2014年12月24日

神田橋條治 医学部講義

前に『精神科講義』というのを読んだときにはなかなか痛快なお医者さんだなと思ったところで、今回医学部の学生に講義しているものがあるのを知って読んでみた。
これは毎年一回4年生を対象に九州大学で行われている講義の記録である。
医学生対象ということもあるだろう、前出の本で見せた痛快な論説は、ここで患者側からみると実にそうあって欲しいというものの見かたの説明になっていてこういう話を医学に携わる人は心の片隅にでも置いておいてくれるといいのだがな、と思うのである。

私がこの講義のなかでぜひとも医師にお願いしたいのは、徒手空拳ということである。
この話は2004年の「感覚の復権」という中で述べられているのだが、医者が感覚を磨いて検査する前にどこがいけないか見立てができるようになって欲しいという趣旨のこと。

この話読んで、全くその通りだと思ったのはある病院で私はこんなことがあったからなのだ。
ちょっと脚の具合が悪くなって、整形外科に行った。そこは入院施設もある、わりと大きな病院なのだが、受付が終わり待っていると看護師がやってきて話を聞いてくれる。まあここまでは普通だ。ところが、このあとなんとすぐレントゲンをとるという。私はえっ?と不審に思った。なんで?看護師に話しただけだよ?それなのにすぐ検査?
まあ、案の定検査のあとの医師のやる気なさというか(そんな風に見えてしまったのかもしれないが)別になんにも異常見つからないからといって湿布と痛み止めだけ出されて帰ってきた。湿布でよくなってるなら医者になんかこないと思って、頭にきたのでネットで別の病院を探して行った。
こんなでたらめなやり方でいいのかと思っていたので、この講義で「予測して的確な検査をすることができるように」というところを読んだときにはやっぱりそうだろう、と溜飲が下がったのである。
だって、家族に話しても、別に早く順番がまわるからいいじゃない、とかそんな程度のことしか考えていなかったし、これだから医学がだんだん工場みたいに流れ作業に堕していくんだと家族に対しても不満たらたら述べたんだよ。あ、そうそうこの流れ作業については先生も別の年に触れてます。今だと自動車工場ですら流れ作業じゃなくてチームで一台を責任もってつくるらしい。それに比べると医療の作業能率の遅れていること。

まあ他にもお医者さんならわかっていて欲しいと思うこと満載で、医療関係者におかれましては是非とも一度読んでください、お願いします、と一患者からの切望を書いて終わりにします。
神田橋條治 医学部講義
神田橋條治 医学部講義神田橋 條治 黒木 俊秀

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タグ:医療
posted by てけすた at 15:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 本 (国内) 小説以外の著書 | 更新情報をチェックする

2014年12月02日

ラスネール回想録

盗人にも三分の理
【読み】ぬすびとにもさんぶのり
【意味】盗人にも三分の理とは、悪事を働いた者にも、それなりの理由はあるものだということ。また、どんなに筋の通らないことでも、その気になれば理屈はつけられるものだということ。

故事ことわざ辞典

ピエール=フランソワ・ラスネール。19世紀ブルジョワに生まれながら犯罪に身を落とし処刑された人物。この教養高い紳士然とした青年の身分と行いの不一致が当時の人々に関心をいだかせ、処刑後、彼が獄中で書いた自身の回想録はかなり売れたという。
その回想録が本邦初翻訳ということで出版された。

犯罪者の回想録で自分の行為の正当化がこれでもかと描かれると私などはつい冒頭のことわざを思い浮かべてしまいがちなのだが、ラスネールの鋭さはこれを逆手にとり、そうした悪事に自分を追いやったのは一体誰なのかという問いを投げかけている。ラスネールの不幸というのは彼の回想録を読んでいる限りでは人に恵まれなかったということにつきるであろう。
特に共和主義者から詩作や記事の仕事を請け負ったときのことを読むと、そのあまりにも酷い待遇はどんな温厚な人間でも人間不信政治不信になってしまうのではないかと思われる。

ラスネールの言葉は屁理屈に聞こえるかもしれないが、これは格差社会における弱者の恨みを代弁しているようにも思える部分がある。
片方には、享楽の中でのらくらと生き、憐れみには心を閉ざす裕福な人間たちの社会が見えた、他方には贅沢で満ち溢れている人々に、生きるために必要なものを請う人間たちの社会が見えた。私はこの後者の社会と一体化し、この社会の味方となり、この社会そのものとなった。私はこの社会の仇を討ち、富をその黄金の冠から鉄のはらわたに至るまで震え上がらせようと思った。彼ら自身のためにも、いつかは裕福な人々が不幸せな人々の苦しみに敏感になるようにしてやろうと考えた。私は自分を犠牲にしたのだ―(p145~146)

果たして人が悪の世界に身を落としてしまうのは、その人自身の至らなさだけのためなのか、彼の成功したとはいい難い犯罪記録を見ている限りでは、上記のような大義名分以上に、社会に見出されなかった彼は結局やむおえず人間を襲うようになってしまった野生動物、そんな匂いをどことなく感じてしまうのである。
ラスネール回想録 (平凡社ライブラリー)
ラスネール回想録 (平凡社ライブラリー)ピエール=フランソワ ラスネール Pierre‐Fran〓ois Lacenaire

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タグ:自叙伝
posted by てけすた at 13:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 本 (翻訳もの) | 更新情報をチェックする

2014年12月01日

2014年11月読了本

うむう、だんだん読む冊数が少なくなっていくな。
なんか、凄くゆっくり読みたいし、ちょっと読んでみて気乗りしないともう読みたくないからしばらく読まない、というわがままモードに入ってます。

期間 : 2014年11月
読了数 : 3 冊
最澄と空海―日本人の心のふるさと (小学館文庫)
梅原 猛 / 小学館 (2005-05)
読了日:2014年11月20日
今まで空海関連解説本ばかり読んでいて最澄ってエリートのいけすかない奴だと思い込んでいたが、この本で最澄について読んで彼のほうがむしろ仏教改革者としてはふさわしいのだなと思った。空海は清濁併せ呑むタイプで改革というより世界観を持ってきたような人物だ。
イワン・デニーソヴィチの一日 (岩波文庫 赤 635-1)
アレクサンドル・ソルジェニーツィン / 岩波書店 (1971-08)
読了日:2014年11月13日
“懲役ラーゲリでいいことは何かっていえば―ここじゃ自由がいやっというほどあることだ。…”ラーゲリではスターリンの悪口言い放題だ!酷い環境でもいいところというものはあるもんだなあ、と妙に感心してしまった。
音楽嗜好症: 脳神経科医と音楽に憑かれた人々 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
オリヴァー・サックス / 早川書房 (2014-08-22)
読了日:2014年11月7日
音楽に苦しめられる人がいるかと思えば、音楽が欠かせなくなる人もいる。才能というのは本当に不思議なものだと思う。いろんなことが読み取れて、一言で感想でてこないや。
posted by てけすた at 07:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 本 (その他雑談) | 更新情報をチェックする