2013年05月30日

剣客商売 勝負  池波正太郎

剣客商売11冊目『勝負』には切なくなってくる話が2篇あった。
「剣の師弟」と「その日の三冬」である。
「剣の師弟」では小兵衛が昔目をかけていた弟子の素行を知り、それを食い止めるのだが、結果は悲劇的におわり、うつうつとして楽しまないもの。
また「その日の三冬」でも、昔、代稽古をつけていた門人の乱行を見て、その騒ぎを取り静めるのだが、やはり結果として悲劇におわりうつうつとして楽しまないもの。

自分が随分目をかけていて、憎からず思っていた人物の凋落を知るというのは悲しいことだ。
そしてできれば無事に事を収めたいと行動するが、それがうまくいかないとき、こんな風に人知れず憂鬱になるだろう。
別に自分自身にそういうことがあったわけではないのだけど、読んでてなんか悲しくなってきてしまってなあ。
小太郎誕生は華やかな話題で、和やかになるけれども、もしかしたら彼だって将来どうなるかわからない恐ろしさ、というものを、この2篇を通じて池波正太郎は伝えたいのかな、と思った。
唯一、凋落はしたけれどもなんとか再生の余地が残った話もあってそちらはちょっとした救い。
ああ、でもほんとこの巻は悲しくて鬱々として楽しまぬ小兵衛や三冬のやりきれなさがこちらにまで伝わってきてどうしようもなかった。
勝負 (新潮文庫―剣客商売)
勝負 (新潮文庫―剣客商売)池波 正太郎

新潮社 2003-01
売り上げランキング : 60967


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

タグ:時代小説
posted by てけすた at 11:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 本 (国内) 小説 | 更新情報をチェックする

2013年05月28日

自然現象と心の構造 C.G.ユング/W.パウリ

ユングの占星術と結婚についての統計からみる自然と心の関係、および、パウリのケプラーの発見が実は彼の心の中にあったある信念から生まれたものだ、というのが主な内容だが、正直いってケプラーの考えてたことがさっぱりわからなかったよ。象徴やら哲学について少し知識がないとさっぱりだ。
とはいえ、何々が何々なのは何々が原因だからとする因果論に疑問を投げかけるこの本は1955年に書かれそれから半世紀以上経過した現在でもわかる人が読めばいろいろ参考になるところがあるのだろうな、とは思う。

私がおっ、と思ったのは実は本文のなかではなく、それは“(シンクロニシティが)法則を形成しているものとして語ることができるのかどうか、われわれはまだ知らないのである。”という部分につけられた注釈にあった。
身体と心の間の関係はひとつの共時性の関係として理解される可能性があることを私は再び強調しなければならない。

心身の関係は脳科学がもう少し進まないとうまく解明できないことはあるだろうな、と思いつつも、じゃあその脳を動かしてるのはなんだろう、と考えるとなんだか話がややこしくなってくる。ただ、病気について例をとるならば、医学がまだ病気の外的要因を知り尽くしていないということはあるにせよ、ストレスがあるから病気になったという因果論以外の見方は必要になってくるかもしれない。

いや、何かいてるんだか自分でもよくわからなくなってきたが、この注釈の部分だけメモって置きたかったのです。
自然現象と心の構造―非因果的連関の原理
自然現象と心の構造―非因果的連関の原理カール・グスタフ・ユング W.パウリ 河合 隼雄

海鳴社 1976-01
売り上げランキング : 212417


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

タグ:読後メモ
posted by てけすた at 04:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 本 (翻訳もの) | 更新情報をチェックする

2013年05月25日

潜在意識ってすごいな

最近本を読むのがえらく遅くて記事もなかなかかけない状態なので、適当にばかばなしなど。

先日から妙に押入れ整理がしたくなっていたのだった。
整理整頓面倒であまりしたくない自分が、なぜかわからないけど、とにかく少し手をつけてみるかなと思ってアルカイザーの攻略地図メモを発見したということはtwitterでも書いたが、まあそれよりびっくりすることがあったのだ。
一番取り出しやすいダンボール箱には結婚式の引き出物でもらった食器などが詰め込まれていて、それを出して使うかどうか検討していたとき、ビニール袋に入った薄い箱が目に止まった。食器ではなさそうで、中を見てみると、万能バサミと軽量スプーンのセットだった。
実は、わたくし、最近健康のために亜麻仁油を飲んでるのだが、普通のスプーンだとどのくらい飲んだのかよくわからないので、自分専用の軽量スプーンをそのうち買おうと思っていたのだった。
押入れ整理がしたくなったのはその数日後のことで、この軽量スプーンを発見したときには、潜在意識の凄さというものを思わずにはいられなかった。
そしてそれを発見してからすっかり押入れ整理しようという気分はなくなってしまったので、たぶんそのことを教えるために押入れ整理しろと潜在意識はささやき続けていたのに違いないと自分で勝手に思ってる。

人は意外にもそういうなにかしらやったほうがいいな、という勘が働くことがあるが、さまざまな理由からそれを無視することが多いのではないか。
だが、こうして無視しないで手をつけてみるとまあこういうことが起こったりするわけで、人間の能力って実は凄いんだな、と改めて感じた次第。
でも、偽者のやりたい気分もありそうだからそこは用心しないとね。

以上終わり。
タグ:心理
posted by てけすた at 04:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 日常 ばかばなし | 更新情報をチェックする

2013年05月18日

ブッダの夢―河合隼雄と中沢新一の対話

ユング心理学の日本において代表的な臨床家とチベット密教についての第一人者の刺激的な対談。90年代に行われたものであるが、今読んでも、それほど違和感なしに読めてしまう。
主に近代自我(西洋)のものの考え方とは違う東洋の思想を話題に、また、箱庭療法についての実際についても知ることができて、なかなか面白かった。

ところでこの対談に「アメリカン・インディアン神話の潜在力」という章がある。その中で、中沢氏がアメリカン・インディアンとアメリカ白人が接触したときの距離の取り方の違いについて述べていたところが印象に残った。
アメリカン・インディアンはお互いに適当な距離を発見できるはずだから、その距離を模索しようという交渉を提案したのだが、白人のほうは、自分たちと同じように彼らを変えてあげなければならない、という親切心(!)を起こしたがために、その話をきかなかったのだという。そして現代の不幸はそこから発生していると。
まあ、近頃はなんでもグローバル化についてつい反感をもってしまうのだから、こういう文章が目についたりするんだが、河合氏はそれに対しそれが世界で一番強い思想になったということは恐ろしいことですね、と応えている。

東洋を始めとしてあらゆる多様性を許容しようという動きが出てきている時代ではあるが、それは主に文化面のことでありその一方で政治経済についての考え方は一元化されようという気配は相変わらずなくなっていないように思える。
適当な距離を落としどころにして付かず離れずの付き合い方ができれば少しはましな世界になれるのかもしれないと夢想してしまった。
ブッダの夢―河合隼雄と中沢新一の対話 (朝日文庫)
ブッダの夢―河合隼雄と中沢新一の対話 (朝日文庫)河合 隼雄 中沢 新一

朝日新聞社 2001-02
売り上げランキング : 69370


Amazonで詳しく見る
by G-Tools


タグ:対談
posted by てけすた at 10:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 本 (国内) 小説以外の著書 | 更新情報をチェックする

2013年05月11日

脳のなかの幽霊 V.S.ラマチャンドラン

人間の不思議な感覚、手や足がないのにあるように思ってしまう幻肢や、親しい人が他人のように見えてしまうカプグラシンドロームなど、脳を損傷した患者さんを調べることで認知とか感覚というものがどのように働いているのか、一般向けに紹介した面白い本。
これは特殊な例からその仕組みを解読しているのだが、たとえば親しい人がよくにた別人に見えてしまう症状の逆、すべてが知ってる人のように見えてしまうという場合もあり、特定の人種にレッテルを貼ってしまうような人種差別もこういう脳の構造をしているかもしれないという話もあり、感心してしまった。もちろんそれは推測で絶対そうだというわけではないんだが、こういう例などを読んでると、人間の性格とか信条とかそういったものはその人の脳の個性ということになるんだろうな、と思う。だからといって、それが変えることができないのかというとそうでもないらしくて、脳をだます、というと語弊があるけれども、工夫しだいでその症状を抑えたりすることができるというのだから、なかなか奥深い世界ではある。

私が個人的に興味をもったのは、心身医学を扱った第11章。免疫系と心の関係はストレスの話などで知られているが、ここではさらに話が進み、条件反射を利用した実験が行われたことが書かれている。この実験は著者が手がけたものではないが、吐き気を催す薬とサッカリンを同時に与えたネズミはやがてサッカリンだけで吐き気がするという実験だが、ここにこの吐き気の薬は免疫系を抑制する効能もあり、そのネズミは免疫力も下がって感染症にかかってしまったというおまけがついてきた。
そういえばイボの話も出てるんだが、ウイルス性のイボって暗示で治ることが多いとヒフ科の先生が自分のサイトで書いてるのをあちこちで見かけた。
心と免疫の関係はもっと研究されてよいものだと思う。いやもう研究されてるのかな?

それとね、ここでは書かれていなかったけど、心ってだいたい胸にあることになってるでしょ?
あれ、脳神経学的にはどういうことになってるのかちょっと知りたい。
脳のなかの幽霊 (角川21世紀叢書)
脳のなかの幽霊 (角川21世紀叢書)V.S. ラマチャンドラン サンドラ ブレイクスリー V.S. Ramachandran

角川書店 1999-08
売り上げランキング : 18871


Amazonで詳しく見る
by G-Tools


タグ:
posted by てけすた at 12:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 本 (翻訳もの) | 更新情報をチェックする

2013年05月03日

精神科医がものを書くとき 中井久夫

話題が多岐に触れてるのでエッセイ集といえばエッセイ集のようなものにあたるのだろうが、その視点は人間が社会上生活していくのにどういう生きずらさがあるのか、そして生き易い世の中にしていくにはどうしたらいいのか、ということに貫かれている。
それが私が中井久夫の書くものを読み続ける理由だ。
その中身はよく考えると当たり前のことを言ってるのだが、指摘されるまではそのことを失念していることが多い。
たとえば、このなかに「危機と事故の管理」というのがあって、システムの移行期においては改善するにしても、どこか盲点ができて事故が多発することを指摘している。
確かにそうだ。変更しているときにはそのシステムは不安定であり、なにが起こってもおかしくはないのだ。特に、このことを肯定的に捉えているときには、このことが忘れ去られてしまうのではあるまいか。

収録されてる文章には他の本ですでに読んだようなエピソードも混じっていて、基本的にいつも同じようなことを言っているのではあるが、それでも読めば、ああ、そういえば前にもこの話をよんだことがあるが、これは大切なことだよなあ、と認識することが多い。
巷で「大切なことなので2回いいました」じゃないけれど、ほんとに、中井先生の指摘するもろもろの話は大切なことが多いのだ。
精神科医がものを書くとき (ちくま学芸文庫)
精神科医がものを書くとき (ちくま学芸文庫)中井 久夫

筑摩書房 2009-04-08
売り上げランキング : 79651


Amazonで詳しく見る
by G-Tools


タグ:医療
posted by てけすた at 03:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 本 (国内) 小説以外の著書 | 更新情報をチェックする