2013年08月26日

構造としての神 ケン・ウィルバー

書いてる内容が難しいのか、翻訳がかたいのか、なかなか読みすすめられなかったが、ようやく読み終わった。
本書は、心理学と宗教の考察を応用して、それを社会学との関係において論じたものである。
心理学は個人の心を扱うが、その際に宗教性についてしばしば論じられることがある。社会学は集団についての学問だが、やはり人間の心ぬきで論じられない以上、それと宗教との関係について語ることはさけられないと思う。
社会学と宗教、ということになると、もっぱら宗教集団の病理が語られることになる。
著者はそのことについて、まず、人間の発達について、前合理→合理→超合理という風に進むが、往々にして、今までの学問では、前合理と超合理が混同されてきたことを指摘する。
いや、確かにこの問題はわかりにくいんだよね。
なぜわかりにくいのかといえば、どちらも合理的な考えを抜きにしているように見えるからだ。
この見分け方について、(著者はカルトとサンガという言い回しをしているが)カルトの場合、その個人の自由な心を封じてしまうが、サンガでは自由な心はそのままに超越を目指す、としている。
もちろん、これだけで見分けることができるわけではないこともきちんと断っているが、要は、合理的な心の働きを阻害してるか否かということなのだろう。
そのうえで、今日の社会において超合理への変形をいかにしていくのか、その問題提起がなされているのである。
あくまでも問題提起だけで、その解決策は見受けられなかったのだけど、これはなかなか難しいし、なにしろ、人間は生まれたら、前合理的な発達からはじめなければならないのだから、合理的なところまで到達するのにも時間がかかるのに、それを超えてゆくことは並大抵のことではないだろう。
とはいえ、呪術的な中世からルネサンスを経て、合理的考えの社会が登場していまやそれは爛熟している。ここでローマのように退廃してしまうのか、それとも超合理へと飛躍することができるのか。
とにかく、まず人は、前合理と超合理を見分けることからはじめなければならないだろうな、というのが読後の感想。あとは難しくて(汗
構造としての神―超越的社会学入門
構造としての神―超越的社会学入門ケン ウィルバー 井上 章子

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タグ:思想
posted by てけすた at 07:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 本 (翻訳もの) | 更新情報をチェックする

2013年08月17日

大尉の娘 プーシキン

出だしがなんか凄いよ。生まれる前から一軍曹として登録されたという主人公。なんか冗談みたいで面白い。プーシキンはこういう諧謔がうまいなあと思う。
主人公グリニョーフが学校を終えていよいよ軍に入るのだが、あこがれのペテルブルグどころかものすごい僻地へ飛ばされてしまう。そしてそこの司令官である大尉の娘と恋に落ちるのだが、果たして両親の承諾を得られることも無く、絶望に陥る。が、運命はめぐり、プガチョーフの乱がおこり、その要塞において大尉夫婦は処刑されてしまい、ひとり娘マーリヤはかくまわれるのだが。

あまり長くはない章立てで構成されており読みやすいのもあるが、反乱というテーマと青年の成長をうまく織り込んで、それを重くなく洒脱な文章で描写しているところがよい。
また、プロットの伏線の折込が聞いて、あとでああ、こんな感じになるのか、という意外性も、まあミステリー慣れした人ならそれほどではないのかもしれないが、私にはちょっと新鮮だった。
ストーリー自体は今のものに比べれば御伽噺のようではあるけれども、その表現の仕方などを味わっていると、この洗練された雰囲気は何者にも得がたい気がする。
新潮文庫では後ろに伝記が少し出ているが、プーシキン、その生活はかなり波乱に富んだもののようで、感受性と野心の強さがあだになって命を縮めたとしか思えない。
まったく、もったいないことである。プーシキンがもっと長生きしていたら、ゴーゴリだってあんな狂気に陥ることもなかったのではあるまいか。いやあ、ほんとに残念。
プーシキン小説全集〈第3〉大尉の娘 (1954年) (新潮文庫)
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タグ:ロシア文学
posted by てけすた at 11:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 本 (翻訳もの) | 更新情報をチェックする

2013年08月12日

銃・病原菌・鉄(上)(下) ジャレド・ダイアモンド

人類で格差があり、あるものが、あるものを征服し、その逆がなかったのはなぜなのか、という疑問がニューギニア人から出されたというのがきっかけとなり出来上がった著作だそうだ。
この格差はおそらく無意識のうちに、人種や民族の力の違い、というものに還元されていそうだ。しかし、現代のアメリカなどをみていると、人種の坩堝であり、差別はあるにせよ、どの人種が特別劣っているから、というようには見えない。ならばどう考えたらよいのか。

著者は、その答えを地理的な要因に求めた。ヨーロッパを含めたユーラシア大陸と他の大陸の条件の違いが技術の差を生み出したという。ユーラシア大陸は他の土地と比べて決定的に有利な条件がそろっていた。栽培化しやすい植物、家畜化しやすい動物、東西にのびた形はその技術が伝播しやすい状況にある。
一方、南北に長いアメリカ大陸やアフリカ大陸、もっとも小さいオーストラリア大陸の不毛な土地などはそれらの条件をユーラシアよりはもっていなかった。そこで技術の発展が遅れてしまったのだという。
では、ヨーロッパと中国は同じユーラシア大陸にありながら、なぜ中国は発展しなかったのか、という疑問が出てきたのであるが、その答えはエピローグに書いてあった。

この著作に書いてある要因、つまり環境の違いが格差を生み出したという結論は人種格差の偏見を打ち砕くように思う。が、人種格差が仮にあったとしても、私は人間が生き物である以上、それも環境の違いだと思うのである。だから、強大な力を持っているからといって、それを吹聴するのも変な話で、要はそういう人は運がよかったとか恵まれていた、ということであって、もしかしたら弱い人々は実はハンデ戦で生きている人々なのかもしれないなあ。と最後はちょっと飛躍した考えになってしまいました。
文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)
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文庫 銃・病原菌・鉄 (下) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)
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2013年08月03日

救急精神病棟 野村進

昔学生の頃、大熊一夫の精神病院ルポ本を読んだことがある。そこで大熊さんはアルコール依存症を装って来院したところ、すぐに入院となって、そして内部の様子が語られた。今手元にその本はないので、細かなところまでは覚えていないが、正常な人間が酔っ払っただけでアル中と判断された杜撰さが結構衝撃的だったのを覚えている。これではどんな人間でも周りが迷惑すれば入院させることができるのでは、とちょっと恐怖に駆られたものだ。

ところで、この『救急精神病棟』では千葉県精神科医療センターの「精神科救急」という部門について取材されたもの。ここでは急に重篤な状態に陥った患者を診るために二十四時間体制で動いている。そして軽度の症状やいわゆる人格障害と判断された場合はその場で入院させず、外来で対応している点に時代の移り変わりを感じた。
とはいえ、この救急センターは後続する病院がほとんどない、という点で、当時の院長計見先生は「失敗だった」と述べる。重篤な症状は一刻でも早く治療を行い、慢性状態に移行させないようにするのが救急センター設置のねらいだったのだが、なにしろ人員や体制施設の充実が現状ではなかなか難しいようなのである。

それでもこのルポが行われた2000年前後の3年間で転換期が来ているといわれていた。現在はどうなのであろうか?精神病は治療以上にケアが大切だという話を聞いたことがある。徐々に地域社会に暮らしながらの治療が一般的になってきているとはいえ、まだまだ長期の収容患者も多いのだろうか。

ルポの中身については是非読んでいただきたい。「ビジネスマンの精神病棟」を書いた浅野誠医師も登場して、この精神科救急の底に流れる理念の一端を垣間見ることができる。
救急精神病棟 (講談社文庫)
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タグ:精神医学
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2013年08月01日

柳生大戦争 荒山徹

柳生の名はついてるが、舞台はほとんどが朝鮮関係なのはこの作家のいつものこと。
3部構成の本作品は、一部が元寇後の時代、高麗の兵を供養するためあえて日本へ渡ろうとする国師が主人公だ。二部が柳生但馬守と友矩を中心とした話、もちろん第一部の続きである。そして三部で舞台は朝鮮へ。
朝鮮の上流階級に手厳しい著者で、今回もその高慢なところやいざとなったらなんの役にもたたない臆病さなどをこれでもかと思いっきり描写されたシーンは読んでて胸がすくような思いだ。
まあ、しかし一番のわらいどころは自分の場合だとやっぱり、どんなことも捏造してしまう朝鮮という国を、まさに捏造といえる伝奇小説の中で書いてしまうこと。
著者の朝鮮描写にはこういうことがたびたび出てくるので、最初に読んだ本ではこんなこと書いて大丈夫なのかな、と思ってたんだけど、だんだん毒がまわってきたらしく、もうお笑いにしか見えない。
あとは十兵衛の奔放さや、友矩の妖しさなどを堪能して、やっぱり伝奇は面白いな。と読了。
柳生大戦争 (講談社文庫)
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タグ:伝奇
posted by てけすた at 14:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 本 (国内) 小説 | 更新情報をチェックする