2012年01月31日

空海 稲垣真美

1985年は弘法大師御入定1050年にあたる年だったのだが、その御遠忌大法会奉賛記念として出版されたのがこの作品である。
著者は仏門の家に生まれ自らも仏教を大学で教えた作家。
ということでどちらかというとお堅い感じの仕上がりになっているのであるが、空海の生きた時代の歴史がきちんと書き込まれており、この時代何があったのかということがなんとなく見えてきた。
当時、僧は勝手に得度して名乗ることを禁じられていたのだが、それは役小角や行基のように官を外れたものがまとまって行動するのを嫌ったということがあるらしい。
なるほど、ちょっと考えればそうかなあとわかりそうなものだが、ここに書かれているのを読むまであたくしはちっともそのことに思い当たらなかった。
それだけに、そこまでしてでも僧にこだわった空海の情熱、というものを感じられ、また衆生済度のためにあちらこちらを歩き回る様子などが小説に織り込まれ、私が今まで読んできた空海ものの小説とはまた違った空海の側面に魅力を感じた。
まあ、そもそも、私が今まで読んできたのはエンターテイメント的であり、空海の超人的な能力ばかり強調されてたから、本来は、こういうしごく真面目な小説から読むほうがよかったのかもしれない。
とはいえ、こういう文献から教科書的に立ち上げてきた小説にすら、空海の超人的な話が織り込まれるのだから、それだけ際立った活躍をしたのであろうなあとも想像してしまう。
いや、自信がないのでそのまま積読にしてある「空海コレクション」もそろそろ読めそうかな、と考える今日この頃。
空海 (徳間文庫)
空海 (徳間文庫)稲垣 真美

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ラベル:空海
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2012年01月30日

カフェイン離脱症状

以前は朝と夕食後にコーヒーを飲む生活だったのだが、喘息の気管支拡張剤であるユニフィルをあるとき飲んだところ、猛烈な動悸と気持ち悪さで眠れなくなって次の日病院へいって薬を変えてもらったことがあり、似たような成分のカフェインが怖くなってきた。それであまりとらないようになって、最近ではコーヒーは朝だけの生活になっていた。とはいっても夕方は歯のためにお茶を飲んでいたのだが、それもやめて生姜湯にしたのは先月のこと。
ところが、夕方カフェインを摂らなくなったせいなのかどうか知らないが、朝もコーヒーをあまり飲みたくなくなってきたので、一度ココアに変えたが、それもぱっとせずにいっそ飲み物を全部止めてみた。
するといかに飲み物が苦行だったかというのがよくわかったのだが、別問題が出てきた。
カフェインの離脱症状である。
カフェインを摂らなくなったその日、頭がいたくて猛烈に眠くなり、ロングな昼寝をしてしまったのだけど、そのときは風邪かと思ったので極力暖かくして無理しないようにしていたが、風邪につきものののどの痛みがないのでちょっとおかしいなとは思っていた。
そしてそれから5日経過した今日なんだけど、相変わらず眠気が酷いし頭痛もする。一体これはなんなんだ、もしかしてコーヒー断ちと関係あるのでは?と考えて検索したところ、カフェインの離脱症状にそのような症状がでることがわかったのであった。
いったいどのくらいこんなのが続くんだろう?
一週間というのもあれば、3ヶ月くらい変だったという人もいるので、なんともいえないが、これがつづくと結構日常生活に差し支えるなあ。
でも、コーヒーとかあまり飲む気がしないんだよなあ。
かといってお茶は体を冷やすし、紅茶はあまり好きではないし、ココアも砂糖を入れないとあまり美味しくないので(歯のために砂糖は極力とらないようにしている)結局飲むものがない。
カフェインはそれほど危険視されていないので家族にいっても鼻で笑われるだけなのだが、どうしてどうしてこの離脱症状はなかなかあなどれないと感じる。
禁煙でもこんなにひどい眠気はこなかったぞ。
カフェイン恐るべしだ。

ラベル:健康
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2012年01月28日

スペードの女王・ベールキン物語 プーシキン

『スペードの女王』は幻想小説といってしまえばそれまでなのだが、ポーやホフマンの雰囲気とは違って明るく澄んだ雰囲気が漂う。といいますか、解説でホフマンの名前が出てくるまで彼らの名前など全然連想しなかった、そのくらい作風が違う。
こんなに洒落た物語はさぞかし宮廷でもてはやされただろうと思うが、実際、宮廷かどこかはしらないが、カルタをするときに、ゲルマンのマネをした輩がたくさんいたとかいう話が解説に書かれていて、いつの世もメディアに踊らされてしまう人はそこそこいるものだとわかる。
続いて『ベールキン物語』もまた洒落た感じのする短篇集である。
5つの話が載っているがハッピーエンドにしろそうでないにしろ陰惨なイメージはほとんどなく、悲しい話にしてもどこか澄んだ雰囲気を漂わせている。
この心地よさはなんというか、うまくいえないのだけど、モーツァルトの軽快さに似ているのかなあなどと考える。いや、モーツァルトあまり知らないんだけどさ。
わたしねー。これなんで児童書用のレーベルでも出版しないのかなあと思うんだけど。
賭博とか駆け落ちがいかんのだろうか?
それとも子供受けしないのかな?
だけど、この小説にある雰囲気に感銘うける子供もいると思うんだけどなあ。
スペードの女王・ベールキン物語 (岩波文庫)
スペードの女王・ベールキン物語 (岩波文庫)プーシキン 神西 清

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ラベル:ロシア文学
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2012年01月26日

春宵十話 岡潔

主に教育について岡先生ががつんと意見を述べる1冊。
凡庸な私からみると岡先生の意見は極論に思えるのだけど、なぜかずいぶん面白くてそして苦笑してしまう。
いや、この苦笑というのは珍妙とか変とかそういう意味ではありませんぞ。明治生まれで今よりはずっと厳格な教育を受けてきたであろう岡先生が、たぶん私のような動物性の入り込んで、ぼんやりしていてなにもわかっちゃいない人物をみて、日本の教育はここまで地に堕ちたかとため息どころか絶望のあまり悶絶するのではないか、という想像をしたうえでの苦笑であります。
情緒、という言葉を先生は使う。情緒とは何かと私はあまり掴めないのだが、もののあわれじゃないけれども、悲しみがわかるという意味なのかなあとも考える。
今の教育はこの情緒と道義をおろそかにしているのだと、先生は気炎を吐く。いや、確かにその通りでございます。
少なくとも私の受けてきた教育はあまり物事を考えるということはなかったように思う。どの科目であれ、考えるというよりは今まではこういうことがあって、こういうふうに問題を解くんだよ、という授業であって、美だの正義だのは観念的な話題になってしまっていたのはあるかもしれないなあと思う。
ま、そんなわけでこの結果が今の日本だと思うとねえ、なんとも微妙な気分にもなるのです。
春宵十話 随筆集/数学者が綴る人生1 (光文社文庫)
春宵十話 随筆集/数学者が綴る人生1 (光文社文庫)岡 潔

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ラベル:教育
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2012年01月22日

病気にならない生き方3冊 新谷弘実についてツイートしたことをまとめ

tekesuta / てけすた
[MM登録] 病気にならない生き方 -ミラクル・エンザイムが寿命を決める- http://t.co/T5IcbZlr 食生活の話とかはわりと納得しながら読んだんだが、胃相、腸相という言葉にツボ押されまくり。あとミラクル・エンザイムとか言葉が怪しすぎる。とはいえあと続篇2冊も一緒に借りてきてるので読みますぞw  at 01/21 19:37
tekesuta / てけすた
サンマーク出版の本は私にとって娯楽本 at 01/21 19:43
tekesuta / てけすた
[MM登録] 病気にならない生き方 2 実践編 http://t.co/3nfGYNoL 電子レンジとやかんのお湯を植物の水遣りに使ったら…という話を紹介しているところに一抹の不安を感じた。これは使用実感の話です、とか健康食品のように注意書きを付けておいたほうがいいのではないかとつい思ってしまう。この手の本は。  at 01/22 12:59
tekesuta / てけすた
[MM登録] 病気にならない生き方 3 若返り編 (3) http://t.co/QUagE9rU 3冊ぶっつづけで読んでおなかいっぱい。今漢方についての本を読んでいるのだが、それにはタイプというか体質別についてかかれてあるのに比べ、新谷さんの方は画一的な方法論なので、鵜呑みにするのはちょっとまった、という感じだなあ。  at 01/22 19:36
tekesuta / てけすた
もう画一的な方法しか書いておらず、それが正しいとか言ってしまう時点でトンデモ本決定。まあでも世の中そういいきってほしいという人がたくさんいますからな。 at 01/22 19:42
tekesuta / てけすた
しかし、立派な先生がなんでトンデモに手を染めてしまうんだかなあ。 at 01/22 19:45
ラベル:健康
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2012年01月21日

ドレのドン・キホーテ 谷口江里也訳・構成

岩波文庫の「ドン・キホーテ」にはギュスターヴ・ドレの挿絵が幾つか入っていたが、これがすこぶるよくて、今回宝島社から出た時空ルネサンス・シリーズにドン・キホーテが上梓されたので迷わず購入した。
ドレの挿絵を楽しむのがメインだったので、挿絵の説明書きにあたるあらすじのほうはあまり期待していなかったのだが、ざっと読んでみるとそれなりに岩波文庫で楽しんだドン・キホーテの雰囲気があって悪くない。ちなみにここに収められている話は正編(岩波文庫では前篇にあたる)のみであるが、一応これはこれだけで完結しているので、これを読んで面白いと感じたら岩波文庫前後篇6冊を読めばいいと思う。
かようにお勧めできる本ではあるのだが、一つ残念なことに続篇部分はないために、サンチョが領土を手に入れて、さんざんな目に遭った後、自分のロバの顔を抱いて泣くシーンがあったと思うのだが、それが載っていないこと。あれはなかなかよかったんだが。
ドレのドン・キホーテ
ドレのドン・キホーテセルバンテス ギュスターヴ・ドレ

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ラベル:スペイン文学
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2012年01月17日

葉隠物語 安部龍太郎

昔の書物というのは書かれてる言葉に難儀するので、ついそれを題材とした小説や解説本を先に読んでしまう。「葉隠」も隆慶一郎の小説、三島由紀夫の解説本と先行して読んでしまった。
で、今回もまたそれを題材とした小説である。いったいいつになったら「葉隠」読むんだか。
「葉隠物語」は葉隠誕生のいきさつから、その内容をエピソード形式として小説に仕立て上げたものである。安部龍太郎は初読書だが、隆慶一郎のような伝奇ではなく、わりとオーソドックスなんだな。だって、この本の著者紹介文に「隆慶一郎が最後に会いたがった男」との伝説をもつなんて書いてあるからさ。
まあ、それはいいとして、このエピソード化は葉隠の様子を分りやすく説明してくれる。それは佐賀鍋島藩の歴史と気質を存分に盛り込んだ書だったのだなあ。と、当たり前のことなんだけど、先に挙げた2冊からはそんなことがよくわからなかったので、そう思ったのだ。

ところでこの葉隠に出てくる話はみんなテンションが高くて、凄すぎると思う。
とにかく、恥辱を受けたといっては死ぬ覚悟でことにあたり、死ぬ覚悟で諫言するし、幕府からなにか言われてきたら徹底抗戦する構えでことにあたるなど、まさに「死ぬほうへかたづくなり」。
こういう価値観がいいのかどうかは一概に言えないのだけど、命を的にするということはそれだけ相手に凄みを与えるわけで、そこまで覚悟ができていない相手ならまず負ける。
といっても、これはやみくもに死のうという話ではない。死ぬ死ぬいっても、犬死は忌み嫌われるし、逃げとしての自害も無責任ということで叱咤される。
いい例が、向陽件完成直後に近くにある自分の家から火を出してしまい、あやうく類焼させそうになった武士が、なんの始末もせずに自害してしまったときに、藩は彼の家を取り潰したという話。「死んでお詫び」はきちんと物事を始末してからでないといけませんよ。
葉隠物語
葉隠物語安部 龍太郎

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ラベル:歴史小説
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2012年01月12日

バウドリーノ(上)(下) ウンベルト・エーコ

ホラ話系小説というジャンルがあるのかどうかは知らないけれど、「バウドリーノ」は実にそんな種類の話である。
実在する歴史家ニケタス・コニアテスに自らの半生を語るバウドリーノの話は歴史の謎と未知の世界についての驚異に満ちており、ニケタスはもちろん眉唾なのだが、その話にぐいぐいと引き込まれていく様子。
でも、このホラ話なんですけど、実に教養が必要なのであるところがつらい。史実の把握と、当時の宗教思想の知識がないと、たぶん面白さの半分もわからないだろう。
それでも、山田風太郎みたいに、史実をトンデモ解釈で面白い話に仕立て上げるような小説を読んでると、前半のフリードリヒ王のイタリア攻略篇においてはその調子で読めるので、あまり知識がなくてもなんとなく面白く読めてしまう。
ところが、ファウスト第二部じゃないけれど、いよいよ東へ旅立つことになったところからはもうファンタジー色満点であり、わけのわからない地理や風土、生き物が出てくる。これが私にはあまりよくわからなかった。しかし、中世でよく言われた事物なのであろうから、西洋人にとっては知識がなくても感覚的にわかるものなんだろうな、とは思った。
というわけで、この小説、私の中では、ゲーテの「ファウスト」と筒井康隆「旅のラゴス」をあわせたような小説となっている。
ただし、「バウドリーノ」においてはちょっとしたミステリーも盛り込まれている。それほど凝ったものではないが、重要なシーンではある。
ということで、ミステリーが好きで西洋の事物に精通している人であれば間違いなく面白く読める。っていうかそういう人は、おそらくもう読んじゃってるからそんなこと書く必要もなかったか。
私的にはヒュパティアのところが面白かった。というのはかの女性は昔カールセーガンの「コスモス」で言及されていて、一時期魅了されたし、彼女が文中で語るのはグノーシスの思想なのだが、これがまたユングではよく取り上げられてる思想だったもので、この部分だけ光があたったように明快に読めたのであった。
バウドリーノ(上)
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バウドリーノ(下)
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ラベル:冒険
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2012年01月06日

わたしの渡世日記(上)(下) 高峰秀子

母が女優の評伝やら伝記やらを何冊か持っているので、昔昔借りて読んだことがあるが、ああいうものは軽い読み物のように見えて結構人生や人について語られてるものだなあと、愚かながらもそう感じた。
高峰秀子の「わたしの渡世日記」は初読であるが、これまでに何回か出版されていたというからきっとなにか面白いのだろうと期待をしながら読み始めた。
養女にもらわれて、5歳で映画デビュー、その後一家の稼ぎ頭として学校にもゆけずに働きつづける上に、養母との確執、血のつながりのある身内のぶらさがり、と書けば、いったいどんな語るも涙聞くも涙の感傷的物語かと思われるが、ところがこの文章ときたら、あくまでもドライでちょっと伝法ですらあり、お涙を期待した向きにはあてがはずれるくらいさばさばしているのである。かといってやけっぱちのどうにでもなれ、という投げやりな感じはしなくて、あくまでも自分を突き放して観察する冷静さを持ち合わせている。
それだけでも面白いのだが、私は、この作品に流れている、高峰秀子の人間観に心を打たれた。
人はみな平等、とかいてしまうとくさくなるが、要は権威に惑わされないのである。そういうスタンスなのでものおじはしないのだが、ただ、その人が仕事や品位が一流かどうか、それだけを基準にする。とはいっても権威が嫌いというわけではなくて、自分の仕事の評価としての賞は本人曰く「ほいほい」ともらうという側面は持っているのだが。

高峰秀子の頭のよさ、というのは次のエピソードに集約されてるだろう。
山本嘉次郎の脚本には(高峰秀子扮する)お花が天秤棒をもってヒョイヒョイと腰を振りながら歩く、そこへ若者がヨオヨオ!でっけいケツだなァ。という台詞をいうところまでしか書いてなくて、ここでなにか一言いっておやりよ、とつまりアドリブで台詞を求められたときの様子。
ガチンコが鳴った。私はヒョイヒョイと腰を振って歩き出した。天秤棒をかついで歩くのはコツが要る。若者が叫んだ。
「ヨオヨオ!でっけえケツだなァ」
私も負けずに叫び返した。
「チエッ、色気づきやがってエ!」
…(中略)…山本嘉次郎とスタッフは転げまわって笑った。

この毒気を抜くような言葉。私も爆笑した。
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ラベル:自伝
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2012年01月03日

ロシア的人間 井筒俊彦

トルストイやドストエフスキーにはなにかわからないが異様な感銘を受けてしまう。そしてゴーゴリにはなんか知らんが面白悲しいというわけのわからない感覚に襲われてはまる。
19世紀ロシア文学はそれほど多くは読んでいないのだけど、それでも得体の知れないものがそのなかにふんだんに盛り込まれていていると常々思っていた。
さて、井筒先生の若かりし頃に書かれたこの「ロシア的人間」は、私のそんな得体の知れない感銘の正体を言葉にしてくれたような本で、非常に面白かった。先生にいわせれば、19世紀のロシア文学は「全体から見て、人間存在の根源的な危機の自覚に立った人間学であり、今日の(書かれたのは昭和28年)世界文学の常識から言えば正に実存主義的である」ということなのだ。
そのような認識から始まって、ロシアのそれまでの歴史、何が問題とされてきたか、そしてプーシキンからチェーホフまで、一気に世界文学へと成長したロシアの文学を主だった作家の分析をしながら追っていく。それはロシア魂における雄大な自然性と、西欧の合理的精神とのぶつかり合いで起こる危機の変遷の歴史でもあった。
ここにおいて、なぜかくも異様な感銘を受けるのか、その秘密がうかがい知れるような気になるのである。特に、これは先生もあとがきで書いてるように、若い頃19世紀ロシア文学に心酔した頃のことを元に書かれた文章なので、その情熱が伝わってきて、読んでいない作家の話もわからないというのではなくて、そんなに面白そうなら是非読んでみたい、と思わせるほどの熱の入れようなのである。
とりあえず、この本の中でしきりに使われていた「オブローモフ性」という言葉を理解するために、ゴンチャロフの「オブローモフ」は読まなくては、と思った。

しかし、2012年1月現在、これ品切れなのね。
こんなに面白い本が品切れとはなあ。
ロシア的人間 (中公文庫)
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ラベル:文学
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2012年01月02日

物の本質について ルクレーティウス

例えば物理学の原理を韻を踏んだ文章とか、日本だったら連歌のようにして表現するというのは随分物好きだなあと思うのだが、このルクレーティウスの「物の本質について」はエピクロス哲学の原子論をなんと叙事詩で表現したものだというから、いやいやびっくり。流石にそこまで訳すのは困難なので、日本語は普通の散文になっているけれども、ルクレーティウス畏るべしだわ。
なんでもかのウェルギリウス先生も影響を受けたという彼。解説によれば媚薬のし過ぎで発狂して自殺したとかいう話も残っているらしい。
まあ、中を読んで見る限り自然現象や世界の成り立ちを意志ある存在のせいにするのは迷信で冥界だってないしと歌い、すべてを原子で説明しようという試みは、当時の読書人たちにはどうだったんだろう?と思わないでもない。
まあこの説明そのものは現在の科学からしてみるとまたおかしいところも多分にあるのだけど、いろんな現象が神々の意志によるものだということを否定した点では現代の科学的態度によく似ている。実にそういった意志ある存在からの解放を歌うのは自由への一歩であり画期的ではあるのだが、残念ながら世界はその後解放どころかがんじがらめになる時代となる。
私が不思議に思うのは、人間というのはどうして非情である自然現象になんらかの擬人化をするのだろうということ。この擬人化することが人の心的な本能なのであろうか。そういえば妖怪などの現象は実に自然現象の特徴をよくあらわしている、というようなことを寺田寅彦は書いていたように思うが。
おっと、なんか話が飛んだな。
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物の本質について (岩波文庫 青 605-1)ルクレーティウス 樋口 勝彦

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ラベル:哲学
posted by てけすた at 12:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 本 (翻訳もの) | 更新情報をチェックする