文庫)
墨汁一滴 (岩波文庫)正岡 子規

岩波書店 1984-01
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おすすめ平均 star
star正岡子規を身近に感じる
star子規随筆の真髄。死の前年に書かれたと思えぬパワーすら感じる
star病床の視点で

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タグ:随筆
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2010年06月07日

夜明け前(全4巻) 島崎藤村

青山半蔵。国学を学び、時幕末においていろいろ国事のことに奔走したいと思いつつ、庄屋本陣問屋という地域の取りまとめ的な家業をうっちゃることができない。その屈託した人生と同時に幕府瓦解から明治維新という動乱期を叙事詩的に描いたこの小説は、いまさらいうまでもないが個人と、そのとりまく環境を詳細に描いてある種普遍的な人間と社会の関係を浮かび上がらせている。
国学へ傾倒した半蔵。黒船来航から攘夷開港と揺れ動く世間の中で、彼は新しき古い代、すなわち武家社会になる前の親政の時代の復古を夢見て奔走する。それは長年一地域の世話役という立場から民衆が圧迫される封建社会への疑問と批判からの行動ではあるが、御一新になったときに、彼の願いは叶ったのか?
読んでいて、民衆と体制の齟齬は埋める事のできない深い溝があるのだと感じられずにはいられなかった。半蔵はまさにこの溝を埋めたいといつも願っていたのではある。
ところが、この純情な半蔵の想いとはうらはらに民衆は新体制に冷淡、生活はますます圧迫される、国学そのものも古いものとして捨て去られてゆく。半蔵の人生はいったいなんであったのだろうかと思わずにいられない。動乱を起こす武士たちの視線からではなく、受身の民衆側にたつ視点で書かれた幕末~維新の庶民生活への影響というものもうかがえて、もし今自分の住んでる国が内乱や無政府状態になったとしたら。そんなことが身につまされるようでもあった。
夜明け前 第1部(上) (岩波文庫)
夜明け前 第1部(上) (岩波文庫)
岩波書店 2003-07-17
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おすすめ平均 star
star情報と人間行動
star奔騰する時代の波の中で
star希望と不安の夜明け前 第一部(上・下)

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夜明け前 第1部(下) (岩波文庫)
夜明け前 第1部(下) (岩波文庫)
岩波書店 2003-07-17
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おすすめ平均 star
star夜明け前(第1部)上下を読んで

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夜明け前 第二部(上) (岩波文庫)
夜明け前 第二部(上) (岩波文庫)
岩波書店 2003-08-20
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おすすめ平均 star
starレ・ミゼラブルを想起させる構成

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夜明け前 第二部(下) (岩波文庫)
夜明け前 第二部(下) (岩波文庫)
岩波書店 2003-08-20
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おすすめ平均 star
star散切り頭を叩いてみれば・・・

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タグ:歴史小説
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2010年06月02日

運命 幽情記 幸田露伴

『運命』は明の建文帝から叔父の燕王が帝位を簒奪する様子を描いた作品だが、なぜに運命というタイトルなのかといえば、この作品の冒頭に「世おのづから数というもの有りや」となっていることからでもわかるように、一面的な権力闘争ではなくて、簒奪する側される側の不可思議な人生の動き、このことを描いたからだと思う。
格調高い漢文脈はなかなか容易には読み勧められないのだが、中国の奇書のような面白さとそしてまさしく登場人物たちの運命の不思議さに引きずられ、最後までなんとか読み通すことができた。といっても半分も理解してるかどうか(汗
血族の尊卑と国家の身分の上下が錯綜したがゆえに起こった闘争に、建文帝も板ばさみになるなど、いろいろ複雑な要素がある。だからこそ数(すう)とか運命という言葉が重みを持ってくるのかもしれない。もっとも「測り難きの数を畏れて、巫覡卜相の徒の前に頭を附せんよりは、知る可き道に従ひて、古聖前賢の教の下に心を安くせんには如かじ」というのはまことその通りだと思う。

『幽情記』は詩や詩人にまつわる「情」についてのいろいろな逸話を集めたもの。ここに出てくる女性たちのほとんどが才媛であり詩に優れていて、情緒纏綿たる話ばかりである。「幽」とはぼんやりと微かなということだが詩にたくされた情をかすかに覚えるような物語を読むにつけ、漢詩はあまり理解できないにも関わらず、その詩がなんとなく趣き深く見えてくるから不思議なものだ。
もっと理解できるように少し勉強したらいいんだがね、私も。
運命・幽情記 (講談社文芸文庫)
運命・幽情記 (講談社文芸文庫)川村 二郎

講談社 1997-02-07
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star巨匠の手による一大大河小説

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タグ:歴史
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2010年04月18日

福翁自伝 福澤諭吉

自ら語ったところを速記させて口語体で出版したというこの自伝、なかなか面白かった。いや、福澤諭吉という人物はそれほど面白いとはおもわなんだが、折節出てくる彼の考え方は流石に万札に描かれる人になるだけはあるなあ、とちょっと感心してしまったのである。
まず、門閥を嫌う。福澤諭吉はそれほど身分が高くないのだが、やたら身分をかさに威張りたがる人間を軽蔑するし、身分が自分より下でもぞんざいな口は聞かぬようにしてるという。今でこそそういう考え方は立派な人物としての条件ではあるけれども、江戸時代では型破りだったことは間違いない。
門閥がらみではないだろうが、虚飾を嫌い、出世とかそういうことも気にかけなかったとは本人の弁。そして、ここがさすが万札肖像画になった人物なのだが、借金ができないということなのである。お金はなければできるまで待つというのだ。質にも入れたことがないという。質に入れるくらいならその物は売ってしまうということなのだ。借金に対して臆病な自分だ、とは言ってるがお金を借りることによる束縛感をなにより疎ましいと思っていたんだろう。だからといってカネに綺麗だとかそんなことはない。悪どく藩のお金を失敬したりもしてるので、まあ、道徳というよりは合理的な考え方といったほうがいいんだろうな。
せっかく高額紙幣に彼の肖像画を使ってるんだから日本の財政も少し見習えばよいのに、と余計なことまで考えてしまった。
新訂 福翁自伝 (岩波文庫)
新訂 福翁自伝 (岩波文庫)
岩波書店 1978-01
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star勉強する意味がよくわかる。「なぜ勉強しなければならないのか」と自問する若い受験生必読書だ
star江戸時代人福沢諭吉の自分史
star面白すぎ

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タグ:自伝
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2010年03月08日

勝海舟語録 氷川清話(付勝海舟伝)

勝海舟を慕う人々が、晩年の彼にいろいろ話を聞いたときのまとめ書きであるが、いやいやこんなに面白い人だったとは知らなかったよ。
話の内容は維新の時の話、関係した人物の話から歴史上の人物の話、さらに人生訓にまでいたる。
この語録を読むと、彼は経験を重んじ、理論や学問は二の次に評価していたようだ。なにしろ「世間は生きてる、理屈は死んでる」という人だから。才気ばかりあって実行が伴わない人々を散々見てきたのだろうなあ、と思う。
さらに、勉強になった箇所といえば物事の大事な部分というのは往々にして見えないということ。人はすぐに見える(結果が出る)ことを求めて大局を理解しようとしないというような内容を彼はしきりに話す。たとえまわりに理解されなくても、自分の信念を貫き通す人物を彼は買うし、とにかく小手先で動くようなことを戒める話が随所に出てきて、根気のある人物を評価する。
とにかく無血開城を成功させ、外交にも手腕を発揮した人物がいうのだから、自分も大人物なるべく根気を養おう、なんていう気になったのだった。
氷川清話 (角川文庫ソフィア)
氷川清話 (角川文庫ソフィア)
角川書店 1972-04
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おすすめ平均 star
star激動の時代を生き抜く智恵
star勝の孤独を思う
starスケールの大きさ

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2010年03月04日

硝子戸の中 夏目漱石

それほど分量は多くないのだが、飛ばし読みを許さない重みがある。内容は漱石の身辺で見聞きしたことなどについての随想なのだが、この頃、彼は丁度病み上がりということもあり、人生の回想や、死についての随想が多い。漱石の前に現れて語っていったさまざまな人々の話もあり、結局生きるというのはどういうことであるのだろうという想いを深くさせられる。
漱石は書く。
「死は生よりも尊い」
にも関わらず、悩みで傷ついた女性の話を聞きながら、彼女には死を勧めることはできない。なぜなら彼を含め、一般的には生に執着しているから。
“私の父母、私の祖父母、私の曽祖父母、それから準じに遡って…(中略)千年万年の間に馴致された習慣を、私一代で解脱することが出来ないので、私は依然としてこの生に執着しているのである”
と彼はいう。
こうは思っていながらも、この随想の中に出てくる漱石の人への助言は、率直で誠実さにあふれ、その中に死の影などは見出せない。
表に向かっては良識ある人物、だが、自らのうちにはそのことに対し冷ややかに見つめる自分。その相克が人間関係の地獄を抉り出したような小説へと昇華されていったのだろうなと感じる。
実のところ、その小説が私にはなかなかきつくて何度も読んでみようという気にならないのだが、この短い随想集は同じようなことでも、噛み締めて、また読んでみようという気になるのだから不思議だ。
漱石は自分にとっては小説よりもこういった随想の方が合ってるのかもしれない。
硝子戸の中 (新潮文庫)
硝子戸の中 (新潮文庫)
新潮社 1952-07
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おすすめ平均 star
star「死は生よりも尊い」
star晩年の漱石の随筆
star仕事も恋愛もひとまず忘れて、ゆったりとした時間の中で読みたい本。

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2009年11月14日

浮雲 二葉亭四迷

学生のころ、言文一致体で書かれた小説ということで習ったが、その文体はちょっと落語に似てるような感じがする。落語っていってもそんなに私は親しんでるわけではないので、あくまでもイメージなのだが、地口洒落、掛詞などが多用されており、軽妙で、語感のよさが粋に見える。当時の人々はこんな風にちゃきちゃきに話していたんだろうか、と感慨深く思ったが、解説の引用の孫引きをすれば、第一・第二篇については西鶴や歌舞伎のセリフに似ているという。なるほど、通りで。いくら言文一致といってもそのまま素人の喋りでは洗練された文章とはゆかぬものではあるしな。
内容はある内気な青年の苦悩が中心となってるのだが、その苦悩は失職することと、それに伴って、いとことの婚約者同然の処遇から一転し、相手の女性が自分の同僚に心を寄せてゆくことに関する苦悩である。非常に通俗といえば通俗ではあるが、地の文の軽妙洒脱さと主人公を突き放してときに揶揄するような表現であることによって、ずぶずぶと悲劇まっしぐらにならず、相対化されたような感じが私には好ましい。
浮雲 (岩波文庫)
浮雲 (岩波文庫)
岩波書店 2004-10
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おすすめ平均 star
star文学以外の面からみて
star意外と現代的
star現代語表記、大量のふり仮名つきで読みやすい

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タグ:明治文学
posted by てけすた at 20:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 本 (国内) 明治 | 更新情報をチェックする

2009年10月07日

ぼく東綺譚 永井荷風

大江匡という小説家が玉の井付近で出会った私娼窟に住むお雪という女性とのひと夏の逢瀬を昭和初期の風景とともに描いた小説。近所に並ぶ店や建物の様子や蚊の多い所から、彼女がいるところがどんな場所なのか、そして彼がなぜ彼女との逢瀬を続けたのか、その理由なども書き、都会化する東京と足並みをそろえるのが大儀な主人公の姿が浮き彫りになる。
その思いは作者も一緒なのであろう。作後贅言では復興してゆく東京の風俗をなぞらえながら、その違和感をかくすことなくしたためている。なんということのない、風景と会話のなかに、失われた昔の風俗への憧憬が見え隠れするからこの小説に情緒を与えてるのではなかろうかと思う。
作後贅言で印象的な著者の文章を引用する。
しかし、今の世の中のことは、これまでの道徳や何かで律するわけには行かない。何もかも精力発展の一現象だと思えば、暗殺も姦淫も、何があろうとさほど眉を顰めるにも及ばないでしょう。精力の発展といったのは欲望を追求する熱情という意味なんです。スポーツの流行、ダンスの流行、旅行登山の流行、競馬そのたバクエキ(博打のこと)の流行、みんな欲望の発展する現象だ。この現象には現代固有の特徴があります。それは個人めいめいに、他人よりも自分の方が優れているという事を人にも思わせ、また自分でもそう信じたいと思っている―その心持です。優越を感じたいと思っている欲望です。明治時代に成長したわたくしにはこの心持がない。あったところで非常にすくないのです。これが大正時代に成長した現代人と、われわれとの違うところですよ。

〓東(ぼくとう)綺譚 (岩波文庫)
〓東(ぼくとう)綺譚 (岩波文庫)
岩波書店 1991-07
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おすすめ平均 star
starわたくしはほとんど活動写真を見に行ったことがない
star古き良き時代の情緒
star静かな感情

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タグ:人間模様
posted by てけすた at 12:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 本 (国内) 明治 | 更新情報をチェックする

2009年10月05日

阿部一族他二篇 森鴎外

表題『阿部一族』と『興津弥五右衛門の遺書』は殉死について、『佐橋甚五郎』は徳川に仕えたある精鋭なる若者の話についてである。
このうち、『阿部一族』は殉死がらみで武士の面目についても考えさせられる。この話は弥一右衛門が殉死を認められなかったために周りから命永らえていると軽んじられて自分で後追いをするのであるが、そののちの遺族たちに対する処遇が他の殉死者より一段低くなった。さらに、そのことで長子権兵衛が供養の場で髻を切って、武士を辞めたためにそれがあてつけと受け取られ、結局縛り首になってしまうのである。主君からの心ない扱いに阿部一族は団結して立てこもり反逆するという筋立てなのだが、つくづく武士の面目の立て方というのは難しいものだと思った。
それにしても殉死というのは悪しき慣習だと思っていたが、忠利が病中で思うように、世代交代という面と、今まで権力の中枢にいた人間が否応なしにそねみを買っている場合それに逆らって生きていくよりはいいという刷新の劇的な形であることに改めて感じ入った。そう考えると、鍋島藩主光茂が追い腹禁止令を出したというのは結構大変な決断だったのだな、と思う。
『佐橋甚五郎』は徳川から逐電した怜悧な若者の話、最初朝鮮からの使者に甚五郎が混じっていた、という家康の話から甚五郎のことが語られるのだが、いささか伝奇的でもあり、面白い。
阿部一族―他二編 岩波文庫
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岩波書店 2007-12-14
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star深作欣二監督のドラマと共に楽しみたい

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タグ:歴史小説
posted by てけすた at 10:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 本 (国内) 明治 | 更新情報をチェックする

2009年08月16日

明暗 夏目漱石

津田は手術をするために入院することになったが、妻は叔父から誘われた芝居へと出かけてしまう。妻にそこはかとなく無力感を感じる津田。一方妻も夫の愛を得るために自分に無理をしている。ところで彼らをとりまく人間関係はなんともしがらみの多くて気苦労が耐えないように思える人ばかりだ。勤め先の上司の夫人、津田の妹、叔父、果ては無心している弱みがあるために親との関係もしっくりいかない。
読んでいて、この小説では人との関係が寄り掛かりで繋がるものだとつくづく思った。そこで、寄り掛かりたい人間にはなるべく弱みを見せずにいようと頑張るのだが、ふとしたいさかいでその頑張りが破綻することがある。夫の愛を得たいお延、なにかと兄夫婦に世話を焼きたい妹。
勤め先をしくじらないよう、上司の夫人のご機嫌を伺う津田。ほんとに、やりきれない。それだけにこの浮世のしがらみはある種共感をもって読むことも可能なのであるし、このしがらみをよくぞここまで書いたものだと、感心する。
だが、個人的な好みでいうと、こういう類の小説はかなり疲れる。なにを好んで、こんなごたごたして、みんなが遠慮しいしい、しかも誰かの目をうかがいながら生活する、そんな話をあえて読まなければならんのか、という思いに囚われるのだ。
素晴らしい小説だとは思うが、2度は読まないだろうなあ。
明暗 (新潮文庫)
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新潮社 1987-06
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おすすめ平均 star
star明治人の人間関係描写が秀逸
star明暗の意味
starソリストだらけの協奏曲

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タグ:人間模様
posted by てけすた at 15:39| Comment(2) | TrackBack(0) | 本 (国内) 明治 | 更新情報をチェックする

2009年04月27日

尾花集(五重塔、血紅星) 幸田露伴

この間某古本店にて、明治に出版された本の復刻版なるものを目にした。
それが丁度露伴の本で「五重塔」が載っており、明治時代の文章を読む練習もしたかったので105円で購入した。
これがその本。
尾花集
中身はこんな感じ。
尾花集ページ
奥付を見るに「ほるぷ」という会社が販売を請け負っていたらしいが、例のごとくインターネットで検索してみると、こんなページを発見。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1016974615
「新選 名著復刻全集」という名でセールスマンが各セット数十万円で売っていたものの1冊らしい。セットはそれぞれ20~40冊程度あったので、一冊およそ数千円という計算になるな。
しかしほるぷは倒産したため、これらの本はゾッキ本となってしまった所以。
そんなことを知ってしまうと、なにやらこの本がちょっと哀れにも思えてくるが、まあそれはさておき。

この本には「五重塔」と「血紅星」の2編が収められているが、私は「五重塔」より「血紅星」のほうが面白かった。
「血紅星」は本をたくさん読んだ挙句すべてを否定するような皆非という人の話なのだが、そういう自分はちっとも世間に認められないのがなんとも可笑しく思えてくる。その理由を人から彼は教えられるわけだが、まあ今も昔も知識だけは豊富だけど、という人はいるものだね。
「五重塔」はなにやら寓話めいた小説。しかし、五重塔をめぐる人間のやりとりは結構面白かった。面倒見のいい人って、悪い人じゃないんだけど、断ると怒るのには閉口するな、などと思いながら読んだが。
五重塔 (岩波文庫)
五重塔 (岩波文庫)幸田 露伴

岩波書店 1994-12
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おすすめ平均 star
star圧倒的な言葉の構築力
star迫力のある心理描写
star建築家の本懐

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タグ:明治文学
posted by てけすた at 13:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 本 (国内) 明治 | 更新情報をチェックする