2008年11月27日

八月の光 ウィリアム・フォークナー

身重の未婚女性、リーナが子供の父親を訪ねるために旅をしている場面から始まるこの小説はリーナのたくましい明るさと、ジョー・クリスマスという白人と黒人の血を持つ男性の暗い部分がメインに描かれている。
背景はまだ人種差別が公然と行なわれていた南部アメリカ。そこでは宗教(プロテスタント)の価値観もその地域の中で大きな力をもっていた。
社会がこのようにはっきりとした価値観や区別を持っていると、秩序は保たれやすい反面、この枠組みから離れた人間は酷く苦しむことになりがちだ。
ジョー・クリスマスは白人にも黒人にもなれない。自分が何者であるのかわからない状況で、彼はまるで駆り立てられるように周りの人間を巻き込みながら破滅の道を進んでいく。
さらに自分がどこかへ所属して社会の一員であること。これを当たり前のように普通の人は暮らしているのだが、枠組みから外れてしまったために、社会から疎外されて生きている人間は、クリスマスのほかにも、ハイタワーという牧師がいて、彼の物語もある。
しかし、そういう重い人間疎外の物語の対極に、同じく社会の道徳から見ると逸脱してしまったようなリーナが、なんの疑問も持たず、ひたすら自分の目的(子供の父親を探す)を遂げるための旅が人本来の生きる力を描いていると思える物語があって、人の姿の多様さを見せてくれる。
この違いは一体何に由来しているのか、私にはうまくつかめないのだが。
八月の光 (新潮文庫)
八月の光 (新潮文庫)フォークナー

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タグ:文学
posted by てけすた at 21:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 本(翻訳もの) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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