そして、はっと気が付いたのは
「これは『夢の木坂分岐点』の進化形態なんじゃないだろうか」ということだった。
『夢の木坂分岐点』は筒井康隆が1987年に出した作品である。これは一人のサラリーマンの夢と現実を交互に描写しているのだが、話が進むにつれて同じような場面に名前が少しづつ変わった主人公が登場し、やがてその境界が薄れてきて、読み手は主人公のすべてを含めた内世界そのものへと誘われてゆく小説である。
従って読み進めていくうちにだんだんと深い場所へ沈んでいくような感じになる、いわば意識の底への探求的な話だったのに対して、20年後に書かれた『ダンシング・ヴァニティ』では同じように反復する場面を描きながらも、それは意識へ浮かんでくるものを徹底的に捕捉しようとする、逆方向から追求した話なのだ。それゆえ、意識の流れをつかむことにおいてより明るく軽やかな表現となっている。
そのようなことに思い至ったときに、改めて20年という月日を越えて新しく描かれたものに懐かしいものを発見した心地になったのであった。
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