2009年09月18日

菊と刀 ルース・ベネディクト

自分のことというのはなかなかわからないものだ。もちろん、他人がそう見えるからそうだというわけではないのだが、他人からそう指摘されると、なるほどなあ、と思うことはよくあるはずである。
この本はそんな感想をもった。
この中で一番うまいなあ、という表現が、恩や義理の働き方を金銭の貸借になぞらえて説明している部分だ。この喩えはとても新鮮で、改めて恩や義理の日本社会での動き方に目が開いた思いだ。
ということで私が連想したことといえば、あの盆暮れの贈答品のやりとりであった。あれこそ、恩義理の数値化といってしまってもいいのではあるまいか。人はどのくらい世話になったかによって、贈るものの値段を取り決める。少なくとも私の周りではそうだった。虚礼廃止といいながらその規模を縮小することもあるけれども、大抵の場合、廃止するということはしばしば世間から身を引くことを意味するので、なかなかやめるのに勇気がいる。
第二になるほどな、と思ったところは、自己責任ということに関してである。日本人は常日頃自分を磨くことを推奨される。失敗はその磨き方が足りなかったせいであり、その結果は甘んじてうけとめなければならないという考え方。そして、人の眼を尺度としているので、嘲笑や蔑みを恐れるとともに、自分のことに対する侮辱には容赦せず、復讐することは自分の汚名を晴らすために有効だとしている点。
これらはばかばかしいとは思うけれども、それはもっともなことだと思っている自分もいる。日本人がしばしば失敗した人に冷酷なほどの態度を示すのはこれと関連しているのだろう。
ああ、そういえば近年はやった自己責任論、あれは欧米化したのではなくて、まぎれもなく日本的な反応だったのだなあ。

すでに出版されて半世紀以上経過し、この本に対する批判などもたくさん出ているようだ。
私はこの中に書かれている日本人の姿が妥当かどうかはわからないけれども、しばしばアメリカ人との比較を書いているのでアメリカ人というものがどんな風にかんがえているのか、そんなこともちらほらとわかる本であるとは思う。睡眠のくだりでアメリカ人が起床したとき「夕べは何時間寝たか」と計算して、その日発揮できるエネルギーと効率の見当をつける、というところは、ちょっと私はびっくりです。まあ、私も「10時間も寝てしまった」とかやらないわけでもないんだけど、意味合いが違うしなあ。
菊と刀 (光文社古典新訳文庫)
菊と刀 (光文社古典新訳文庫)Ruth Benedict

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ラベル:日本人
posted by てけすた at 12:13| Comment(1) | TrackBack(0) | 本 (翻訳もの) | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
これほど不愉快さを感じた本は無い。
日本人捕虜が寝返ってアメリカに協力したとやらの件、
ベネディクトは、節操のない日本人として軽蔑の視線で書いているが、
何故、その一例でもって日本人の性癖であると決めつけるのだろうか。
そんな人間は日本人以外にもいるだろう。アメリカ人には絶対にいないとでも。
説得力が全くない。ただ日本人を貶めたいだけである。
日本人には罪も恥の意識もある。罪は、仏教の五悪、十悪が該当する。
恥はもっと表面的なもので、社交上のエチケットみたいなものである。
何も、日本人は年中恥を考えてピリピリして生きてる分じゃない。
恥の文化だから、他人の目の無いところでは抑圧から逃れられるから、
やりたい放題、平気で悪事を働くと決め付け(恥は抑圧だと勝手に決め付けている)
だから日本人は未開人だと溜飲を下げているように思える。
とにかく、マゾでない真面な日本人なら怒りを感じずにはいられないだろう。
冷ややかで分りにくい表現の底に、未開人に対するような視線を感じる。
批判本を書いたアメリカ人男性によれば、『菊と刀』を読むと、
アメリカ人はものすごく良い気持ちになれるそうである。
長野晃子著『恥の文化という神話』では、
アメリカによる日本人貶めのプロパガンダの書だと断定している。
著者は『菊と刀』の日本人に対する悪意を完璧に言い尽くしている。
巧妙に、まことしやかに貴方達日本人には、こういう欠点がある、
だから、先進国であるアメリカに従うべきだ、未開な日本人は指導されて
歩むべきなのだと、これでもかというほど、執拗に日本人を勝手に主観で分析する。
何故か中国人と比較して、日本人より中国人の方が格段に立派だと褒め称え
日本人を貶すのである。物事は多面的なものであることに目を瞑り、
一部を抜き出して故意に全体として語る。成る程プロパガンダである。
マゾ体質のサヨク日本人にとっては、きつく叱ってくれる有難い教師とでも
思っていそうである。『菊と刀』は今もアメリカでは、カレッジの学生の副読本として
年間、二、三千部は売れているそうである。いい加減にしてほしい。
Posted by えのころ草 at 2014年07月14日 23:43
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