人が自らを賭けて何かを追い求めるという行為はしばしば賞賛の対象になる。そしてそれは天才という名声を伴うこともある。
が、それは恐ろしくも険しい道のりである。周りからは「錬金術士」と嘲られ、財はすべて実験材料を手に入れるために投げ出し、家族は物質的精神的2重の意味で糧を奪われてしまう。
では、何かを追い求めるのをやめてしまえばいいのだろうか?
この小説では実験をやめても、やむにやまれぬ情熱は抑えきれないことを描写している。
「絶対」を手に入れられれば一夜にして金やダイアモンドなど手に入れ放題になる、といって借財を重ねたり、家族のことはおざなりに、化学のことばかり考えていたり、ここに描かれてる男はまるで何かの依存症のようである。
まるで聖女のようで、生きてるときには自分の苦しみを夫にはぶつけず、いつも思いやりを持っていた妻はやがて心労と失意の内に死んでしまうが、死ぬ間際にバルタザールに今まで苦しんできた思いのたけを打ち明ける。
彼はそのときはショックで止めても、また再び家庭を食いつぶしながら実験をはじめて、とうとう民事死というまるで禁治産者みたいな扱いにまで落ちぶれてしまうのだ。
この悪魔とまで言われた「絶対」追求への執念は読み応えがある。
娘マルグリットの活躍が痛快。
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