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2013年12月26日

大帝ピョートル アンリ・トロワイヤ

ロシア、その混沌さと広大さはヨーロッパとは一線を画す。
その眠りを覚ますかのように、近代化を図り、ヨーロッパ諸国の仲間入りを果たしたのがピョートル大帝だ。
ロシアを近代国家に作り上げた彼の手腕とその人柄はまた実にロシア的な混沌に溢れている。
職人気質といいたくなるほどの技術への傾倒、ヨーロッパ趣味はまず長所になるだろうが、祖国の迷妄さを嫌った故の冒涜や普段の破天荒な振る舞いには驚かされる。そして、近代化に向けて国民に多大な犠牲を強いたのも彼であった。
重税、徴発、拷問、等等、もう読んでいて私など震え上がるくらいの酷薄さで国民は駆り立てられてゆく。あのペテルブルグもたくさんの犠牲の上に築き上げられた、ピョートルの「天国」であった。

正直、実際胸が塞がれるような思いになるのだが、このような気質が確かに後年ロシア文学として結晶したのだろうと考えると、なんだが不思議な心地になってくる。ロシア文学に感じる人間の愚かさと偉大さは確かにピョートルに存分に備わっているのである。こういってはなんだが、カラマーゾフの兄弟に出てくるミーチャみたいな矛盾を生き抜いてきているのである。

というわけで、読むのにえらく時間がかかってしまい、そのわりにうまく感想が書けない。
とにかく、疲れた。もうおなかいっぱい。
大帝ピョートル (中公文庫BIBLIO)
大帝ピョートル (中公文庫BIBLIO)アンリ トロワイヤ Henri Troyat

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タグ:伝記
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2013年12月11日

日本人とは何か 加藤周一

主に1950年代に書かれた評論文で構成された日本人論。
芸術の視点から見た日本人のこと、天皇制、文明論、日本の知識人についてなどの評論が8篇収められている。
芸術の話や天皇制のことなどは特に思うところもない市井のぼんやりした人間なので、そのまま何も考えずに読んでいたが、知識人について、特に戦争との関係についてはなかなか興味深いなと思った。

『戦争と知識人』においては知識人が戦争をどう捉えてどう行動したのかということが書かれている。ある知識人は戦争が終わったあとで「だまされていた」というが、著者によればそんなことはないという。言論統制のさなかで知識人はその背後にあるものを読み取っていれば、この事態がどう動くのかということはわかる、というのである。そして、そういった心情的な嫌悪感は持ちつつも時勢の中でとくに抵抗することもない知識人の例として高見順の日記を参考に論を重ねてゆく。
こうしたいわば「曖昧な」知識人は多かったというのであるが、それはなぜか。
著者は彼らのもつ価値や原理が日本というものを超越していかなったからだと見る。高見順の例でいけば、政府のやることを批判しながらも、天皇と殉じるという気持ちの矛盾があるということだ。一方でこの体制を忌避する例えば永井荷風のような人物は「日本」を超越する価値観を持っていたという。だがそれは外国に投影されているものであり、それが日本の知識人の不幸であった。

このような知識人のあり方は現在どうなっているのだろうか?果たして日本の現在の知識人は「日本」を超越する価値観を有しているのかどうか?
著者はこの評論の終わりに「神ながらの道」について、という見出しで日本の精神的思想的なありかたに少し触れているが、結論として外来思想が日本の神ながらの道が超越的な価値や真理の概念があったかといえば否であり、外来思想が超越的なものをもたらしたかといえば否と答え、多くの知識人たちがこの道に続いていた、とした。この見方は実感としてはあるなあと自分では思う。あくまで個人の感想だが。
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タグ:批評
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2013年12月07日

数の神秘 フランツ・カール・エンドレス

“11に33を掛ける。でてきた答えにまた33を掛ける。これを4回繰り返す。”
これは11月23日に見た夢なのだが、数字ばかり出てきてなんのことやら、という感じ。夢の解釈では象徴の理解が役立つことがある。数字の象徴というものがあるのは知っていたが、せいぜい一桁の数字だったので、11だの、33だの、というのはちょっと不明だった。それで、ネットで探していたときに、数字の象徴について、いろんな文化の例を紹介している本があるんだよ、と書かれていたタイトルがこの『数の神秘』という本である。
1986年の本で、今は絶版だが、古本を探して購入して読んだところこれがなかなか参考になる。数字の象徴についての読み物が若干あって、その後、1〜20までの数についての解釈、および、21〜10000までの中で特筆すべき象徴をもっている数字を取り上げて解説している。
ピタゴラス派の解釈はもちろん、カバラ、キリスト教、イスラム教、他にも民間の言い伝え、古代アメリカ文化や、仏教、アジアまで多岐に渡る。これを読んでいると、数字というのは無味乾燥な記号ではなくて、豊かな象徴性を持っていることに改めて驚かされる。なるほど、哲学をやるには数学ができなければならない、という言葉はこうしたものに触れると納得できるものがあるな。哲学は論理的でならなければならない一方、象徴についても敏感にならなければならないのだから。

で、冒頭に書いた夢だけど、この本に従って解釈するとこんな風になる。

11の意味→沈黙の数で、罪と償いの数だが、サッカーやフットボールで11人なのはある心理学者によれば人間の不完全性を示す数として解釈している。一方、最近の研究では、11は5+6の和、つまり、天と地の結合、ミクロコスモスとマクロコスモスの合体の象徴と解釈されている。

33の意味→完成の数。キリストがこの世にいたのが33年間、ダビデが国を治めたのが33年間。他にイスラム教では福者の理想年齢が33歳であり、インド神話では11×3=33の神々など。

4の意味→物質界を秩序づける数。「見分けがたい多様性に秩序をもたらした」多くの文明で、4は数える限界だということ。

ここから、「天と地、あるいはミクロコスモスとマクロコスモスの合体を完成させ、秩序付けること。」という意味に解釈できそうだ。もちろん違うかもしれないけど、個人的な数字の意味に心当たりもないので、さしあたりこんなもんだろう。
しかし、夢というのは、回りくどい言い方をするもんだな。
数の神秘
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2013年12月01日

狂気について他二十二篇 渡辺一夫

特定秘密保護法案の衆院可決できな臭さが一段と増した国内だが、ちょうど私はユマニズム思想を持ち続けた渡辺一夫の評論選である、この『狂気について』をゆっくり読んでいるところであった。
本書はラブレー研究においてのエッセイ、ユマニズムに関わった人々のこと、著者自身の考え、そして身辺エッセイ、特に本についてのもの、などが収められている。

ユマニズムについての考えは、一見随分生ぬるく見えて、勇ましい人々から槍玉に挙げられるのだけども、著者はそうした勇ましい人々が思想や機械に「使われていないか」、あるいは自分自身の考えがなくなって「機械化」してはいないか、ということを再三に渡って警告している。
力を行使して、いわゆる「悪」を駆逐していく方法は短期でみれば効果があって、しかも爽快、だから徹底的な寛容を説くユマニズムの思想は「甘い」と思われる。
しかし、著者は言うのだ。不寛容の代償は大きいと。
とはいえ、「人間が機械になることは避けられないものであろうか」の中で、著者は自らを恥ずべき消極的傍観者で敵の弾で親友が殺されても反戦論を唱えるのかという問いにただ、困るなと言うだけであったという。
近頃なら、やっぱり「俺は戦う」というのが人々の心を打つのであり、私もやっぱり戦うと言ってしまうなと思う。
そして、そのあと、著者の言葉にはっと胸を突かれたのは
“親しい先輩や友人たちが刻々と野蛮に(機械的に)なってゆく姿を正視することはできなかった”というものだった。
人々が緊急事態のなかで理性を失い、群集心理に巻き込まれてゆくこと。これを何より著者は恐れたのである。そういえば、『渡辺一夫敗戦日記』においても、尊敬する先生方が戦争に鼓舞されて発言するところを苦々しく書き記した部分があった。
このような態度は確かに「強く」はないし、直接の問題解決にどのくらい役に立つのか見えにくいこともあろう。だけれども、皆が煽られて駆り立てられてレミングの行進よろしく同じものへ向かって爆走してゆくとき、冷静で寛容な精神が実は必要であるということ。各人はこれを自らのうちに養わないといけないのではないか、と思うのである。
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posted by てけすた at 15:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 本 (国内) 小説以外の著書| edit | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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