2010年09月29日

蟹工船 一九二八・三・一五 小林多喜二

やはり共産主義思想はどうもなじめないのだが、それを抜きにしても小説として人間の姿がよく現されていてかなり面白い小説なのではないかというのが偽らざる感想である。
『蟹工船』は船内での過酷な労働と労働者に対する管理者の扱いの酷さ、船内環境の酷さ、その中で生活する労働者たちの姿を克明に描いて読み応えがある。
また、『一九二八・三・一五』では警察に連行された共産主義者たちのプロフィールとまた彼らに対する拷問が描写されていて、こちらもまたページがどんどん進んだ。
この両者に共通しているのは、単に迫害される人々を美的に描いているわけではなくて、等身大としての彼らの欠点もその中に含めていることだ。
卑猥な船内の労働者たち、必ずしも組合の掟そのものに従順でない人物、そういったものも含めての描写になおかつ、やはり人間としてこの扱いはどうなのよ、と思わずにはいられない迫害ぶりなのだ。
そして、さらに迫害している人物が必ずしもその迫害を理解して行なっているのかといえば、そうでないという出来事も加え、こういった不幸の元凶がなんであるか、ということを言外に示しているのではないか。たとえばそれが資本家たちの狡猾さゆえんであるとか。
今、資本家の狡猾さ、と書いたが、権力者の狡猾さ、と言い換えてもよいかもしれない。
なぜなら、その後の共産主義国家がやったことを見ればわかる。
結局、こういう搾取の問題は体制の問題ではなくて、組織中の人間の意識の問題なのである。
蟹工船 一九二八・三・一五 (岩波文庫)
蟹工船 一九二八・三・一五 (岩波文庫)小林 多喜二

岩波書店 2003-06-14
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おすすめ平均 star
star★無神論・唯物論という名のカルト宗教が共産主義★
star格差社会を考えるときにぜひ一読を
star蟹工船

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2010年09月27日

盲目物語 谷崎潤一郎

お市の方の側仕えをずっとしていた盲目の法師が語る物語。文章はどういうわけか仮名と漢字が混在していて信長公という言葉が時にのぶなが公に表記されていたり、ひらがなの隣に漢字が振られてたりして、読みにくいといえば読みにくい。
ところが、この読みにくさのため頭の中で音読することになるのだが、これがまた非常になんというか心地よい響きなのである。人がいなければ声に出して読んでみたくなるくらい。
話の内容は、お市の方に萌える法師の昔話であって、これといってすごい内容というわけではないのだが、その萌え話がなんとも優雅で、うっとりしてしまうんだよなあ。こういう語り口だと、お市の方も織田の家に戻ってからの十数年は彼を側に置いてなんとはなしに無聊を慰められたんじゃないかなあ、と思わせるようなものがあった。
しかし、表記をいろいろ混在させてるのはどんな意味があるんだろうな?まさかわざと読みにくくしたかったわけでもあるまいに。
語る調子を文字で表現したかったんだろうか?漢字ならきっちりと、かなならやわらかく語るなどと言う風に。
盲目物語 (中公文庫)
盲目物語 (中公文庫)谷崎 潤一郎

中央公論社 1993-05
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おすすめ平均 star
star何を言っているんだ
star数多く作品があれば「こーいうのもありか」的な位置づけの一冊と言う事で。

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ラベル:歴史 実験?
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2010年09月24日

ツシマ―バルチック艦隊の壊滅(上)(下) ノビコフ・プリボイ

バルチック艦隊関連の本の留めはやはり『ツシマ』でしょう。戦艦アリョール号の乗組員だった著者が捕虜であったときに、聞き取りをしながら、その後それを小説にまとめたという、ドキュメンタリータッチの作品である。
前に読んだ『もうひとつの日露戦争』ではこの小説はソ連政権に利用されたとのことであるのだが、それもそのはず、著者ノビコフ・ブリボイは水兵時代から社会主義者なのであった。
そのような背景があるので、小説の前半、極東へ向かう航海では革命がらみの話がよくよく出てくるし、またエピローグもまるでソ連のプロパガンダみたいな結末になっていており、そのあたり少し違和感があるかもしれない。
とはいえ、流石に聞き取りで得られた情報と、自らの体験を交えて書いたものだけに、書簡とは違う多様な情報と文学者の多才な言葉で迫力のある作品となっている。
特に、ノシベにおける乗組員たちの荒廃ぶりはドタバタ小説も真っ青だし、戦闘シーンにおける各戦艦たちの壊滅ぶりは悲惨を通り越してブラックジョークではないかと思われるくらい酷い。
また、士官たちのデタラメさ加減なども容赦なく描かれていて、ロシア海軍しいては帝政ロシアそのものの批判に満ち溢れている。
こんなのを読んだらほんとに眉をしかめて、戦争って酷いものだと思わずにはいられない。そういう意味で、この作品はかなり強力な反戦小説であり得るものなのかもしれない。
後半、各戦艦個別にその最後の様子を描いているが、その中でそのページが極端に少ない戦艦があった。『アレキサンドル三世』なのであるが、その最後の行には「九百人の乗組員で、助かった者はただの一人もいないからである」と書いてあったのだった…。
ツシマ 上 ~バルチック艦隊遠征
ツシマ 上 ~バルチック艦隊遠征ノビコフ・プリボイ 上脇進

原書房 2009-11-20
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おすすめ平均 star
starただ撃滅されるためにやってきた艦隊の運命
star帝国の衰亡、指揮官の真価とは?
star艦隊劇場、再び・・・・・。

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ツシマ 下 ~バルチック艦隊壊滅
ツシマ 下 ~バルチック艦隊壊滅ノビコフ・プリボイ 上脇進

原書房 2009-11-20
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おすすめ平均 star
starロシア側からみた日本海海戦
star歴史的名著だが・・・
star指導者の在り方とは?

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ラベル:戦争
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2010年09月20日

バルチック艦隊関連の本2冊

坂の上の雲』バルチック艦隊のくだりにはポリトゥスキーという名前がたくさん出てくる。彼が妻に宛てた日記形式の手紙が戦後出版されているのだが、どうやら司馬遼太郎は航海の模様を描くときにそれに拠ったところも大きいようなのである。航海の困難な様子がよくわかるその日記を読んでみたいと思っていたのだが、参考文献など挙げておらず、これは読めないのかなあ、などと思っていたのだが、図書館でこの手紙を収録した本があったではないか。
『リバウからツシマへ』と題したこの本は2009年10月に出版されているのでつい最近出版された本だ。これはラッキーである、ということで早速借りてきた。
読んでみると、なるほど、記憶のあるような描写がところどころ見受けられるが、それ以上に技術将校としてこの遠征に参加した彼がことあるごとに「後悔している」と書き綴ってるのには気の毒としかいいようがない。連日どこかの船が故障するのでその修理に負われる日々、国際情勢からなかなか思うようにいかない航路。過酷な暑さ、不確実な情報に振り回される様子などいかにこの遠征が過酷であったかということがよく描かれている。
この本はスワロフをはじめとして遠征に参加した艦船の写真や、参加した将校たちの肖像など写真や図が豊富に載せられているところが良い。
ところが、これ、Amazonで扱っていないみたいなのよね。
書影はこちらのサイト
文生書院―リバウからツシマへ


さて、日露戦争も100年を過ぎて新発見があったという。
それが、艦隊の総司令官ロジェストヴェンスキー提督が妻に宛てた手紙30通の発見ということである。
東洋学のロシア人研究者コンスタンチン・サルキソブ博士がそのコピーを手に入れ、そこから日露戦争をもう一度見直してみようということで書いた本が『もうひとつの日露戦争』だ。
著者は日露戦争の原因についてから語りだし、提督の手紙の載せ、バルチック艦隊の様子を解説してくれる。
序文に書いてある、この戦争に「第零次世界大戦」という呼称が生まれている、ということは初耳だった。
その原因の見直しを書いてる章を読むと、確かに欧米列強の思惑がそのまま戦争に反映されたという点で先の呼称はなるほどなあと思わせる。植民地を巡る対立は列強の外交地図を何度も塗り替えてやがて2度の世界大戦へと繋がってゆく。日露戦争はその魁であったのかもしれない。
さて、手紙である。
ロジェストヴェンスキー提督は従来その評価が芳しくなかった。敗軍の将なので仕方ないとはいえ、手紙を読めば彼が置かれた状況が並みの人間ではとてもできなかっただろうと思わせる。『坂の上の雲』でその小皇帝ぶりが描かれているが、これは見方を変えると彼の強力な統率力ということもできる。それが結局負けたので悪いほうへとられたのだろう。石炭積みひとつにしても、あまりにも石炭積み込みにうるさい彼を乗組員が鬱陶しく思うのもわかるが、バルチック艦隊の船が沿岸用であって遠征用でないから積載できる量が少ないというところに、また提督の苦労があった。一事が万事この通りなので読んでるうちになんか同情を催してきたぞ。まあ、それにしても、思うのはペテルブルグのいい加減さだ。激怒したくなるのもわかる。
もうひとつの日露戦争 新発見・バルチック艦隊提督の手紙から (朝日選書)
もうひとつの日露戦争 新発見・バルチック艦隊提督の手紙から (朝日選書)コンスタンチン・サルキソフ 鈴木 康雄

朝日新聞出版 2009-02-10
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おすすめ平均 star
starバルチック艦隊がこれほどとは思わなかった。
starロジェストヴェンスキー提督の悲痛な手紙に同情を禁じ得ない
starロジェストヴェンスキーの生々しい姿

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ラベル:歴史
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2010年09月17日

坂の上の雲(司馬遼太郎全集24.25.26) 司馬遼太郎

去年から始まったNHKドラマの『坂の上の雲』が今年も近づいてくる。去年始まる前に原作を読んでおきたかったが、膨大な量なためなかなか時間がとれず、今年ようやく読むことができた。
松山の秋山兄弟と正岡子規を主人公に選びながら、明治を描こうとしたこの大作はその大部分を日露戦争の描写に費やしている。
戦争の描写といえばトルストイの『戦争と平和』でナポレオンのロシア遠征のことを読んだくらいの読書経験しかないのだが、あの時はかなり戦争描写を読むのに苦心したのでこの作品ももしかしたら相当読むのが大変かなとちょっと危惧した。しかし、そんなことは全然なくて、著者の小説的な描写と視点が組み合わされて面白く一気に読了。こんなに戦争の話が面白くてよいのかと思うくらいのめりこんだ。
日露戦争のことはよく知らない。ただ、この作品を読み終わったあとでは戦勝戦勝で大勝したかとイメージしていたものが実は薄氷を踏む思いであり、つまり日清戦争も日露戦争も相手は巨大だが、すでに政権末期で隅々まで腐敗しており、いわば朽ちた大木にも等しい国家だったために、日本が勝つというより、清やロシアがその腐敗のために負けたといったほうがいいのだということを知った。
著者は各種戦闘状況に出てくる軍人たちを折に触れてその心理について書いている。特に劣勢側の指揮官たちの心理状態を入念に描いていて、旅順での伊地知参謀の頑迷さやクロパトキンの過敏なまでの完全主義、ロジェストウェンスキーの小皇帝ぶりなどがともすれば状況描写だけで分りにくいところに彩を与えて小説らしい物語を仕立てている。このような見方をするならば、戦闘というのは多分に上官の欠点がそのまま軍全体の弱点となることがあるのだな、と空恐ろしい気分になる。そういう意味ではその弊害を極力避けようと、山本権兵衛が人事を一新したことは快挙であるし、一方の陸軍があくまでも保守的な人事に終始したのと対照的。その弊害が例えば乃木軍の旅順攻略で出ていたのが象徴的だった。

ところで、NHKドラマでは去年レオ曹長の鬼畜っぷりがネットで話題になったけど、原作にはそういうシーンはないのだね。原作では明治の軍はそれほど鬼畜なイメージがなかったような気がするので、あれはレオ曹長が昭和からタイムスリップしてきたのだと思うことにした。

坂の上の雲 全8巻セット (新装版) (文春文庫)
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文藝春秋 2010-07-15
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NHKスペシャルドラマ 坂の上の雲 第1部 DVD BOX
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ポニーキャニオン 2010-03-15
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おすすめ平均 star
star改悪部分の是非
star主人公らと同年代の人こそみるべき作品
starいまでも夢の中では高杉さんのつかいぱっしりよっ!

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ラベル:明治
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2010年09月10日

明治の人物誌 星新一

著者の父、星一は精力的な人物だったことは以前読んだ本で知ったが、彼がその人生で良い影響を受けたり、交友を持ったりした人たち10人の評伝がこの本には収められている。名前を知ってる人物から初めて名を聞く人物までいろいろだが、読んでみてこれらの人々に共通なのはどういうやりかたであれ、性格であれ、驚くほど無私になって仕事をした人たちばかりなのである。無私という言葉が適当でなければ、自分のやっていることが何かの役に立つと信じて邁進した人たちと言い換えてもよい。たとえ大金が転がり込んだり、誰かから贈与されたとしてもそれはなんらかの仕事のために投資してしまう、そんな人がほとんどだ。
取り上げられてる人物は次のとおり。
『西国立志編』を訳した中村正直、
医学者の野口英世、
経済界でその手腕を振るった代議士岩下清周、
総理大臣を歴任した伊藤博文、
『武士道』で日本を広めた新渡戸稲造、
発明王エジソン、
後藤象二郎の息子で当時の風雲児となった後藤猛太郎、
伝説の弁護士花井卓蔵、
医者から政治家へ、日本と言う国の医者になろうとした後藤新平、
今ならさしずめ黒幕といわれそうな政界のつながり深い杉山茂丸、
以上10名。
紹介が下手なので、これだけではうまく伝わらないかもしれない、とにかく一読すれば、明治時代の歴史の一つがそこから見えてくる。そして、通常よく知られている歴史の裏には資料不足や政治的思惑で表にならないことや、知られることなく過ぎてしまったものがあることも。
伊藤博文なんて、朝鮮がらみで悪人だとうっすら思っていたんだが、実は単に朝鮮で統監になったためにターゲットになったようなものだ。またこれを読んでからその庶民性と柔軟性にちょっと憎めなさを感じたり、いや歴史評価というのはある意味一面的なので気をつけなければならないな、と思った。
とにかく、一味違う明治を知ることができて面白い。
明治の人物誌 (新潮文庫)
明治の人物誌 (新潮文庫)星 新一

新潮社 1998-04
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おすすめ平均 star
starまさに国民的名著だ
star読み物としても本当に面白い
star星新一の父星一を巡る人々

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ラベル:人物伝
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2010年09月09日

ゴーゴリ(集英社世界文学全集19 1970年)

ゴーゴリの『狂人日記』『死せる魂』が面白かったので、そのうち他のも読もうと思っていたところ、古本店で全集の端本を発見。今まで読んだ短篇も入ってるが、今売っている文庫に収録されてない作品も入っていたし、105円でもあったので、購入した。
以下、収録作品。
『検察官』…市長が検察官がやってくるという手紙をもらって震え上がる、なにしろ彼を初め、主だった官吏がちょっとした悪党なので視察されると大変困るのである。さて、そんなところにやってきたある人物。市長たちは彼が検察官だと思うのだが。
検察官らしき人物をめぐる町の人間の騒ぎ方が面白おかしく書かれていて痛快。誰しも権力には逆らえません。
『昔かたぎの地主たち』…ある老夫婦の生活とその後を描いた短篇。老夫婦の描写が御伽話みたいでほのぼのする。しかしどこか物悲しい。
『イワン・イワーノヴィチとイワン・ニキーフォロヴィチが喧嘩をした話』…仲良しの2人があることから喧嘩になるが、誤解と意地の張り合いがもららす悲しさをよく描いた小説。ラストが物悲しい。
『肖像画』…既読。
『鼻』…鼻がなくなった官吏の話。もう鼻が床屋のパンに入ってるとか、歩き回ってるとか、最高すぎるw個人的にこの本の中で一番好きだ(笑)
『外套』…さえない官吏の人となりを描き、さらに彼の外套にまつわる話。
『ネフスキー大通り』…既読。
『狂人日記』…既読。
『幌馬車』…軍の晩餐会に呼ばれた町の地主の一人であるビファゴールの失敗談。
『ローマ』…パリから故郷ローマへもどった伯爵がローマの魅力を発見する、ローマ礼讃小説。細かい描写が生き生きとローマの町を伝え、行って見たくなる。

人物描写を始めとして実に写実的な文章が滑稽感に繋がってツボだわ。それでいて悲哀に富んだ小説が多くて、魅力的である。ゴーゴリを読むと人は悲哀ゆえに滑稽なことをせずにはいられなくなるのだろうか、などと考えてしまう。
世界文学全集〈第19〉ゴーゴリ (1970年)
世界文学全集〈第19〉ゴーゴリ (1970年)
集英社 1970
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『鼻』『外套』『検察官』はいくつか文庫が出てるので、紹介しておきます。
鼻/外套/査察官 (光文社古典新訳文庫)
鼻/外套/査察官 (光文社古典新訳文庫)ゴーゴリ 浦 雅春

光文社 2006-11-09
売り上げランキング : 54170

おすすめ平均 star
star不当表示では?
starおっさんシュールすぎるぜっ!!
star落語調、賛成です!

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外套・鼻 (岩波文庫)
外套・鼻 (岩波文庫)ゴーゴリ 平井 肇

岩波書店 2006-02
売り上げランキング : 159924

おすすめ平均 star
star幽霊になって復讐だ!!
star民話的
star「近代小説家」になり切れなかった物語作家

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検察官 (岩波文庫)
検察官 (岩波文庫)ゴーゴリ 米川 正夫

岩波書店 1961-01
売り上げランキング : 321396

おすすめ平均 star
star国家権力ってオソロシイ…(笑)

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ラベル:諷刺
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2010年09月06日

西国立志編 サミュエル・スマイルズ

星新一の父がこの本に傾倒したということを、『明治・父・アメリカ』で読んで、後学のために読んでみようかと思ったのがきっかけ。
翻訳は150年も前のものではあるが、現代かなづかいと現代表記、本文も読み下し文にしてあるので、まあなんとか読める。むしろ、下手に現代語なんかで新訳がでるより、却って格調高く読めてありがたい感じがするな。もちろん、表記が表記だから教養があるとはいえないのだが。
功なり名なり挙げた人物たちの言行をたくさん用いて、勤勉であること、誠実であること、品行正しくあることなどを説いているが、その内容は私が以前、何冊か読んだ、ナポレオン・ヒルとかオグ・マンディーノなどの自己啓発本に似ている。ということはこのセルフ・ヘルプな考えは廃れずに、アメリカにおいて生き残ってきたということ。本国イギリスではスマイルズは忘れ去られた作家になってるようだが。
まあ、なんでもそうだけど、人に押し付けなければ立派な考え方ではあるからな。
この本は明治初期、学問のすすめとともにベストセラーになったそうであるが、偉大な人物たちがどのようなふるまいをしていたのか、野心あふれる青年たちにはきっと関心の的だったにちがいない。また、もうひとつ、日本は当時開国したてで外国の諸事情を知りたいと思うひともたくさんいたのではなかろうか。そんなときに、西洋の偉人たちがたくさん出てくるこの本は、その事情を知る一助にもなっていたかもしれない、とも思う。
いや、でも星新一のおとうさんが傾倒したというのもうなづける内容ではある。また星新一は『明治の人物誌』という本で訳者中村正直のことを書いてるということなので、それもそのうち読んでみたい。
西国立志編 (講談社学術文庫)
西国立志編 (講談社学術文庫)サミュエル・スマイルズ 中村 正直

講談社 1981-01-07
売り上げランキング : 214261

おすすめ平均 star
star時代を創り出した偉人たちの生き方を学ぶ。
star何度も読まないと身につかない本ですね。

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ラベル:自助
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2010年09月03日

ハックルベリー・フィンの冒険(上)(下) マーク・トウェイン

家庭に恵まれない少年ハック・フィンが行方をくらまして逃亡奴隷のジムとミシシッピ川を筏で下っていく。そこで彼らはさまざまな出来事に直面していくという内容。
実はトムソーヤーを読んでないので、そのことが支障になってしまうかな、と思ったのだけどそんなことはほとんどなく、ハックとジムという社会的に無力な存在が出会う困難と、ハックという野生児がみた社会の様子というものが描かれていて、これが決して子供向け児童書だけでは収まらない内容を含んでいて、なるほど、と思いながら読みすすめていった。ハックは物事を知らない少年ではあるけれども、その天性のカンは社会の虚実をよく察知しており心根も優しい。死んだエミリンはよく死者に詩を書いていたけど、彼女が死んだのに誰も詩を書かないのはおかしいといって一行でもひねりだそうとしたり、ジムの逃亡に手を貸すことはよくないと思いつつも、彼が危機に陥ったときは助けたりする。また、ジムとの漫才みたいなやりとりにユーモアがあって、内容は決して明るいものではないけれども、それに屈しない朗らかさを感じる。
2人の行方はトムソーヤーが現れて、どことなくごまかされた感じの結末になる。これにはちょっと正直がっかりした。この結末ならば未完のほうがどれだけましだったかもしれない、とまで思った。しかし、奴隷問題は当時のアメリカでは随分と重たいものだったのだろうと想像すれば、あのままの冒険を進めていって収めることは難しかったかもしれない。とはいえ、終わらせなければならない事情がとくにないのであれば、よりよい結末を思いつくまでそのままでもよかったのではないのか、とも思った。
といっても、トムソーヤーの空想爆発なイタズラが面白くないというわけではない。これはこれで結構面白いものなのではあるが、異質なものをくっつけたような違和感がどうしてもぬぐいきれないため。
ハックルベリー・フィンの冒険〈上〉 (岩波文庫)
ハックルベリー・フィンの冒険〈上〉 (岩波文庫)マーク トウェイン Mark Twain

岩波書店 1977-08
売り上げランキング : 31340

おすすめ平均 star
star筏の冒険
starアメリカを感じる本
star大人の童話

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ハックルベリー・フィンの冒険 下  岩波文庫 赤 311-6
ハックルベリー・フィンの冒険 下    岩波文庫 赤 311-6マーク トウェイン Mark Twain

岩波書店 1977-12
売り上げランキング : 43527

おすすめ平均 star
star好き嫌いが分かれるでしょうねえ
star自由と奴隷制度

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ラベル:社会批評
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2010年09月01日

樅ノ木は残った(上)(中)(下) 山本周五郎

有名だけど自分はほとんど予備知識がない伊達騒動。読み終わってからwikipediaであらましを読むと主人公の原田甲斐は悪者として扱われているんだね。しかしながら他のサイトも斜め読みしてみると、どうやらこの伊達騒動の内容は関係者が一度にいなくなったこともあって真相ははっきりしないらしい。あれだけ極悪人として扱われた甲斐が丁重に供養されていたり、残ったものが事実を隠蔽するように書類を書いたのではないかという推測もあったし、実のところよくわからないまま風聞だけが流れ、歌舞伎のモデルにまでなったということなのかな?

という背景を知ると、この小説がいかに人間原田甲斐の苦悩と忍耐を描き上げたかということがよくわかる。
この小説では甲斐は幕府の伊達62万石取り潰しという陰謀を察知して反間苦肉の計をもってしてそれを阻止しようという設定になっている。敵を欺くには味方から、じゃないけれども彼はそのことに対して数人のものと打ち合わせをしたきり誰にも漏らさないので、彼の親しい同僚や仲間は彼の本心を疑い、離れていく。これだけでも男の孤独というものが身にしみてくる。しかし彼はそこをぐっと耐え抜くのである。この強靭な精神力の源は自然の中で一人狩りを好む野生児としての一面があるのだろうか。
とにかく、原田甲斐の奮闘を読み勧めていくと、善とはなにか悪とはなにか、その基準はなんであるのか考えてしまう。そして、誰しもが風聞や世評にまどわされがちであることも。

さて、原田甲斐の行動はまさしくお家安泰のために自己を投げ出すことであった。社会はそんな人の支えがあって成り立っていく。これは確かに素晴らしい行為であることは間違いないのだけれども、これがある種の教条になった場合恐るべき圧力が生まれてしまう。著者はそれとバランスを取るかのように、新八の人生を描いた。堕落一辺倒の彼がぎりぎりの線でつかんだ自分の道。その生き方は武士とは正反対のものであった。そして甲斐はそのことをよしとするのである。このエピソードを入れるところが素晴らしいと思った。

この小説の甲斐はまさに聖人である。したがって人間離れしている点があって、小説というよりは宗教書ではないかと思うくらいである。
名作という言葉はあまり好きではなくて、どこか説教じみたうっとうしさを感じるのだけれども、これはまさに名作としかいいようがない。
樅ノ木は残った (上) (新潮文庫)
樅ノ木は残った (上) (新潮文庫)山本 周五郎

新潮社 2003-02
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star伊達騒動の始り。原田甲斐が背負った役割は途方もなく重くつらいものであった。
star樅ノ木は黙して語らず、ただ主人公を偲ぶ人たちがいた
star原田甲斐という人物

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樅ノ木は残った (中) (新潮文庫)
樅ノ木は残った (中) (新潮文庫)山本 周五郎

新潮社 2003-02
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おすすめ平均 star
starくじびろとの闘い、雅楽頭との丁々発止、原田甲斐の面目躍如ここにあり。
starおみや さんがお幸せでありますように
starくびじろと申す大鹿

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樅ノ木は残った (下) (新潮文庫)
樅ノ木は残った (下) (新潮文庫)山本 周五郎

新潮社 2003-02
売り上げランキング : 16289

おすすめ平均 star
starあまりにも愚直な男の生き様
star「耐え忍び、耐え抜くこと」、ただ主家大切という一義のために。
starそして、樅の木は残った・・・

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ラベル:歴史小説
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