2014年08月23日

舞姫タイスを再読

前に角川文庫で読んだ『舞姫タイス』を今回は白水uブックスで読み返してみた。
(以前の記事)

前回は聖者パフニュスの言動を皮肉な目で読んでしまったのだけれども、今回はパフニュスの人間としての弱さを読み取ることができた。タイスを修道院へ導いた後苦しんで狂人のごとき修行をするパフニュスの姿。
そんな中、聖アントニウスが信仰篤いが愚鈍を言われているポールにヴィジョンを語らせた場面が心に残った。
覚書として引用しておこうと思う。

《愚直者》ポールは目を挙げた。その顔は輝き、その舌は滑らかに動き出した。
「天のなかに」と彼は口走った、「緋色と金色の布に飾られた寝台がひとつ見えます。そのまわりでは三人の童貞女が、その寝台へ迎えられるべく運命付けられている選ばれたもの以外のいかなる霊魂を寄せ付けまいと、用心深く警戒しております。」

パフニュスは、その寝台こそは自分が享ける無窮の栄光のシンボルにちがいないと思い込んで、早くも神に感謝した。しかし、アントニウスは、《愚直者》の言葉を黙って聞くようにと身ぶりで彼に合図した。ポールは入神の境地に浸りながら、呟きづつけた、
「三人の童貞女が私に話しかけます。こう言います―『ひとりの聖女が下界を去られようとしております、アレクサンドリアのタイスが亡くなられようとしております。それで、わたくしたちは、その方の栄誉の寝台を支度したのです。なぜなら、わたくしたち三人は、その方の徳、つまり、(信仰)と(恐れ)と、(愛)との化身なのですから』と」

アントニウスが訊ねた、
「懐かしき子よ、ほかになにか見えぬかな?」

ポールは、ただいたずらに、上下四方をきょろきょろと見まわしてしたが、そのとき、不意に、彼の目はアンティノエの修道院長パフニュスの目とかち合った。聖い恐怖が彼の顔を真っ青にし、その瞳には目に見えぬ炎がまざまざと反映した。
「歓喜に満ちた三匹の悪魔が」と彼は呟いた、「この男を捕らえようと身構えているのが見えます。その悪魔どもは、一見塔のように、女のように、ベツレヘムの博士のように見えます。三匹とも焼きごてで印した名前をつけています―最初のは額に、二番目のは腹に、三番目のは胸に。その名前は(傲慢)、(淫猥)、(懐疑)の三つです。見えるのはそれだけです」

こういい終わると、ポールは、目をきょろきょろさせ、口をだらりと開けて、もとの愚鈍さに返ってしまった。
(P242~P243)

舞姫タイス (白水Uブックス―海外小説の誘惑 (145))
舞姫タイス (白水Uブックス―海外小説の誘惑 (145))アナトール・フランス 水野 成夫

白水社 2003-07
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posted by てけすた at 19:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 本 (翻訳もの) | 更新情報をチェックする

2014年08月21日

偶然の一致ですか?

最近調子が悪くてあまり本を読んでない。で、このブログも書く事があまりないので、久々にばかばなしなど。

通院している病院で先月、全然似てないのだけど、なぜか母方の叔父に似てると直感的に思った人がいた。
今月診察日がきて、病院へいくと、またその人を見かけたのだけど、診察に呼ばれたその人の苗字が母の旧姓、すなわち、叔父と同じ苗字だったので、ちょっとびっくりした。

全然似てないんだけど、なぜ叔父ににてると思ったんだろう?というのが苗字を聞いてからの疑問。
まさか苗字だけで叔父に似てるなんていう直感が働いたわけじゃないよね。
ちなみに、その苗字は佐藤とか鈴木とかいうありふれたものではないんだけど、まあめずらしくはない苗字なので、やっぱり偶然の一致かな?
posted by てけすた at 11:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 日常 ばかばなし | 更新情報をチェックする

2014年08月04日

2014年7月

期間 : 2014年07月
読了数 : 2 冊
沢庵 不動智神妙録 (タチバナ教養文庫 30)
沢庵 宗彭 / たちばな出版 (2011-05)
読了日:2014年7月13日
若い頃ならこれを読んだら却って力んでしまって、心を留めたり、無欲になろうとして苦しんだりしただろうな、と思うが、この年で読むと、なるほど、と思わせるような文章に納得。
カラダのきもち (新潮文庫)
寺門 琢己 / 新潮社 (2002-10)
読了日:2014年7月5日
この本を読むと、からだって面白いんだなと思う。平温が平均より高い子や低い子がいたり、ウンチの出方を予言する喘息の子、とか身を律して最期を迎える老齢のご婦人とか驚異。もっと自分のからだのこと、人にまかせきりにしたり、基準値を鵜呑みにすることなく向き合ってゆきたいものだと思った。
posted by てけすた at 12:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 本 (その他雑談) | 更新情報をチェックする