簡単にいえばトマス・サトペンという人物の一代記なのであるが、時系列に並んでいるわけでもなく、サトペンの唯一の友人だった人物の孫クウェンティンが、サトペン縁の人物や、父親などから聞いた話を自分なりに回想してゆくことで、物語は重層的になり、なにがなんだかわからなくなりそうになる。
何度後戻りして今は何が誰によって語られているのか確かめたことか。
そして、その手法も読み手に苦労を強いるだけでなく、内容も人の濃密な関係性、血縁と暴力、野心、そういったものがふんだんに盛り込まれていて、容易な感想を書くことなどとても私にはできそうにない。
価値観を人それぞれが持っているからこそ、その人の個性も出てくるが、そんなものがあるばっかりに呪われた一族と言われてもいいような出来事にほんろうされるサトペンの一族を見ていると、人はそんなものなどもたず、その日を懸命に生きていくほうがよいのではないかと思ってしまう。
しかし、その地獄の体験こそが人として生まれてきた意味だとしたら、どうなのか?
聖書に出てくる人物の名前を冠したタイトルを見ながらそんなことを考えた。
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