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2009年12月31日

南総里見八犬伝(二) 曲亭馬琴

岩波文庫「南総里見八犬伝」第2巻目。
この巻では第二十一回から第四十回まで。
信乃がたばかられて、村雨をすりかえられてしまい、気が付かぬまま許我へ向かい、そこで初めてすりかえられたことに気が付くが、敵の間諜と思われ、犬飼見八と戦うことになる。
2人は塔の頂上からもつれ合うように落ちて舟に落下、そのままどこへともなく流されるのだが、ついた先にまた犬士である人物とであう。それが犬田小文吾である。
この巻では信乃と見八の戦いと、犬田小文吾と妹の婿との確執が話の山場となっている。
あのひとはあのひととこんな因縁があったのね、と犬士たちの縁が次々と明らかになっていくところは読むのを中断できないくらい面白かった。
これだから伝奇ものは面白い。
ところで、この巻の解説では八犬伝の絶版問題があったことを書いている。芝居になるほど人気がでた物語なのだが、儒者林家から絶版にしろといわれたらしいのだ。申し開きを再三に渡って行い、この件は解決したらしいのだが、時は天保の改革の頃。山東京伝も手鎖の刑をやられてるしね。詳しいことは馬琴自身用心したためか何も書き残しておらずよくわからないらしいが、儒者たちの嫉視、あるいは当時は儒学擁護、で漢学洋学迫害の時代ではあったということあたりが問題の要因なのか、とも。

しかし、2巻まで読んだ限りではこれ、結構反体制文学だよな。忠孝推奨とはいえども、時の権力者ではなく反対勢力へ傾いてゆくんですもの(笑)
南総里見八犬伝〈2〉 (岩波文庫)
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2009年12月28日

南総里見八犬伝(一) 曲亭馬琴

岩波文庫の「南総里見八犬伝」を読み出す。全十巻あるが、1冊読むのに4日もかかるという遅読ぶりなので、1冊ごとに覚書として記事をあげてゆくことにした。
まずは1巻目。
この巻では第20回までが収められている。結城合戦で鎌倉方についた里見家は息子義実に家臣2人をつけて落とす。南総にやってきて、神余の所領だった国を山下定包が奪っていたが、かつての神余の家臣金碗八郎が義実に近づき、山下を討たんと助力を求めて、彼らは攻め入り、里見家がその土地を継いだ。
こうして、里美家は復興するのだが、山下の妻玉梓の祟りか、後年、生まれた伏姫に試練が襲う。
あとはご存知のとおり、伏姫から飛び出した霊気のようなものは、玉とともに飛んでいき、八犬士の誕生となるわけだが、この巻では犬塚信乃と、犬川荘助の生い立ちが描かれている。

90年に出たこの岩波文庫版はかなり表記を改めていて、「椿説弓張月」に比べるとかなり読みやすくて結構なことだ。
物事が起こって、どうしてこうなったのかというときに、折々に出てくる言葉遊びのような解釈、これが面白い。抄訳や現代語訳の本は読んだことがないので比較できないが、これがあるのとないのとでは随分印象が違うだろうなあ、と思う。あらすじだけでも面白いであろうことは想像できるが、言葉遊びの妙、これ原文だけがもつ楽しみの一つ。余り難しい古文ではないので、時間があるのなら読んでみて損はないだろうと思う。
ということで、こんなことを書いてる暇があれば早く2巻が読みたいのでこれで終わる。
南総里見八犬伝〈1〉 (岩波文庫)
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2009年12月25日

忍法剣士伝 山田風太郎

この小説は主人公木造京馬はたいして強くないし、ヒロイン旗姫も最初から絶大な魅力があるわけでもない。京馬はそこそこの忍者、旗姫は果心居士直伝の忍法によって、魔性の体質に変えられてしまったから、いわば普通の人に近いのである。
で、この話の主眼は、剣豪と呼ばれた人々の戦いぶりにある。誰が一番強いのか、という話はよく剣豪好きの間では出てくる話だそうだが、それを小説でやった、といってもいいかもしれない。
ただし、これは山田風太郎の小説であるからして、単純にこういう技だからこうだろう、という真っ当な話ではないことだけはもう承知済みのことだろう。
この剣豪たちの戦い、実にナンセンスというかふざけてるというか、ばかばかしいというか、滑稽というか、最初からあまり剣豪たちの知識がない私でも抱腹するような、決闘シーンなどがあって、たまらない。
話の筋はあってないがごときだし、誰かレビューで書いてたようにこの小説は剣豪小説パロディとして楽しむのが一番いいのかもしれない。それでも、最後は落語じゃないけとオチがついております。
個人的にはバカバカしい話なので伊賀甲賀忍法帖より好きだ。
忍法剣士伝 (角川文庫)
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star抱腹絶倒の剣豪小説のパロディもの
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タグ:山風
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2009年12月24日

富士日記(全3巻) 武田百合子

昭和38年暮れ、武田泰淳は富士に山荘を作った。以後、武田一家は東京と富士の山荘を往復する生活を始める。
この本は、妻百合子さんが夫泰淳氏に勧められて書き出した山荘の暮らしを綴った日記である。泰淳氏や娘の花子さんの書いてる部分も含め、その期間は泰淳氏の逝去する年まで続いた。

最初のころ、書くのが苦手と言う百合子さんは買い物したものの値段やその日見聞きしたことをちょこちょこと書く程度ではあったが、だんだんと彼女の芸術性というか、独創的なものの見方と表現が随所に現れるようになり、この本で言えば中巻あたりの日記が一番ピークを迎える。
富士で出会って交流した人々が百合子さんに話す出来事がしばしば日記に登場するがその選び方がとても人間の営みの妙さを示していて面白いし、百合子さん自身も不条理なことで悪態をついたりしていて、泰淳氏にたしなめられたりするが、その勇ましさが素敵だったりする。富士の自然景色、そして、しばしば出てくるのが人を含めた死の話。
十年以上も日記をつけているのだから知り合いの死に出会うことはあるだろうが、百合子さんは自然界にある死も描写する。それも感傷的ではなく、一つの体験として。
私がこころ惹かれた箇所がある。それは肢の折れた小鳥が落ちていたので、家に持っていって、世話をする場面なのだが、百合子さんはこんなことを書くのだ。
夜、又小鳥に餌をやる。とても残忍なことをしている気持ち。いい気持ち。

この小鳥は次の日死んでしまうのであるが、自力で生きられなくなった生き物を世話すること、人はそれを優しいことだと考え勝ちなのであるが、しばしば傲慢になるのではないだろうか?少なくとも残忍なことをしているかもしれないと思うことは行過ぎた行為への歯止めになるのではないかと、思ったのだ。
だからといって百合子さんが突き放したような性格なのかというとそうではないだろう。後半、泰淳氏が衰弱するにつれて、百合子さんはもう胸がつまるような思いを日記に吐露していて、読んでいるこちらにもその苦しさが伝わってくるようだ。

泰淳氏の死がどのようなものだったのか、この日記にはない。山田風太郎の「人間臨終図巻」によれば、家族には誰にも死に顔を見せないことなど3つほど命じていて、入院してひと月もたたないうちに亡くなったようである。昭和46年に脳血栓をやったあとの衰弱はその後遺症だと誰しもが思っていたが、のちに肝臓がんということがわかった。死後、解剖した結果、がんの原発は胃で、肝臓のは転移したものだったということである。
富士日記〈上〉 (中公文庫)
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star気ままで、飾らない。理想的な生活
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タグ:日記
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2009年12月22日

冬至なのでかぼちゃ食べたよ!!

しるこにかぼちゃをいれて食べる。それが我が家の冬至クオリティ
siruko.JPG
タグ:食べ物
posted by てけすた at 13:13 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日常 雑記| edit | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2009年12月17日

忍法創世記 山田風太郎

一応忍法帖のカテゴリにいれてよいものなのかどうか?
とにかく、解説では30年という長い間単行本化されなかったという幻の小説だったのだそうである。その理由は三種の神器を扱ってるからとか、本人が失敗作だからといったからだとかいわれているらしいが、一読して、なんでこんなに面白いものがずっと本にならなかったのかがすごく不思議。
ずっとその後も文庫本化しなかったり、収録しなかったりという作品で私が知ってるのはあの「忍法相伝73」と「妖異金瓶梅」の「銭鬼」という短篇だが、「忍法相伝73」はそのパイロット版をこの間読んで、本人が嫌がるのもわかるような気がしたし、「銭鬼」はちゃんとした作品なのだが、他の短篇で踏襲されてる決まりごとというか縛りからちょっとはみだしていて、作者はそれを気にしたために本からはずしたのではないかと予測する。
でも、「忍法創世記」だけはわからん。南北朝時代、伊賀と柳生は仲が悪かったが、それを改めようと婚儀を結ぼうとする折悪しく、楠木正儀の残党と大塔の宮の血を引く姫を守る一派がそれぞれの里を訪れて、三種の神器を守るべく力を貸して欲しいと迫るのである。近く南北は合体するという話があるのだが、柳生にいった大塔の宮の一派はそれを北朝に渡すのを阻止しようとし、伊賀へ入った楠木一派は正儀の汚名を晴らすべく、その神器を奪われないように守る、という目的。そして彼らはそれぞれ、剣術と忍法を授けるのである。
とまあ、前半のあらすじはこんな感じ。どこかで山風が「忍法が面白くないから」ということをこの作品でいってたのを見たような気がしたんだが、とんでもないですよ。派手さはないものの、的確なところでツボをついたような忍法で、非常に効果的に書かれている。
ほんとに、なんで今まで本にしてなかったのか、すごく不思議。
なんだかんだいってもやっぱり神器に言及している部分がちょっとはばかりあったのかなあ。
神器を守るために命を投げ出す、っていうモチーフもあの山風がこだわった戦争に似ているしな。
忍法創世記 (小学館文庫)
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おすすめ平均 star
starいかにして伊賀で忍者が誕生したのか。
star幻の忍法帖
star封印された忍法帖

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タグ:忍法帖
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2009年12月15日

忍法破倭兵状(ちくま文庫) 山田風太郎

山田風太郎忍法帖短篇全集3「忍法破倭兵状」収録作品などの覚書。
「忍法鞘飛脚」
忍者だったばかりに、ダルマ芋虫のように手足目耳舌をとられた医者がそうなったいきさつについて。
「忍法肉太鼓」
次期将軍に綱吉を継がせないため、世継ぎをつくらんと六波羅十蔵の忍法に頼るのだが。
「忍法花盗人」
不能の殿様をなんとか治そうと忍者たちが術を凝らす、その結果。
「忍法しだれ桜」
犬山城にある根来衆が江戸と尾張の険悪な関係により、危機に瀕する。
「忍法おだまき」
果心居士の幻術により自分の好きな年齢に戻ることができるのをみて、関白秀次は…
「忍法破倭兵状」
李舜臣が暗殺されたが、巫女の術で生き返る。巫女は舜臣の弟の妻だと言う。彼らは日本に渡り秀吉を亡き者にしようと図る。

そして、この本のボーナストラックは
「忍法相伝64」でございます。なんでも解説によれば、あの「忍法相伝73」のパイロット版であるとか。なんというか、かなり馬鹿馬鹿しいナンセンス小説。これを読んだら、忍法相伝73を高い値段で購入するのがばかに見えてくる。でもますます読みたくなったのも確か。
山風wwwwwどんなつもりで書いたんだろうなあ、これ。
山田風太郎忍法帖短編全集3 忍法破倭兵状 (ちくま文庫)
山田風太郎忍法帖短編全集3 忍法破倭兵状 (ちくま文庫)日下 三蔵

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タグ:忍法帖
posted by てけすた at 13:47 | Comment(0) | TrackBack(0) | 本 (国内) 山田風太郎| edit | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2009年12月14日

かもめ・ワーニャ伯父さん アントン・チェーホフ

『かもめ』
女優の息子で若手劇作家の書いた脚本を女優志望のニーナが演ずる。息子の芝居をくさす母親、中年の流行作家とニーナの係わり合い。夢に向かう若い2人の芸術家志望者の人生はいかに?
『ワーニャ伯父さん』
一族の星である大学教授とその妻がワーニャと姪のソーニャが住む田舎の屋敷にやってきて、誰もが生活のリズムを狂わされ、働かなくなってしまう。ワーニャが若い時代を犠牲にして、大学教授に仕送りしたこと、しかし、彼はそのことに感謝しない。そして、非常に若く美しい妻のエレーナに恋するワーニャ。彼は失意の底に沈む。

両方の作品とも、人生の辛さ悲しさが根底にある。これらの作品には成功して陽のあたる道を歩いてる人間と、蔭で報われぬ人生を送っている人間の両方が出てくる。そしてかもめに出てくるニーナの生活はトリゴーリンに食われてしまうし、ワーニャにしても、結局のところ自分の望む生活が手に入るわけでもない。
2つの戯曲とも、男性の脆弱さにくらべ女性たちの強さがすばらしい。ニーナにしろソーシャにしろ、一足飛びに人生に決着をつけるようなことを戒めている。どんな苦しい道も自分で決めて歩くこと、あるいはやがて訪れる永遠の休息を思うこと。
かもめ・ワーニャ伯父さん (新潮文庫)
かもめ・ワーニャ伯父さん (新潮文庫)神西 清

新潮社 1967-09
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おすすめ平均 star
star人はずっと、分かり合えないの?
star私はかもめ・・
star静劇の誕生

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タグ:戯曲
posted by てけすた at 12:55 | Comment(0) | TrackBack(0) | 本 (翻訳もの)| edit | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2009年12月13日

安土往還記 辻邦生

これは信長とポルトガルの宣教師たちのことを書いた書簡という形式で話が進められている。書いたのはジェノヴァの一船員で彼は南アメリカ大陸を経て日本にやってきた。その経歴は凄まじく、まるで運命との戦いのような暮らしであったが、彼は「どんなことがあろうともそれは自分が選んだことなのだ」という矜持を崩さないのが信条だった。
そんな船員は信長を当時の日本人が思ってるような冷酷無慈悲な恐ろしい君主としてみず、そこに一つの大きな信念と意志をもった人物として観察しているのだった。
ある大きなことをやり遂げるために犠牲にしなくてはならない感情が信長にはどれだけあったのだろう。同じく信念のためにはるばるやってきた宣教師たちに打ち解けた様子を見せるのも、彼らの偉大なる意思に共感したからに他ならない、という意味のことを船員は書き綴る。
信長の事業は日本全体を巻き込んでいるために、同じ日本人には到底彼の真意を推し量ることはできないし、よしんばできたとしても、それについてこれるような人物がどれほどいるのか。
外国人の視点で語る信長像はわれわれに、知られざる信長の一面がこうではなかったかという洞察を与えてくれる。
ルイス・フロイスの日本史をいつか読んでみようと思う。
安土往還記 (新潮文庫)
安土往還記 (新潮文庫)
新潮社 1972-04
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おすすめ平均 star
star異色の信長表現
star信長に関する文献の中でも、不思議な異彩を放つ良書ですね。
starジェノヴァ人が記した書簡形式で、1570年から死までの信長の内面に肉薄する名著

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タグ:歴史小説
posted by てけすた at 12:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | 本 (国内) 小説| edit | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2009年12月12日

シラノ・ド・ベルジュラック エドモン・ロスダン

演劇でおなじみ、快男子シラノの秘められた恋と、それにささげられた生涯のお話、戯曲である。
解説によれば、シラノ・ド・ベルジュラックは実在の人物だったとか。その生涯とこの戯曲の逸話は順番が違っていて、待ち伏せた100人を相手に快刀乱麻のごとき活躍をする部分などは本来、アラスの戦いのあとの逸話だとか。
以上は覚書。
さて感想であるが、読書メーターにも少し書いたように、これだけ達者な人でも男は顔じゃない、といえないのだなあ。そのあたりのデリケートな心情などは女性もわかってあげないとならん。とはいっても、醜い顔が許されるのはデリカシーのある男だけだ、ということは男性も覚えておかなくては。デリカシーのないヤツはどんな顔でも嫌がられるのです。
すまん、長々と顔の話ばかりで、シラノ本人に聞かれたらケンカ売られること必定だ。
喜劇的なセリフが多く、シラノの痛快な男っぷりとほのかに見え隠れする含羞が素敵だ。
シラノ・ド・ベルジュラック (岩波文庫)
シラノ・ド・ベルジュラック (岩波文庫)辰野 隆

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star新訳希望です。
star感涙必至!
star人間の美醜とは。

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タグ:戯曲
posted by てけすた at 11:20 | Comment(0) | TrackBack(0) | 本 (翻訳もの)| edit | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2009年12月10日

魔風海峡(上)(下) 荒山徹

豊臣家の財政が切迫していることを三成は憂い、ある伝承を元に黄金を手にいれようと企てる。それは任那日本府が隠したとされる財宝だった。三成は真田幸村に朝鮮行きを依頼する。
一方家康方もその情報を察知し、服部半蔵にその情報を朝鮮側へ流すよう指示するのであるが。
三成と家康の戦い、および幸村率いる忍びと高麗忍びの戦いと、幾重にも関係が交錯する。
この作品ではもっぱら日本との戦争を軸に書かれる朝鮮の状況だけではなくて、当時の李氏朝鮮の身分制度や明との関係などが詳しく言及されており、身分制度が厳しかったことなど、小説とはいえ勉強になった。なにより、差別的社会の批判として登場する高麗忍びと一人の朝鮮王子の登場に胸躍る心地がする。
もっとも、高麗忍びの使う術にはB級ホラー的ノリがあって、王子の臨海君じゃないけど、私も勘弁してください、でしたが。(笑)
さらに、この作品の主要テーマではないが、家康が天下狙いの動機として、その人質生活で、いつかすべての人間を自分の奴隷としてやる、という異常な妄想が出来上がった、と言及してたところに気が惹かれた。
この発想って、山風の「妖説太閤記」の秀吉の動機に匹敵する面白さじゃない?
今新刊で出てるこの作者の「徳川家康(トクチョンカガン)」がもしこのテーマだとしたら、面白そうなので読んでみたい。
(追記:で、トクチョン〜の中身はどうなの?と思ってamazonで確認したところ、影武者が出てくる話らしい。奴隷妄想はなさそうで残念だ。)
魔風海峡 (上) (祥伝社文庫)
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star真田十勇士、朝鮮で大暴れ!

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魔風海峡 (下) (祥伝社文庫)
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タグ:伝奇
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2009年12月08日

夜よりほかに聴くものもなし 山田風太郎

光文社文庫、山田風太郎ミステリー傑作選3
本書収録作品の覚書です。

「鬼さんこちら」…妻が失踪
「目撃者」…事故の目撃者の女の子
「跫音」…追い詰められる殺人者
「とんずら」…保険外交員の苦い出来事
「飛ばない風船」…貢いでくれた女性を…
「知らない顔」…指名手配犯とそっくりな男
「不死鳥」…博士の妾との関係
「ノイローゼ」…前の夫に似てきた今の夫
「動機」…主人公殺人の動機
「吹雪心中」…一夜のつもりが
「環」…一つの行いからいかに他へ影響を及ぼすか
「寝台物語」…鶯の寝台にまつわる思い出
以上は短篇。
「夜よりほかに聴くものもなし」は連作短篇で、八坂刑事が最後にいう言葉が哀愁を誘う。裁きと復讐、犯罪についての逆説や皮肉をしみじみと感じる作品。

以上は「サスペンス篇」ということで人間心理と偶然の織り成す怪しくも恐ろしい事件が描かれている。「とんずら」などはちょいと喜劇的ではあるが、本人にしてみれば悲劇そのものではあるな。
「目撃者」はちょっと恐ろしい。
「動機」「吹雪心中」「環」「夜よりほかに聴くものもなし」は既読。
夜よりほかに聴くものもなし サスペンス篇―山田風太郎ミステリー傑作選〈3〉 (光文社文庫)
夜よりほかに聴くものもなし サスペンス篇―山田風太郎ミステリー傑作選〈3〉 (光文社文庫)
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タグ:ミステリー
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2009年12月07日

十三角関係 山田風太郎

光文社文庫、山田風太郎ミステリー傑作選2
この巻では荊木歓喜という医者が名探偵ぶりを発揮するシリーズものである。
以下、収録作品
「チンプン館の殺人」
ボロアパートチンプン館での事件。歓喜先生の登場。
「抱擁殺人」
顔面改造された青年をめぐる事件
「西条家の通り魔」
西条家をたびたび襲う誘拐の強迫。
「女狩」
ある病院の医者看護婦たち7人がからんだ事件
「お女郎村」
とある村に起こった殺人事件
「怪盗七面相」
美術品が怪盗七面相に盗まれた、その顛末
「落日殺人事件」
体の不自由な元警視庁総監の家で起こった事件
「帰去来殺人事件」
狂人となった人物の行方をおってきた歓喜先生がそこで遭遇した事件。歓喜先生の過去が明らかに。
以上は短篇中篇。
「十三角関係」は長篇で、「花ぐるま」のマダムがバラバラ死体となっていた。その日マダムにあった人物がたくさんおり、いつ、どのように殺されたのか、謎なのであった。

荊木歓喜の人物像が興味深い。大柄肥満で顔にキズ、脚はちんばであるが、大陸ではすこぶる評判の良かったという噂の医者で、今はチンプン館に住みながら闇で産めない事情のある女性たちの堕胎などをしている。闇の世界でも顔が利き、その探偵能力のせいもあるのか警察とも顔見知りであるが、他人のことには首をつっこまない主義であるので、犯人を知ってても知らんふりをすることも。
十三角関係 名探偵篇―山田風太郎ミステリー傑作選〈2〉 (光文社文庫)
十三角関係 名探偵篇―山田風太郎ミステリー傑作選〈2〉 (光文社文庫)
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star名探偵・茨木歓喜

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タグ:ミステリー
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2009年12月05日

ジャン・クリストフ(全4冊) ロマン・ローラン

ジャン・クリストフという天才音楽家の生涯を通じ、人生や人間の光と影、当時のヨーロッパ社会を描く一大巨編。
第1巻は幼少年期のクリストフが描かれ、家族関係についての考察を得るところが多い。
第2巻は青年クリストフの熱情と傲慢。それはドイツとフランス社会の批判へとなっている。
第3巻はフランスで友を得たクリストフが友からフランスの知性や良心と触れ、融和していくが、パリでは不穏な動きがあった。
第4巻は失意のクリストフがいかに復活したか、そして残りの人生のこと、新時代の考察。
各巻大まかにはこんな内容である。

この世に生れ落ちた人間の苦悩で人間関係ほどどこにでも付きまとうものはないであろう。いかに天災が襲ってきても、その後にあるのは例えば愛するものを失ったり、自分が社会から取り残される苦悩だ。人間関係こそ人生といえるものかもしれない。
作者はジャン・クリストフにあるとあらゆる人間関係の苦悩を背負わせた。そしてまたあらゆる隣人の人生もクリストフに見せた。
この作品全体を読む中では必ず自分に良く似た苦悩を発見するだろうと思う。だからこそ人間は究極同じものなのではあるまいか。
文中にこんな言葉があった。
“強い者らは自分の身を救うことばかりを考えている。おう人間よ、汝自身を助けよ!…という雄雄しい格言は、おう人間よ、互いに助け合え!という意味であることを、彼らは考えもしない。”
われわれが分け隔てらればらばらになっていると感じたときに、確かに人はそんなことには思いもよらないでいる。悲惨にしろ傲慢にしろ。そのことに気づけた時に自分のとりまく状況は少しでも変わりだすのかもしれない。
ジャン・クリストフ 全4冊 (岩波文庫)
ジャン・クリストフ 全4冊 (岩波文庫)豊島 与志雄

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starシンガーソングライターになるには
star至高なる感動
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タグ:人生
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2009年12月04日

不知火軍記 山田風太郎

今、山田風太郎の本を少し集めているんだが、短篇集などは何が収録されてるのかわからない本が多くて結構悩む。そこで、これからはどんな短篇集も収録作品をこのブログに記録しておくことにした。

で、この本は集英社文庫で収録作品は以下の通り。
「不知火軍記」
天草の地にもともとの豪族天草衆が帰ってきて、切支丹狩りを行なっている。そんな折、とある南蛮船が近づいてきた。乗っているのは小西行長の孫娘であり、彼女たちはこの地の切支丹を支援しにやってきたのだった。
「盲僧秘帖」
蟇丸と蝶丸という若者が山口へやってきた。その地で彼らは伴天連を見、不穏な政治の動きを見る。そして蝶丸はその不穏な武将たちの中へ飛び込み、蟇丸は切支丹になる。
「幻妖桐の葉おとし」
高台院が豊家恩顧の武将7人に謎の文言と大阪城の絵図を示し、この謎を解いてほしいと以来する。7人は1ヶ月を期限に持ち回りで絵図を預かることになるのだが、不穏な出来事が起こり始めた。

不知火軍記 (集英社文庫)
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タグ:時代小説
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