2010年07月31日

神話の力 ジョーセフ・キャンベル+ビル・モイヤーズ

比較神話学の教授、キャンベルが最晩年に対談という形で神話の意義を語った本。聖書、ギリシャ神話はもとより、仏教やインドの神話、アメリカ先住民の神話など、多種多様の地域から共通したモチーフを取り出したり、文学や芸術との関わりなどを指南してくれている。
キャンベルによれば、夢は個人の神話であり、神話は社会の夢なのだそうである。その観点からいけば、神話とは個人の見る夢のように、どこか荒唐無稽でありながら妙に客観的な視点を持たなければならないが、実際キャンベルが説明してくれる神話はまるで夢の解釈のようなのである。その解釈の面白いこと。難しいことはほとんど書かれていなくて、ああ、あの神話にはこんな意味があったのか、とかこんな神話が別の地域にも同じのがあるなんて、面白いな、とか、芸術を楽しむための1つの指南書として読むのも面白いし、自分の心にひきつけて、この本を指南書にするのも楽しい。
しかし、やっぱり、芸術や神話がなぜ存在するのかというのはそれが人間全体の夢だから、というところが妥当なんだろうなあ。いくら夢はいらないといっても、夢は自然に見るものであり、神話も自然と形成されてゆくのであろう。
芸術や文化をもし、なにも生み出さないものだとして排除したとき、人類はまるでレム断眠状態に陥ったかのごとくになり、怒りっぽく、ヒステリックになるのではないだろうか。
そんなことを考えながら読んだのであった。
神話の力
神話の力ジョーゼフ キャンベル ビル モイヤーズ Joseph Campbell

早川書房 1992-07
売り上げランキング : 145437

おすすめ平均 star
starアメリカ流通俗神話学
starOnly Similarities, No Differences
star対談集

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


このあいだ、文庫本がでましたね。
神話の力 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
神話の力 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)ジョーゼフ キャンベル ビル モイヤーズ Joseph Campbell

早川書房 2010-06
売り上げランキング : 14894

おすすめ平均 star
starアメリカ流通俗神話学
starOnly Similarities, No Differences
star対談集

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

ラベル:神話
posted by てけすた at 13:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 本 (翻訳もの) | 更新情報をチェックする

2010年07月30日

歯周病について2chを見てたのだが

先日からtwtterで歯周病になったと騒いでいる私である。3年ほど前に歯周病検査を受けたときは要注意、軽度の歯槽膿漏だと診断されてたんだが、先日歯が痛くなったので、再び歯医者へ行ったところ、重度歯槽膿漏と診断されて、通院生活が始まった。3年で一気に重度の歯槽膿漏になってしまったのだから恐ろしい。なんだか凹みそうだったので、他にも同じ病で奮闘してる諸兄を探そうと2chの歯周病スレに飛んだ。
そこでは私の知らないいろんな玉石混交の情報が飛び交っている。
さて、わたくし、歯周病について語るというのに、なぜ喘息カテゴリーにしているかというと、ちょっとガセネタかもしれないが、気になる情報を見かけたからなのだ。

歯周病菌のことはいまだによくわかってないそうだが、2chで揶揄されてるなかに、歯周病はカンジダ、つまりカビが原因だという説がある。これの真偽は不明なんだが、ふと吸入ステロイドの副作用について思い出したのだ。
吸入ステロイドはそのまま口腔に付着したままだとカンジダが発生する。それを防ぐためによくうがいをしているんだけども、もしかして、3年で一気に重度歯槽膿漏になったのは吸入ステロイドが関係しているのかあ?なんて連想してしまったんだよね。
もちろん、肝心の歯周病カンジダ説がどうなのかわからないので、吸入ステロイドについてもまあ、考えすぎだろうと思うんだけど、それでも気になりだしたので、今まで寝る前に行なってた吸入ステロイドを歯磨きの前に行なって、歯磨きで口のなかをさっぱりさせることに専念している。
しかし、実際どうなんだろうな。2chでみた情報なので歯医者にも聞くに聞けないwww
posted by てけすた at 12:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 病弱日記(喘息とか) | 更新情報をチェックする

2010年07月27日

人間風眼帖 山田風太郎 

待ちに待った『人間風眼帖』だ。
昨日届いたので今読んでた本もそっちのけで早速読み始めた。
起こしたノートが2冊あったところから二部構成になっている。
本の前半が「太平洋戦争風眼帖」。これは主に太平洋戦争からみた日本人論となっている。
後半はタイトル「人間風眼帖」であり、これには文章の項目に「悪」やら「女」やら「死」などの見出しがついていて、それに対する著者の思うところ、を書いているが、これも日本人について論じたところが多い。
昭和中期は今ほど言論に対してやかましくなかったところがあるのだろうか、今読むとぎょっとするような記述も見受けられる。あるいは日記なので、そのようなことを斟酌しないで書いたということもあるだろうが、例えば、「天皇一族について…最高の遺伝と教育の結晶であるはずなのに…(以下略」といった皮肉めいたものなど、もし素人がブログでうっかり書いたらそそっかしい人たちによって炎上してしまうかもしれん文章とか、まあ、面白いんですけどね。
ところで、これを読んでいくうちに、どこかで読んだような記憶があるような感じにとらわれたのだが、それもそのはずで、あとがきで、このノートは日記から抜粋したのをまとめたものだ、ということが書かれていたのだ。つまり、私は小学館で出版されていた山田風太郎の日記を全部読んでるのだが、その日記から抜粋されたものもあるので、読んだ記憶が出てきたのであった。また、小説でも一部読んだ記憶のある文章を見かけたが、このノートからとってきたものだろうか?
そう考えると、この本はある意味山田風太郎が常日頃考えてたもののエッセンスといってよいかもしれない。
人間と日本人に対する辛辣な見方が小説に生かされてあのような面白い作品が生まれたのか、と思うと感無量。
人間風眼帖―昭和21年‐昭和49年
人間風眼帖―昭和21年‐昭和49年山田 風太郎 有本 倶子

神戸新聞総合出版センター 2010-07
売り上げランキング : 13624


Amazonで詳しく見る
by G-Tools
ラベル:作家の目
posted by てけすた at 12:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 本 (国内) 山田風太郎 | 更新情報をチェックする

2010年07月25日

中世騎士物語 ブルフィンチ

ブルフィンチのギリシャ・ローマ神話シャルルマーニュ伝説と読んできたので、せっかくだから中世騎士物語も読んでしまおうと思った。実をいうとアーサー王の伝説など、名前は聞いたことがあるが、全く予備知識がない。他の2冊は一応少しは本を読んだりして知識があったので、それなりに読めたが、果たして知識がない状態ではどんなものだろうと考えたのだが、その心配は無用だった。
もともと、知識のない人に向けてのまとめ的なスタイルで書かれてるのだから当然なのだが、実に分りやすく話がまとめられているのである。
それでも、ブルフィンチ自身、どこの部分を載せたのかわからなくなってることがあったみたいで、全然触れてないのに「先に触れたように」という文章が見受けられて、そこが残念ではあったが、でもそれが致命的になるようなことではない。
この本を読んだら、英文学がいろいろ読みたくなってきた。まずは「アーサー王の死」からだな。

私はワイド版岩波文庫で読んだが、一応ポピュラーなほうの岩波文庫版を紹介しておく。
中世騎士物語 (岩波文庫)
中世騎士物語 (岩波文庫)ブルフィンチ 野上 弥生子

岩波書店 1980-01
売り上げランキング : 59774

おすすめ平均 star
star中世の「騎士」というものを理解できる
star騎士と英文学
star幅広く読めます

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

ラベル:伝説
posted by てけすた at 12:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 本 (翻訳もの) | 更新情報をチェックする

2010年07月23日

森の生活(ウォールデン) ソーロー

ウォールデン池の側に2年ほど生活した著者がその生活の様子を描きながら、文明生活への批評を試みている作品である。
著者が生きていた時代は19世紀半ば。ソーローは文明生活というものの不必要なまでの贅沢を戒める。本当に必要なものはそれほど多くないというのである。そしてその不必要なぜいたく品のために、人々はまるで奴隷とでもいいたくなるような条件の労働を行い、いくばくかの賃金を得る。そのことをソーローは嘆いたのである。
一方、文明生活の批評と対比する森の中の生活描写は、詩人としての感性に彩られ、金銭に変えられない豊かさをそこに見ることができる。
とはいうものの、読んでいて、ソーローという人はきっと体が丈夫だったんだろうなあ、などとついそんな感想が出てきてしまう。文明生活から離れて自給自足の生活をしようなんて発想は健康になんの懸念のない人の考えそうなことではある。ソーローは安全をもとめ医者のそばに暮らすような人々の魂を嘆いているのだが、でもでも、持病もちにはつらいです。
まあ、著者の文明生活の批判は一読に値するものであって、アメリカ文学の古典という位置づけはうなづけるものはあるのではあるが。
私の読んだワイド版岩波文庫は訳がちょっと読みにくい。
森の生活―ウォールデン (ワイド版岩波文庫 (87))
森の生活―ウォールデン (ワイド版岩波文庫 (87))ソーロー 神吉 三郎

岩波書店 1991-12
売り上げランキング : 884635

おすすめ平均 star
star森の生活について

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


現在は新訳で分冊されて出ているようだ。
森の生活〈上〉ウォールデン (岩波文庫)
森の生活〈上〉ウォールデン (岩波文庫)H.D. ソロー Henry David Thoreau

岩波書店 1995-09
売り上げランキング : 9604

おすすめ平均 star
star自然に向かい合って雄弁なアメリカ精神
star悩める人におすすめ
star質素簡素な元祖エコ生活のすすめ

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

森の生活〈下〉ウォールデン (岩波文庫)
森の生活〈下〉ウォールデン (岩波文庫)H.D ソロー Henry David Thoreau

岩波書店 1995-09
売り上げランキング : 19532

おすすめ平均 star
star自然に向かい合って雄弁なアメリカ精神
star悩める人におすすめ
star質素簡素な元祖エコ生活のすすめ

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

ラベル:生き方
posted by てけすた at 12:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 本 (翻訳もの) | 更新情報をチェックする

2010年07月19日

壊れものとしての人間 大江健三郎

初出1969年のこのエッセイは実に難解。読書の経験は言葉の正統な意味合いにおいて経験なのか、という問いかけから始まるところで私はワクワクしたのであるが、続く文章はおそらくほとんどの作品を読んだ読者でなければなかなかその意味するところを理解できないであろうと思われる言い回しに満ちている。
だが、それは言い訳にしか過ぎないかもしれない。私がたとえほとんどの作品を読んでいたとしても、著者のいう、活字の向こうの暗闇、そして活字のこちら側の暗闇が理解できるかどうかは自信がないからだ。
ともあれ、理解しがたいままに読み進めてゆくと、そこには活字に対する偏愛と不信が見え隠れする。活字の世界を実世界と徹底的に切り離して受容する、そういうことに至ったのは生まれ育った共同体独自の言葉や物語と、活字で書かれたものの乖離によってひどく傷つけられた経緯があったからである。
それなのになぜ書物なのか。その乖離を指摘してうそつきだと糾弾する人間に混じって生きなければならない予感にふるえ、それならば徹頭徹尾架空な書物のほうがましということを発見したからなのであった。
というところまではなんとかなったのだが、本題となってる暴力をくわえられる人間についての考察になるとあまり理解できてないな。さまざまな軋轢により苦しみを得る人間とはなんであるか、この苦しみは人間自ら作った社会からもたらされることがもっぱらなのだけど、結局それは多様性がどうしても犠牲となってしまうゆえに起こることだと考えてもよいのだろうか?
作者の書くことへついての思いはそっちのけでそんなことばかり考えてしまったな。すいません。
壊れものとしての人間 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)
壊れものとしての人間 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)大江 健三郎

講談社 1993-02
売り上げランキング : 100443


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

ラベル:読書
posted by てけすた at 12:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 本 (国内) 小説以外の著書 | 更新情報をチェックする

2010年07月17日

切腹禁止令 山田風太郎

廣済堂文庫山田風太郎傑作大全11
このシリーズは現在も出版されてるものと品切れのままになってるものがあるが、今回の『切腹禁止令』は残念ながら品切れ中である。
時代小説がもてはやされるのに、これはいかにも惜しいことだと思う。
では格短篇の覚書

『殿様』『一、二、三!』の二篇は地獄太夫にて既読
『三剣鬼』…幕末に人斬りと恐れられた人物とその人物たちとねんごろになったあるもと芸者の話。
『嗚呼益羅男』…男根占いから別のビジネスを考え出した男の話
『妖剣林田左文』…香月藩の殿と家老が意地の張り合いから死亡してしまう。その原因となった側妾のお秀の方を亡き者にしようとしたときに、林田左文は彼女をかばうのだが。
『南無殺生三万人』…4代将軍のときに盗賊改めとなった中山勘解由は上の意向もあって徹底的な厳罰を行なう。時に挫けそうになったりする彼だが、職務に邁進する彼。
『切腹禁止令』…ちくま文庫の山田風太郎明治小説全集6にて既読だが、ブログに上げてないので覚書しておくと、幕末、小野清五郎は切腹をいくつかみてこんな不合理なことはないと、公議人になってから切腹禁止令を提案する。

改めて書くこともないだろうが、山田風太郎の時代小説はまるっきりの虚構ではなくて過去の文献などにあったものを大胆に脚色してまるで嘘みたいな話が実際の話だったりするところが驚きだったりする。『南無殺生三万人』とか。とはいえ『嗚呼益羅男』は流石に純虚構でしょうなあ。
切腹禁止令―山田風太郎傑作大全〈11〉 (広済堂文庫)
切腹禁止令―山田風太郎傑作大全〈11〉 (広済堂文庫)山田 風太郎

廣済堂出版 1997-02
売り上げランキング : 751551


Amazonで詳しく見る
by G-Tools


ラベル:時代小説
posted by てけすた at 12:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 本 (国内) 山田風太郎 | 更新情報をチェックする

2010年07月16日

アシモフ シェイクスピア

アイザック・アシモフ『永遠の終り』を読む。
タイトルからして時間というものが終わるなにかなのかな、と思ったのだが、それは違って、時間を越えて人類に望ましからぬ事実を〈矯正〉する組織がエターニティ(永遠)とよばれているのであった。主人公のハーランはその組織で働く技術士、つまり矯正を手がける仕事なのだが、その彼が固定されてる時間に住んでいる女性を恋してしまうのである。そこから話はぐんぐんと進んでエターナルのことについての謎が解き明かされてゆくのは面白い。全体的に時間を扱ったものというよりは人間の行なうことについての批評が込められてるように思う。また1950年代に書かれたことを考えると当時の社会体制について寓話っぽくも読める。
永遠の終り (ハヤカワ文庫 SF 269)
永遠の終り (ハヤカワ文庫 SF 269)アイザック・アシモフ 深町 眞理子

早川書房 1977-11
売り上げランキング : 415661

おすすめ平均 star
star時間を越えたSF+ロマンス
star事件解決的な時間テーマSFとは一線を画した作品、さすが。
starタイトルの意味は結末に理解

Amazonで詳しく見る
by G-Tools



シェイクスピア『十二夜』を読む。
タイトルは本文と結びつかないのだが解説によればどうやらこの芝居が宮廷で十二夜に行なわれる祝宴に上演されたからではないか、と推測している。まあそれはさておき、双子の兄妹のうち妹が男装して公爵の家に仕え、公爵が恋している姫の取り持ちをするんだが、姫は男装の妹に恋してしまうという設定。しかし、それだけではなくてこの姫の執事をやっているマルヴォービオが他の人から煙たがられている存在で、侍女や姫の伯父や道化などが彼を痛烈にからかうという場面も入っている。最初この姫の伯父トウビーが下品な言葉づかいで出てくるので、てっきり姫に嫌がらせする悪役なのかと思っていたら、単なる阿呆な伯父さんだった。
しかし、私はシェイクスピアをあまり理解できないのかもしれない。喜劇なのはわかるのだけど、あまりセリフまわしが面白いとは思えなかったんだな。それともモリエールみたいな下々のための芝居とは違うので抱腹絶倒を求めてはいかんのか?
十二夜 (岩波文庫)
十二夜 (岩波文庫)シェイクスピア SHAKESPEARE

岩波書店 1960-01
売り上げランキング : 47687

おすすめ平均 star
star異国名作喜劇を楽しむ
starシェイクスピアは食わず嫌い、という人にオススメ
star男装の麗人ヴァイオラ

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


ラベル:読書メモ
posted by てけすた at 13:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 本 (翻訳もの) | 更新情報をチェックする

2010年07月14日

シャルルマーニュ伝説 トマス・ブルフィンチ

以前『狂えるオルランド』を読んだのだが、それは話が途中で始まっていて、なぜ外国人のアンジェリカがやってきて、リナルドやオルランドが彼女を巡って争ってるのかその経緯がさっぱりわからなかった。
それもそのはずで、アリオストの『狂えるオルランド』はボイアルドの『恋するオルランド』が未完だったことを受けて書かれたものだからだ。しかるに恋するオルランドはどうやら日本では出てない様子。
そんな折書店で、今回紹介する『シャルルマーニュ伝説』を見かけた。何気なく中身を見てみると、どうやらアリオストとボイアルドの作品を元にシャルル大帝とその騎士たちの伝説を紹介しているようなので、これはこれはと思って購入したのであった。
で、読んでみてどんぴしゃ。そもそもの発端が書かれていて、私の疑問は見事に氷解したのであった。
序文でブルフィンチはイタリアの3人の詩人、ボイアルド、アリオスト、プルチの作品を主題として取り上げ、年代順に並べたと書いている。実際6章の途中から16章までは『狂えるオルランド』のダイジェスト版といってもいいくらいである。あの浩瀚な書物を読む時間がないという人にはこの本を読んでおおよそのあらすじを知ることができるだろう。

ところで、私は歴史にうといので、この伝説が史実と比べてどうなのか、ということは残念ながら言うことができない。確かに序論やあとの翻訳者による解説などで史実との違いを述べていたりするのだが、アリオストの作品から入った自分はあまりそういうことに興味がなかった。参考までに書かれていることを述べておくと、シャルル大帝が立派だったり暗君だったりするのは、シャルルとその不肖の子孫の行いが圧縮されてシャルルマーニュ一人として描かれたから、ということらしい。史実の大帝はこの伝説に出てくるような愚かな行いはあまりしなかったようである。
シャルルマーニュ伝説 中世の騎士ロマンス (講談社学術文庫)
シャルルマーニュ伝説 中世の騎士ロマンス (講談社学術文庫)トマス ブルフィンチ 市場 泰男

講談社 2007-02-09
売り上げランキング : 277650


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

ラベル:伝説
posted by てけすた at 21:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 本 (翻訳もの) | 更新情報をチェックする

2010年07月12日

紅い花他四篇 ガルシン

夢想と現実。この2つが相容れないものほどつらいことはない。現実がいつも悪であるは限らず、夢想が身を滅ぼす場合があることをこの短篇集のいくつかはそんな結末に仕立てている。とはいえ夢想が悪なのではない。現実の過酷さに夢想が太刀打ちできなかっただけの話だ。
では収録作品を覚書。

「紅い花」…精神病院に収監された青年が庭で紅いケシの花を見つける。それを悪の権化だと思った青年は花を摘み取ろうとするが。
「四日間」…戦場で負傷した兵士の心情とその様子を描いた短篇
「信号」…線路の保線係となったセミョーンは隣の保線係ヴァシーリィと話をするようになる。ヴァシーリィは現状に不満をもつ人物で、上司に直訴することを行なったのだが。
「夢がたり」…人外の者たちが集まって人生について語る、寓話。
「アッタレーア・プリンケプス」…温室に閉じ込められた植物たちは外の世界に憧れていた。なかでもアッタレーアと名づけられた南国のしゅろの木は南からの旅人がやってきてからますます望郷の思いは大きくなり、温室のガラスを打ち破ってやろうと決心する。

解説によれば、作者ガルシンは「洗礼者ヨハネを思い出させる」善良さと哀愁を帯びた目をもつ過敏な人物だったという。憂鬱症をもつ彼は発作の恐怖から自殺したのであるが、この短篇集を読むだけでも、そうした彼の、悪に対する過敏さへの資質みたいなものが伺える。とくに「紅い花」はそうした彼の人生の象徴みたいだなあと思うのであった。
紅い花 他四篇 (岩波文庫)
紅い花 他四篇 (岩波文庫)ガルシン 神西 清

岩波書店 2006-11
売り上げランキング : 86403

おすすめ平均 star
star墓場への戦利品
star出合えて本当によかった名作群
star珠玉の短編

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

ラベル:短篇集
posted by てけすた at 13:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 本 (翻訳もの) | 更新情報をチェックする

2010年07月11日

死せる魂(全3巻) ゴーゴリ

ゴーゴリの短篇集は前に読んだことがあって、その中の「狂人日記」は、なんともおもろうてやがて悲しき、っていう感じの作風だったということを記憶している。
この長篇もそんなゴーゴリの人間表現があますところなく発揮された傑作といっていいかもしれない。
第一部はロシアの堕落した人間やダメダメ人間などを描いて秀逸。今の日本でもたまにテレビでやってたりするけど、ゴミ屋敷の老人がこの中に出てきたりして、意外とこういう人間は普遍的なのかもしれないなどと思わせる。
第二部ではダメダメ人間もまだ登場するが、それとは異なる、非常に真っ当な人間が登場し始める。その仕事ぶりたるや、主人公ともども読んでるこちらまで熱意を吹き込まれてくるような次第で、このあたりも人間描写がよくできてる。
残念ながらこの大作は未完なのである。本来は三部構成にしてダンテの神曲みたく、ロシアの地獄煉獄天国を書こうとしたのらしい。で、第二部がなかなか進まなかったのだが、ようやくそれが出来上がってきたころに、一種の宗教的な狂信者と近づきになり彼に影響されて、せっかく出来上がった二部を燃やしてしまったらしいのだ。そしてそのまま亡くなってしまったらしい。今出てる二部は死後燃やされなかった一部分が発見されたので編集して出版したと解説では書いております。
読む限り二部のどこがまずかったのかわからんくらい真っ当な人間像が書かれていると思うのだが、宗教的興奮とは不可解なものである。
主人公のパーヴェル・イワーノヴィッチ・チチコフ君は死んだ農奴を買い集めているそつない物腰の人間。彼がいい人間かそうでないかはおいおい読んでいけばわかるとして、表題「死せる魂」の「魂」というロシア語のドゥーシ(複数形)は「農奴」という意味ももつという。解説では「死んだ魂をもつ人間」すなわち堕落した人間とチチコフが買い集める「死んだ農奴」と二重の意味をもたせてあるとか。
いや、ほんとに残念なのはロシアの「善」である部分が書かれないままゴーゴリが亡くなってしまったことだな。ぜひ読みたかった。
死せる魂 上 (岩波文庫 赤 605-4)
死せる魂 上 (岩波文庫 赤 605-4)N.ゴーゴリ 平井 肇

岩波書店 1977-01
売り上げランキング : 368801

おすすめ平均 star
starゴーゴリの最高傑作
star一読をお勧めする
star名訳中の名訳

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

死せる魂 中 (岩波文庫 赤 605-5)
死せる魂 中 (岩波文庫 赤 605-5)N.ゴーゴリ 平井 肇

岩波書店 1990-02
売り上げランキング : 378568

おすすめ平均 star
star☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
starゴーゴリ文学の最高傑作 『死せる魂』 - 中巻

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

死せる魂 下  岩波文庫 赤 605-6
死せる魂 下    岩波文庫 赤 605-6N.ゴーゴリ 平井 肇

岩波書店 1977-01
売り上げランキング : 381595

おすすめ平均 star
starゴーゴリ文学の最高傑作 『死せる魂』 - 下巻
starトロイカ

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

ラベル:ロシア
posted by てけすた at 12:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 本 (翻訳もの) | 更新情報をチェックする

2010年07月07日

人生論 トルストイ

『人生論』というタイトルから人生とはなにか、というイメージが浮かんでくるのだが、実際に読んでみるとそれは人生というよりは生きているということ、文章内では「生命」という言葉が使われていて、どういう状態が人として生きていることなのか、という意味合いのことが書かれている。解説によれば、ロシア語のジーズニという言葉は人生、生命、生活、一生、と日本語でいくつかに分かれている言葉をこの言葉一つで表現しているのだとか。訳者は慣例によりタイトルを人生論と訳したが、むしろ「生命について」という訳し方が正確につたえるはずだと述べていた。
人間がもつ苦しみや悲しみに対して、トルストイは肉体的な生存や個我という動物的幸せに対する志向だけがあるとする考えを教えるものを誤りだとし、儀式主義の信仰や唯物論を批判する。そして動物的個我を理性に隷属させる生き方を生命と呼んだ。
人間の生命は肉体的な誕生から死にいたるまではない。今ここにある自分という意識、これは永遠のものなのだ、そしてその意識のもとでは誕生も死も一つの変化に過ぎないのだから、死を恐れることなどなくなる、と説く。
結局のところ、肉体に執着することをやめて、苦しみを受け入れ、愛に生きよ、という主旨になるのだが、この辺を恐ろしく用意周到な言い回しでいうものだからなかなか頭に入ってこない部分はあった。
トルストイのいわんとしていることもわからないでもない。肉体を超越して生きていける意識を持つ人間だからこそ、こういう考え方も一理あるとは思うし、人生訓の本をなどを読むとこういう考え方はよく見かける。
とはいえ、超越する意識が肉体の仕組みから生まれているのではあるまいかということも私はどうしても思ってしまう。だから、肉体を隷属させるのではなく、肉体を気にかけていく方法もあるのではないかとも考えてしまうのである。有限な人生であることをトルストイというか、その時代は否定的に受け止めることが多かっただろうと想像するが、いまや肯定的に受け止めることも可能ではないかな、と私個人的にはそう感じる。
人生論 (新潮文庫)
人生論 (新潮文庫)トルストイ 原 卓也

新潮社 1975
売り上げランキング : 21538

おすすめ平均 star
star幸福の簡単な得方、についての本
star真の幸福へのアウフヘーベン
starこれも人生。

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


ラベル:哲学
posted by てけすた at 13:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 本 (翻訳もの) | 更新情報をチェックする

2010年07月05日

山田風太郎2冊

山田風太郎の時代小説短篇集2冊を読む。

『剣鬼と遊女』廣済堂文庫(山田風太郎傑作大全9)
「剣鬼と遊女」…徳間文庫の妖説忠臣蔵 女人国伝奇で既読。
「元禄おさめの方」…柳沢吉保の愛妾おさめの方は綱吉の寵愛を受けていたことは公然の秘密だった。そのおさめの方が亡くなったのちの綱吉や吉保の心の中を描いた。
「姦臣今川状」…氏真の小姓だった三浦右衛門が3人の今川家臣に持ちかけたこととは、常識を疑うような内容だった。彼の狙いはなにか?
「筒なし呆兵衛」…剣鬼喇嘛仏(ちくま文庫)で既読
「紅閨の神方医」…万久里小路馬竿斎、彼は医者の息子だったがとんでもないインチキ人間だった。その彼の行状を描く。
「陰萎将軍伝」…13代将軍家定には子がなく、その評判も芳しくない。しかし、大奥の老女飛鳥井は別の素顔を語る。

人間の評判と実像はときに乖離していることがあるが、そんな乖離を使って描かれた作品が多い。勢い意外な結末だったり、意外な人物像が現れたりする。その意外さが面白かった。
これはめずらしくまだ品切れになってない文庫本なので書店で購入することができる。粒ぞろいでお勧め。
剣鬼と遊女―山田風太郎傑作大全〈9〉 (広済堂文庫)
剣鬼と遊女―山田風太郎傑作大全〈9〉 (広済堂文庫)山田 風太郎

廣済堂出版 1996-12
売り上げランキング : 189687


Amazonで詳しく見る
by G-Tools


『怪異投込寺』集英社文庫
「踏絵の軍師」…山屋敷秘図(切支丹・異国小説集)で既読だが、書いてないので書いておくと、竹中半兵衛の子孫采女正の執着したものとは?
「怪異投込寺」…妖説忠臣蔵 女人国伝奇で既読。
「獣人の獄」…将軍世子暗殺をたくらむ四人の侍がヒットマンを探していた。やがて見つけた浪人は…
「芍薬屋夫人」及び「地獄太夫」…地獄太夫―初期短篇集で既読

ほとんど既読だったのだが、「獣人の獄」だけ読んでなかったので、これだけのために購入してしまった。現在は品切れ本。
怪異投込寺 (集英社文庫)
怪異投込寺 (集英社文庫)山田 風太郎

集英社 1994-12-15
売り上げランキング : 486479


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

ラベル:時代物
posted by てけすた at 13:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 本 (国内) 山田風太郎 | 更新情報をチェックする

2010年07月04日

同時代ゲーム 大江健三郎

四国の山奥にある村=国家=小宇宙の共同体の神話と歴史を語るものとして、父=神主より子供の頃スパルタ教育を受けた主人公は双子の妹の手紙という形式でその共同体の話を綴りだした。
メキシコの歴史とリンクするような村=国家=小宇宙の創建期から語りだし、よく説明を受ければなるほどと思うが、最初聞いたときにはおかしく思う名前のついた人物たち、壊す人、アポ爺ペリ爺、オシコメ、シリメ、木から降りん人などの話を交えながら、大日本帝国との五十日戦争と自分たち一族の歴史に至るまで語られるその神話と歴史は忘れられた古い文化を思い起こさせるようでもあるし、小説として思いっきり戯画化したようにも思える。ノスタルジックにみえてどこか滑稽なのである。この滑稽さはなにに由来するのかと考えるのだが、やはり主人公がスパルタ教育を受けていたときにしばしば演じたおどけぶりに通ずるものなのだろうか。人は自分との感情の軋轢でどう語ったらいいかわからないときにはしばしばおどけたりするものだ。

この小説で感嘆したのはそのSF的発想の部分である。ゆきつもどりつ語られる神話と歴史の時間があいまいである、その訳は最後の場面で語られる主人公の体験と深い関わりがある。SF的とはいったが、通常では狂人の妄想に連なるような発想。しかし狂人の妄想にしばしば目を見張るべき着想や芸術が隠されていたりもするわけである。
同時代ゲーム (新潮文庫)
同時代ゲーム (新潮文庫)大江 健三郎

新潮社 1984-08
売り上げランキング : 110111

おすすめ平均 star
star『もののけ姫』に接した方は・・・
star何故大江氏が小説を創り続けるのか
star時間があれば

Amazonで詳しく見る
by G-Tools



ラベル:物語
posted by てけすた at 12:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 本 (国内) 小説 | 更新情報をチェックする

2010年07月03日

ユングの『赤の書』が出てるんだ。

ビーケーワンのメールでユングの『赤の書』が豪華本で出てるというのを知った。今年の9月までは37,800円だ。
Amazonのレビューにも書いてあったけど、はあ、すごく高いぞ。でも欲しいぞ。
ビーケーワンでは特集記事を組んでいて、その中で何ページか見本を出しているけど、本で見ると違うんだろうな。

C・G・ユングの秘められた日記が甦る『赤の書 The Red Book』の特集記事へ飛びます




うーむ。
ということで自分への覚書。欲しいぞ、買おうかな、どっしょかな。
赤の書 ―The“Red Book”
赤の書 ―The“Red Book”C・G・ユング ソヌ・シャムダサーニ

創元社 2010-06-26
売り上げランキング : 43588

おすすめ平均 star
star翻訳にお金もかかるし

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


【追記】
ちょ、楽天ブックスで検索したら定価42,000円になってるよ。流石だなw
それとAmazonは12月まで特別価格37,800円になってるな。
ネット書店もいろいろだ。

【2010.10.30追記】
とりあえず図書館にあったので借りて読んでみた(感想は以下のurl)
http://tekesuta.seesaa.net/article/167691582.html
欲しい気持ちはますますつのる。初版は売り切れ、現在は12月下旬の重版出来待ちみたいだな。特別価格は12月まで。
しかし、amazonは予約はしないのかね。bk1はちゃんと予約を取っているぞ。このあたりちょっと尼は殿様商売だよな。
買うかどうか決めてないくせにいうのもなんだが。
posted by てけすた at 12:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 本 (その他雑談) | 更新情報をチェックする