“やれ打つな蠅が手を摺り足をする”
とか
“雀の子そこのけそこのけ お馬が通る”
といった素朴な句を思い浮かべるのでその人柄も朴訥でやさしい人なのだろうと想像していたのだが、この小説を読みそれは覆った。
あまり暖かい環境ではないところで育ったせいかどこか心のゆがんだところがあり、利用できるものは利用してやろうというおよそ朴訥とは程遠い性格であった。
義母との折り合いが悪く奉公へ出されたのが15のとき。史実ではここから俳諧師として世に出てくるまでの足取りは不明なのらしいが、著者は奉公先を転々とし三笠付けという句をつけて遊ぶ賭け事で凌いでいる姿を描いている。
俳諧師とは一種今の芸能人みたいなところがあり、有力者の庇護を得るためにさまざまな場所へ足を運んだらしい。しかし、それは彼の生まれである百姓からみれば働かないでぶらぶらしているように見えたのではないかと彼自身そのことを気にかけていた。
藤沢周平は悪ともいえるほどのずるさをときに持ち合わせる一茶に人の業ともいいたくなるようなものを見出している。
エッセイではこのようなことを書いていたそうだ。
「一茶はあるときは欲望をむき出しにして恥じない俗物だった。貧しくあわれな暮らしもしたが、その貧しさを句の中で誇張してみせ、また自分のみにくさをかばう自己弁護も忘れない、したたかな人間でもあった。
だが、その彼はまたまぎれもない詩人だったのである。」
一茶 (文春文庫 ふ 1-2)
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藤沢 周平
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負けるな一茶
俳人一茶の生き様
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