2014年02月27日

禅と日本文化 鈴木大拙

本論は英文で行われた講演を訳したので、日本向けではなくて外国人向けなのであるが21世紀の日本人としては、改めて日本文化と禅の関係の面白さに惹かれる本である。
若干割愛したところもあるらしいけれど、それにしても、剣の話から芸術論まで、禅の影響がこれほどまでに武家社会日本にあったとはな、という感じ。

「禅と武士」「禅と剣道」においては、まるでどこぞの剣豪小説の解説を読んでるかごとき面白さ。
日々命のやりとりをする武士たちと、直裁的な悟りを重視する禅は余計な思弁を排し、一切が体験そのものを重視するという解釈は、ああ神秘の国日本、鈴木大拙の諸外国に対する影響は素晴らしいものがあったのだろうなと想像する。

また、「禅と俳句」において、宇宙的無意識なるものも飛び出し、そこで得た知覚が言葉をつくしてもつくしきれないゆえに、極端までに少ない言葉へと昇華していったという解釈。これは従来の道徳的な解釈のつまらなさを一刀両断する胸のすくような話だ。
いや、もちろん大拙先生のいってることすべてが正しいとは思わないけれど、文化の解釈なんてものはいかに興味をもって聞いてもらえるかが勝負どころであって、そういう意味で大拙先生はほんと素晴らしいと思う。
私が外国人だったら、まぎれもなく禅に興味をもったね。
そのくらい面白い。

それにしても、「禅と茶道」のくだりで、キリスト教でワインを使うところで酒びたりになる聖職者の話とかして大丈夫だったんだろうか?そのあたりちょっと知りたい気もする。
禅と日本文化 (岩波新書)
禅と日本文化 (岩波新書)鈴木 大拙 北川 桃雄

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タグ:文化
posted by てけすた at 03:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 本 (国内) 小説以外の著書 | 更新情報をチェックする

2014年02月21日

砂の女 安部公房

いや、この小説はちょっとぶったまげた。というと言葉が下品になってしまうけど、寓話とか象徴とかそんなもので読むのはもったいないくらい前衛。
もう有名だからあらすじはいまさら紹介するほどではないけれど、砂の部落へ落ち込む主人公、流体の砂との格闘、逃亡の試みとあって、砂の部落が非現実的なように見えてどこかにあってもおかしくないような雰囲気なのがまたなんとも。

それでもあえて寓話として読むと、日常生活から非日常の不条理へ落とし込められた人間の格闘振りがなんともこころにせまってくる。
最初はあがき、一時は逃亡に成功するかと思いきや、逃れられず、そして逃げることが可能になったとき、なぜか人はそこにどっぷりと使ってしまう。
だが、不条理な状況って難だ?
後半に主人公の言葉がある。
「納得がいかなかったんだ…まあいずれ、人生なんて、納得ずくで行くものじゃないだろうが…しかし、あの生活や、この生活があって、向こうのほうが、ちょっぴりましに見えたりする…このまま暮していって、それで何うなるだと思うのが、一番たまらないんだな…どの生活だろうと、そんなこと、分かりっこないに決まっているんだけどね…
まあ、すこしでも、気をまぎらせてくれるものが多いほうが、なんとなく、いいような気がしてしまうんだ…」

ああ、けだし名言。人はいろんなものに飛びついて気を紛らせているように私には見える。でもどの生活が一番ましなのか。
砂をかきだす生活はたまらないだろうな。
でもだからといって他の生活がましなのだろうか?
いや、どの生活も同じとは思わないが、ましな生活って一体なんだろう?
砂の女 (新潮文庫)
砂の女 (新潮文庫)安部 公房

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posted by てけすた at 06:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 本 (国内) 小説 | 更新情報をチェックする

2014年02月13日

百鬼園随筆 内田百閒

百閒先生の随筆はどこか独自の観点があって面白く読める。
私がちょいと気に入ったのは、「地獄の門」という作品の中に出てくる一節。
ここでは高利貸しに借金する「私」が放蕩で借金するのかと聞かれて、ある友人の言葉を思い出したところだ。
実際、世渡りがうまいという事は一つの天びんである。僕なんか到底実生活で成功することは出来ない、努力すれば、却って反対の結果になる。実生活ばかりではない。うまいという事は信仰の上にもある。僕達よりも遅く信仰生活に入って、それで、うまく神に接し、神をとらえている者がいくらもある。僕は、神を信じる事すらも、へまだ。

これね、とても身にしみる。実際、「私」も放蕩だって、うまく遊べるかどうかわからないと思っているのだし、実はなんでもうまくやるということには才能があって、もしかすると失敗ばかりすることも一つの才能ゆえではないかと思うくらいだ。
才能がないということも才能かもしれないし、おっと、そんなこと書くと詭弁くさくなってしまうが、要は人間自分自身にしかなることができないということだ。
だから、今、世間的にうまくゆかなくても嘆かないことにしようと思う。
百閒先生も、私的にはあんだけ借金して大変だと思うけど、先生自体はそんなことは当たり前のことだったのに違いないのだし。
なんかなに書いてるかわからなくなってきた。
百鬼園随筆 (新潮文庫)
百鬼園随筆 (新潮文庫)内田 百けん

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タグ:百閒先生
posted by てけすた at 12:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 本 (国内) 小説以外の著書 | 更新情報をチェックする

2014年02月01日

読書2014.1月の分

期間 : 2014年01月
読了数 : 4 冊
パイドロス (岩波文庫)
プラトン / 岩波書店 (1967-01-16)
読了日:2014年1月20日
恋と狂気と神。いや、厄介だけどこの3点セットは人間が生きるということに対して情熱を与えるよな。弁論術の話もためになる。まあしかし弁ずる内容を熟知するということは大変ではあるね。
空蝉ノ念-居眠り磐音江戸双紙(45) (双葉文庫)
佐伯 泰英 / 双葉社 (2014-01-04)
読了日:2014年1月10日
肘砕き新三と空蝉をだぶらすところはなかなかよかった。辰平とお杏さんの話が微笑ましくてほっとする。あと例の事件についてはそういう展開できたか、という感じ。
からだのひみつ (新潮文庫)
田口 ランディ , 寺門 琢己 / 新潮社 (2004-04)
読了日:2014年1月6日
端的にいうと家畜化されて鈍くなっている人のからだをもう少しからだに敏感になってみようという趣旨の対談。内臓と感情の話は面白かった。
「雨の木(レイン・ツリー)」を聴く女たち (新潮文庫)
大江 健三郎 / 新潮社 (1986-02-27)
読了日:2014年1月3日
ここに描かれてる「死」を読むと人間の尊厳というものは目に見えず、人の価値観に測られないからこそ受容されるのではないかと思った。
posted by てけすた at 11:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 本 (その他雑談) | 更新情報をチェックする