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2009年07月30日

世の中はゼニや

食用色素青色一号で脊椎損傷を回復させることができるらしい。
『FD&C Blue No.1』(「ブリリアント・ブルーFCF」、通称「青色1号」)は、米国の食品医薬品化粧品法(FD&C法)に基づく食品添加物で、ごく普通に利用されている合成着色料だ。幸運な偶然から、この色素が、神経の炎症を引き起こす主要プロセスを遮断するために実験室で作り出された化合物に驚くほど類似していることが明らかになった。

脊髄損傷を受けたラットに青色色素を投与すると、投与されなかったラットよりはるかに早く回復したのだ。しかも、研究者から報告されている副作用は1つだけ――ラットが青く染まるということだけだ。
http://wiredvision.jp/news/200907/2009072923.html

しかし、このあとずっと記事を読んでいくと最後に
Nedergaard氏は、更なる実験が必要であることを認めている。同氏は資金が得られ次第、臨床試験を行ないたいと考えている。問題は、青色1号が非常に安価なので、臨床試験を支援する製薬会社が見つけられそうもないことだ。同氏は政府の支援を希望している。

ということで、資本主義社会の厳しい一面をうかがわせる文章で終わっている。
はあ、そうなんですよ、儲かれば企業はどんな薬でもつくるが、儲からないことは一切したくない。
以前、私はこんな記事を書いたことがあるが、
http://tekesuta.seesaa.net/article/112458649.html
喘息みたいな慢性疾患で根治できずとも症状を抑えられれば日常生活は送れるようなものはうがった見方をすれば、治らなければずっと薬で儲けることができるわけだから根治の研究など後回しになるのも当然なんだろうな。

そういうことで有効な治療方法がどこかに葬り去られてるのではあるまいか、という妄想はふくらむのであった。
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2009年07月28日

デカメロン(中・下 ちくま文庫) ボッカッチョ

デカメロン上巻の続き。
中巻は第4日から第7日まで。4日目がその恋が不幸に終わった人々について、5日目は不幸な事件のあとで恋人たちにめぐってきた幸運な事柄について、6日目は他人にいどまれて、見事な返答で危険や嘲弄を逃れた人々について、7日目は婦人たちが恋のために夫を騙したことについて。
下巻は第8日から第10日まで。8日目は騙しあいについて、9日目はテーマなし、10日目は愛やその他のことで寛大、あるいは鷹揚に振舞った人々について。
ボッカッチョ自身、女性好きなため、恋愛の話や艶話が多くなってると解説では書かれている。思うに、このルネッサンスを目前にした時代、闊達な生物としての人間に焦点を当てるのに、恋愛はよく似合ってるものだと思う。
とはいえ、100話の中にはいろいろ教訓めいた話も多いし、機知に富んだ行動で、権力者から身を守ったり、やりこめたり、という叛骨性もみられる。また、どんな人物だろうと打算的な人間には最後に報復がまっている。それとは別に、ブルーノとブッファルマッコという人の悪い画家たちが活躍する話が幾つかあるのだが、なかなか面白い。彼らは相手がどんな人物であろうと、のろまで頭のにぶい奴だと見て取るや、策を弄してからかうのが好きである。そこには教訓というものは見当たらないが、からかう対象が医者だったり裁判官だったりするので、その権威が失墜して、笑いを誘うのである。
その面白さがわかりにくい話もいくつかあったが、概ね楽しめた。残念なのは10人の名前の意味がわからなかったこと。訳者は注釈してくれればよかったのになあ。
デカメロン〈中〉 (ちくま文庫)
デカメロン〈中〉 (ちくま文庫)柏熊 達生

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デカメロン〈下〉 (ちくま文庫)
デカメロン〈下〉 (ちくま文庫)柏熊 達生

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講談社文芸文庫
デカメロン〈下〉 (講談社文芸文庫)
デカメロン〈下〉 (講談社文芸文庫)Giovanni Boccaccio

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2009年07月25日

デカメロン(上・ちくま文庫) ボッカッチョ

ペストが流行る中、7人の淑女と3人の紳士が郊外の屋敷へいき、短い話を語る。ちくま文庫版上巻は前書きから第3日まで収録。
第1日目はテーマはないが、主に修道士を風刺した話が多い。2日目はいろいろなことで苦しめられた人がはからずも幸せな結果になった、というテーマ、3日目は非常に望んでいたものを巧みに手にいれたり、失ったものを取り返した人の話というテーマである。
2日目第9話(エリザ)の話す、夫が騙されたために自分が殺されそうになった妻がたくみに逃げ出し、男装して皇帝に仕えているうちに、夫を騙して自分を陥れた男を見つけたのでその男を罰し、再び女の姿に戻って金持ちになって帰る、という話と
3日目第3話(フィロメーナ)の、一人の青年に恋した夫人が、懺悔とと純愛を口実に、血のめぐりが悪い修道士を巧みに利用して思いを遂げる、という話に知略に富んだ女性の様子が生き生きと描かれていて、前者は痛快さ、後者は鈍い修道士の間抜けな様子が面白かった。
デカメロン〈上〉 (ちくま文庫)
デカメロン〈上〉 (ちくま文庫)柏熊 達生

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ちくま文庫は品切れだが、講談社文芸文庫は在庫あり。
デカメロン〈上〉 (講談社文芸文庫)
デカメロン〈上〉 (講談社文芸文庫)Giovanni Boccaccio 河島 英昭

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star「ルネサンス=精神の革命」の象徴

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2009年07月24日

わたしが子どもだったころ エーリヒ・ケストナー

岩波の「ケストナー少年文学全集7巻」で読んだ本作品。児童書ではあるけれども、「親愛なる子どもたちと子どもでない人たちに!」という前書きの一節のように、大人にも十分通用するような、生きることへのメッセージ、というと気持ち悪いがうまい言葉が見つからないので、に満ち溢れたユニークな自叙伝である。
実直な職人の父と頑張り屋の母、そして、生活を思いっきり楽しむ母方の叔父たち、そして、学校、先生、これらのことが書かれているのだが、その文章はユーモアと生きることの信頼感に溢れ、また、普通なら辛いだろうという思い出もそれをことさら大げさに書くこともなく、ただ、人生こんなこともあるさ、と淡々と書き連ねているのがいい。
彼は文中でこういう。
「心痛はひょうが降ったり、山火事が起こったりするように、起こるものだ、と私は思う―(中略)―もっと理性的な政府やもっと思い切った処置によっても根絶されない心痛は、いくらも残るだろう。そういう心痛を隠していわないものは、うそつきである。」
(第12章冒頭より)

何より、子どもだからといって、表現を優しくしようとしたりしないで、同じ一人の人間として対等の目線で語るところが良い。子どもは非力ではあるけれども、あるところでは大人と同じように物事を見ているもので、ケストナーはそれをちゃんと心得ているらしいのだ。
彼の作品は「飛ぶ教室」しか読んだことがない。
なにせ、私の子ども時代ときたら、自分でも記憶が乏しいくらいぼんやりしていたから。だからこれから少しづつ読んでいきたいものだ。
それにしても、子ども時代に読まなかった時間を取り戻すのにどれだけ読めばいいのか、
いつも周回遅れの感に襲われるのであった。
でも、頑張って読みます。
わたしが子どもだったころ (ケストナー少年文学全集 (7))
わたしが子どもだったころ (ケストナー少年文学全集 (7))ワルター・トリヤー 高橋 健二

岩波書店 1962-01
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おすすめ平均 star
star強く生きるとは
starケストナーの子ども時代
starわたしが子どもだったころ

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タグ:児童書
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2009年07月22日

遭難の映画をつくるとしたら


北海道なんだけど、今年は随分と寒い。
この遭難事故を後に映画仕立てにするとしたら、冒頭のシーンに
「今年は随分寒いよなあ」
とつぶやく地元民の姿を入れてみたいと考えてしまう。
そして、本筋へとすすんでゆく、ベタだが、そんなことを考えてしまうくらい寒い。
だから、某巨大掲示板でいろいろと叩かれまくってるツアー客だけど不運だったと気の毒に思うことはあるわけだ。
そうはいっても一方、同じ気候の中できちんと下山した人もいるわけで、だからこそこの事故でなにがあったのか誰かきちんと検証してくれる人がいて欲しいところだ。
しかし、登山する人っていうのはえらいと思う。
実をいえば、私も学生時代なんと3ヶ月だけワンゲル部にいたことがある。新入生の入部勧誘で「本格的な登山は登山部がやるし、ワンゲルは自転車のったり、ハイキングしたりそんなに激しいことはしないよ」としきりに言われるので、なにをトチ狂ったか入部してしまったのである。
ところが、見よ、入ってみれば、やれ何々山だ、やれ何とか山だ、と本格的な登山ばかりじゃないか。
今思えば、ワンゲル部というのは難易度が比較的低い山をもって「きつくない」といってたような気がするが、とにかく、何が悲しくて非力なのに重い荷物もって坂道を登らなければいけないのか、という不条理感に襲われ、退部したというおぼろな思い出。
だから中高年の登山ブームというのはちょっと私には理解できないのであった。
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2009年07月18日

日輪・春は馬車に乗って他八篇 横光利一

お馴染み、といってもこれで2回目なのですが、「世界を変える100人の日本人」というテレビ番組の「筒井康隆の日本人ならコレを読め!」で紹介されてた作品です。
2009.7.10放送分は横光利一作「機械」
http://www.tv-tokyo.co.jp/100japan/tsutsui/index.html

リンク先で紹介されてる本と違うが、岩波文庫にもこの作品が収録されていたのでこちらを読んだ。
まず、「機械」を読んでの感想。
私は最初読み始めたときに、「私」という主人公が人間じゃなくて機械なのかと思った。工作機械が人間模様を見つめて喋る設定なのかと思いっきり勘違い。それに気が付いたのは主人の奥さんが「私」にお金をなくすから主人と一緒に集金へいってくれ、と頼んだとき。
よく考えると、主人公が機械なんて、まだこの頃では荒唐無稽な話でしかなく、文学じゃないよね、とひとりごちました。
しかし、私が、主人公を機械だと勘違いしてしまうくらい、工場の仕事というのはどこか非人間的になるものなのかもしれない。
それと、関係妄想、といってもいいくらいの工場で働く人間。しかもそれは実際の職場でもいかにもありそうなくらいリアルな心理描写なのであった。

他の作品について。
「御身」「赤い着物」といった女の子の気を引きたいがために自虐的な笑いをとろうとする主人公たちに、男性の女性に対する被虐欲が見え隠れした。こういう男性像というのは形は違うが、自伝的だという「春は馬車に乗って」「花園の思想」で、死に向かう妻の看病をした主人公とどこか重なる。これが中世西洋のように発展していくと騎士道、ということになるのだろう。
「日輪」は卑弥呼の話だが、卑弥呼を得るがために、相手の男性を殺す男性たち。そこには女性への所有欲しか認められない。夫を何度も殺された卑弥呼はその原因となった自分の美貌を逆手に、復讐を行なう。ベタな言い方になるかもしれないが、相手に人格を認めないと強烈なしっぺ返しがくるというお話にとれた。自分としては的外れな感じ方かもしれないが、作者になにか騎士道精神を感じる。
他に、幼い男の子が母親を独占したがる「火」、面をつくっていたので、下駄屋にされた「笑われた子」、蠅の視点から不条理を描いた「蠅」、ナポレオンの征服欲が実は腹に巣くう田虫のせいだったという「ナポレオンと田虫」が収録されている。
日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (岩波文庫 緑 75-1)
日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (岩波文庫 緑 75-1)横光 利一

岩波書店 1981-08
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star名作、されど初期作
star精密にして巧妙
star言葉の強さ

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タグ:文学
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2009年07月17日

神曲(天国篇) ダンテ 平川祐弘訳

第一歌から第三十三歌まで。
ベアトリーチェと共に天国へ昇るダンテ。詩作にあたり詩の女神(ムーサ)とともにアポロンにも手助けを願い、読者へも容易には読みこなせないぞ、と言及する。
天国は十天に別れる。下から月光天、水星天、金星天、太陽天、火星天、木星天、土星天、恒星天、原動天、至高天。上に上がるにつれて歓喜と愛に満ちてくる。

天国篇は地獄、煉獄篇とは趣が異なり、神学をベースにした問答と、歓喜に満ち溢れた天国の住人たちで構成される。とはいえ、ダンテはよほど地上の出来事に関心が強いのか、ここでも、政治の話が住人と行なわれる。そのあたりはなんだか天国の雰囲気にそぐなわないなあ、などと感じるのであるが、それにしても、この天国篇はなんだか凄い。
私は神学にも無知だし、当時のイタリアの政治状況にも不案内だ。そして、ここで交わされる会話といえば、おおよそこの2つなのであるが、にもかかわらず、光の満ち溢れた様子が伝わってきて、それに感銘を受けたのである。私はバロック音楽、特にパイプオルガンの奏でる曲が好きなのだが、それに似たものを感じ取ったのだった。芸術が信仰を促す作品というのはこのような作品のことをいうのではないかと思ったほどだ。
天国の住人が光に満ち溢れるというアイデアはダンテ以前にもあったのかどうか不案内なのだが、あればそれを効果的に使っているし、なければ、その独創性はかなりなものだ。
それと全編を通じて、高い構成力と次々読ませる手腕には驚嘆する。訳者の平川氏は源氏物語と比して、「省略の美学」の心得がダンテと紫式部にはあって、それを実践している、と述べているが、これだけ長いものを冗長に感じさせない点、その通りだと思った。
神曲 天国篇 (河出文庫 タ 2-3)
神曲 天国篇 (河出文庫 タ 2-3)平川 祐弘

河出書房新社 2009-04-03
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おすすめ平均 star
starユニークな神学的議論が面白い
star天国よいとこ一度はおいで?

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2009年07月15日

神曲(煉獄篇) ダンテ 平川祐弘訳

第一歌から第三十三歌まで
地獄から、煉獄の島へ出てきたダンテたちはその島にある煉獄山へ登ることになるが、島には煉獄山にまだ登れない人々がいる。山は7つの大罪を清める道があり、それは険しい。高慢の罪は大きな岩を頭にのせて、腰をかがめて歩かなくてはならないなど、7つのそれぞれの罪に応じた試練が、山を登るものに課せられている。ちなみに、ここで清められる罪の順番は高慢、嫉妬、怒り、怠惰、貪欲、大食らい、色欲、である。

地獄篇のひたすら圧迫されるような描写で重苦しさを感じていたので、煉獄篇第一歌を読み始めてさわやかな風に当たったような開放感を味わうが、それもつかの間だった。
煉獄山がまた険しくて、これはこれでなんとなく難儀するものだ。おまけに、煉獄では当時のイタリアを中心としたヨーロッパ人の固有名詞がたくさん出てくるものだから、そのあたりの歴史に疎い私としては地獄篇より注釈を頼りにしないとわけがわからん。
それにしても、煉獄も結構大変そうだ。地獄はもう刑が確定してその先の望みはない点がきついが、煉獄はクリアすれば天国がまってるぞ、みたいな、まるでRPGのノリを思わせるものがある。さらに、煉獄のつらい道のりも、まだ生きてる人々が彼らのために祈ってくれると、それだけ道が楽になるのだそうだ。だから、煉獄にいる人々はダンテに戻ったらこれこれの人によろしくいってくれ、と頼みにくる。
この煉獄ではダンテも他人事だと思ってられないのか、自戒をするような場面も見られる。地獄ではもっぱら裁かれた人間に興味をもっていて、自分のことは省みてないのとは対照的である。
まあ、煉獄も地獄も似たような罪があり、キリストの神と手を結ぶか結ばないかの違いで分けられるようだから、それももっともなのかもしれないが。
神曲 煉獄篇 (河出文庫 タ 2-2)
神曲 煉獄篇 (河出文庫 タ 2-2)平川 祐弘

河出書房新社 2009-01-26
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おすすめ平均 star
star「煉獄」という無理筋の場所が面白い
star天国はまだかあああああ

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2009年07月13日

神曲(地獄篇) ダンテ 平川祐弘訳

河出文庫は神曲を3篇に分けている。全部読んでから感想を書こうと思ったが、最初の地獄篇が結構面白かったので、印象の薄れないうちに書くことにした。なぜ河出を選んだかというと、口語訳で読みやすそうだったからである。その見込みはだいたいあっていて、そんなに違和感のあるような訳でもなく、意味のくみとりやすい表現だった。

35歳のダンテは森の中で迷い、猛獣に行く手を阻まれるが、ウェルギリウス(紀元前1世紀ころのラテン詩人、「アイネアス」が代表作)と出会い、その場を救ってくれ、ついでに、ベアトリーチェから頼まれてきたといって地獄と煉獄を案内してくれることになる。地獄篇は第一歌から、地獄の最下層まで降りて、裏側へと抜ける第三十四歌まで収録。

地獄は9層になっていて、端正なまでに整えられた構造になっている。ところどころ秀逸な比喩が出てきて、詩人として高い表現力があるのだな、というのはわかる。
ところで、私はこの地獄篇、俗に読もうとすればかなり俗に読めるな、と思った。というのも、人名がたくさん出てくるのだが、知ってる人も知らない人もたくさん出てくるので注釈を読むと、それが当時の有名人、ダンテの知り合い、ギリシャ神話の人物、過去の有名叙事詩の登場人物であって、彼らが地獄の責め苦にあってるという図は当時読んだ人々にかなり話題を起こしたのではないだろうか、と思うからだ。
それに、ダンテ自体、かなり政治に関わっていて、政争に負けて追放された体験ももつ。その政敵が地獄でのたうちまわってるというのは、第三者からみれば、「もしかして私怨?」とか考えてしまうし、それに、その罪とやらが、かなりキリスト教的価値観が入っていて、キリスト教徒でない私からみれば、かなり偏っている。マホメットも地獄へ追いやってるから、世が世なら処刑命令が出てもおかしくはない。
ということで、ダンテの偏見ぶりとあの人があんなところに、という野次馬根性と有名人がいたぶられてる、という嗜虐志向の刺激があいまって、かなり面白いです。
ああ、もうキリスト教徒でないということで辺獄(リンボ、地獄の一番上層)だもの。
神曲 地獄篇 (河出文庫 タ 2-1)
神曲 地獄篇 (河出文庫 タ 2-1)平川 祐弘

河出書房新社 2008-11-04
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おすすめ平均 star
star標準的な口語訳にして名訳
star通読できる訳
star平川氏の訳注には学識の深みが感じられます。

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2009年07月11日

「ダーシェニカ」「プドレンカ」 カレル・チャペック

図書館でカレルチャペックの児童書を見かける。「ダーシェニカ」は以前読んだことがあるが、「プドレンカ」は初めて知った。せっかくなので、両方借りて読んだ。

『ダーシェニカ』
新潮社の本で前に読んだことがあったが、そちらは「ダーシェンカ」となっていた。どっちの発音が正しいのだろう?
こちらブロンズ新社のほうは訳者がチェコ生まれの帰国子女であるから、こちらのほうを信用したくはなるが。
それはさておき、ダーシェニカはフォクステリアの子犬。生まれたときから貰われるまでの成長記録がユーモラスに書かれている。そして、ダーシャ(ダーシェニカの愛称)に聞かせた?犬の童話が数編とカレル撮影の写真が乗っている。なんだか育児記録みたいでほほえましいぞ。
子犬の生活ダーシェニカ (よみがえる珠玉の名作)
子犬の生活ダーシェニカ (よみがえる珠玉の名作)Karel Capek Petr Hol´y 小野田 若菜

ブロンズ新社 2003-09
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『プドレンカ』
不死身の猫、といっても代替わりしてゆくが、猫が子供をたくさん産みまくり、26匹目にはすすめる相手もいなくなったので、自分の知人の少なさに絶望しているところをユーモラスに描いていて笑いを誘う。
知人の輪を広めるためにどこかサークルへ入ろうかとか、職場のみんなはもう猫をもらってくれたので、職場を変えなくてはとか。
ちなみに、訳者の見解によれば「プドレンカ」という名前には「ありきたりの」「本能の」という二つの意味がかけてあるのでは、と注釈されてる。
他に犬と猫の性質の違いを考察した文や、猫の気持ちを代弁した文(なんとツンデレであった)さらに、猫の野生から人間社会の信頼についての見解にまで発展して、ちょっとした哲学だな、と思った。
猫は猫を信用してない。猫は野生の獣だから。猫は人間を信用している。人間は野生の獣ではないから。
そんな意味のことをカレルは書く。信頼という絆で結ばれてるうちは人間は人間としていられるが、それが断ち切られたならば、人間の社会もライオンや虎の住むジャングルとなる、ということを。
ふしぎ猫プドレンカ (よみがえる珠玉の名作)
ふしぎ猫プドレンカ (よみがえる珠玉の名作)Karel Capek Petr Hol´y 小野田 若菜

ブロンズ新社 2003-09
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おすすめ平均 star
starかわいいプドレンカ

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タグ:児童書
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2009年07月10日

孫子 金谷治訳注

一昨年の大河ドラマ「風林火山」で山本勘助が「兵は詭道なり」とよく言っていたが、その孫子をなぜ今読んでみる気になったのかわからない。
ただ、この間「八甲田山死の彷徨」で軍隊の話を読んだので、そのことが頭にあったのかもしれない。

さして長くもない兵法書であるが、すらすら読めるわけではない。一応現代語訳はついているけれども、それを読んでも、この書は逆説に満ちていて、つまるところ、戦わずに結果を出せるのが一番良いのだ、というふうに解釈した。安易な合戦を勧めていないところ、奥深さを感じる。
ところで、前出の「兵は詭道なり」と言う言葉、本の現代語訳では「戦争とは正常なやりかたに反したしわざである」となっている。そして強くとも弱くみせ、勇敢であっても臆病にみせ、と続いている。これを読んで戦争に正々堂々とか正義とかいうのはまさしく詭道なのだな、と皮肉に感じた。戦争とはまさに敵味方両方を騙して勝つことができるものなのだろう。
うかうかと檄に賛同してしまうと、あとで大変な目にあいそうだ。
新訂 孫子 (岩波文庫)
新訂 孫子 (岩波文庫)金谷 治

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おすすめ平均 star
star内容が求めているものと違った。
starたまには古典もよいかも・・・
star組織を動かす原理原則が詰まっている

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タグ:中国思想
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2009年07月08日

f植物園の巣穴 梨木香歩

歯が痛くなってきた主人公は歯医者へ行くが、そこで薬袋をくれた手が犬であることを見る。なにやら異世界へ紛れ込んだような幻想的世界が主人公を取り巻く、という話。
最後まで読んで、この小説は幻想小説を読むための入門書にいいな、と思った。というのも、幻想的部分を主人公がどうなっているかと解き明かしてゆき、時折、解釈を指南するような道しるべがちゃんと書かれているからである。指南された道を外れなければ、一定の物語が浮かび上がってきて、なるほど、こういう風になっていたのか、とわかるようになっているのである。
一見、訳のわからないような幻想小説ではこの道しるべを自分なりに見つけて読むことが要求されてくる。
この小説も道しるべを書かずば、恐らくかなり突き抜けた幻想小説になりそうだが、読者が置き去りにならないようにとの配慮からか。
読み慣れたら、道しるべから離れて、自分なりの楽しみ方もこの小説ではできるであろうし、むしろそれからが本番ともいえる。
それから、主人公がこの世界を探索していくうちに、変化がみられること、この点では教養小説の要素ももってるかもしれない。
幻想小説の存在理由がわからない人、この小説を読んでも思うところがなければ、かなり心が硬直してるかもしれません。
f植物園の巣穴
f植物園の巣穴梨木 香歩

朝日新聞出版 2009-05-07
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おすすめ平均 star
star「ボウ」との別れのシーンで、私は涙を流しました。
star1つの日本語現代作家の到達点
star日本人特有の曖昧さの在り方についても思い起こせられる

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タグ:幻想
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2009年07月07日

西遊記(岩波文庫旧版全10巻)小野忍・中野美代子訳

中国四大奇書も最後となりました。トリは西遊記。
今までは平凡社の奇書シリーズを読んでいたのだが、我が地域の図書館にはなぜか西遊記が揃ってないので、今回に限り岩波文庫で読んだ。しかも、最新の版ではなくて、旧版ものである。

まずは解説に書いてあったことの覚書
西遊記の作者は従来、呉承恩ということになっていたが、これがどうやら違うかもしれないという。従って、訳者の中野氏はこのクレジットをはずした。
さて、定本であるが、岩波文庫は「李卓吾先生批評西遊記」を採用している。とはいっても李卓吾その人が批評したものではなく、商魂たくましい人々が彼の名前をつけて出版したものらしい。
ちなみに平凡社のほうは「西遊真詮」という節略本が定本になってるとのこと。こちらは清代に出版されてるという。
他にもいろいろとテキストが紹介されていたが、それは省く。

岩波文庫の旧版と新版の違いについて。
小野忍氏が急逝したため、4巻からは中野氏が訳したものが旧版である。小野氏の講談調と中野氏の現代風な訳し方の2通りが読める。小野氏は「金瓶梅」の唄の部分でも七五調の面白い訳文をしてくれて、わりと私は好きな文章だったな。
一方、中野氏は詩の部分もかなり意訳してあるので、意味がわかりやすい。しかし、なんとなく雰囲気が損なわれる点があるのは否めない。
新版はその中野氏が全面的に改訳したものである。

さて、西遊記。子供の頃テレビで見たりしていたので、少しは知ってるつもりではあったが、やっぱりきちんと読んでみるべきだな。
玄奘三蔵がかなり情けない人物として書かれていたのは意外だった。高僧というからにはある程度の胆力があると思いがちだが、妖怪に捕まったら泣いてばかりだし、高い山をみれば心配するし、こんな気の小さい人がよくぞ長旅したものです。
まあ、都会育ちの優等生なので、大自然のサバイバルには慣れてない、という解釈をすればいいのかもしれない。
孫悟空はおなじみ、痛快な活躍で楽しめる。八戒の俗物ぶりもまた笑う。沙悟浄というのは思ったほどの怪物じゃなかった。もっと皮肉バリバリなのかと思ったらそうでもないし、一番普通の人らしい。
10冊あるので時間かかるかなと思いきや、一気に読める。玄奘ご一行様が14年かかった旅路をあっという間に読み終えて、充実感と一抹の寂しさ。連載小説なら少しづつ楽しめそうな毎回山場満載の面白い話。
読んでよかった。
西遊記(10冊セット)
西遊記(10冊セット)
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タグ:中国古典
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2009年07月05日

大切なのは自分に正直になること

近頃流行の自己啓発本とか引き寄せの法則なんちゃらなどに警鐘を鳴らす記事がある。

私も実を言えば、この手の本を読むことがあるのだが、なんだかその通りにポジティブに考えると気が滅入ることがあったんだよな。よくよく考えてみると、そういうときというのは、自分に自信がないのだが、それを抑圧してるようなとき。
喩えて言うならば、「自信のない自分」をもう一人の自分が「そんなのは気合で自信がつく」とせっついているようなもの。自分で自分を責めているのに等しいのだ。
この実験に参加した自信のない人々が落ち込んでも不思議はない。
大切なのは、自分がいまどんな気分でいるのか正確に知ることが始まりであって、自分自身の感情をむやみにコントロールしようというのは、体が疲れて休みたいのに休ませないのに似ている。
だいたい、悪い事を考えるとその通りになるからといっておびえさせるのがおかしいし、悪い事が起こったとしても、最悪死ぬだけだと思うと意外に大丈夫だったりする。

ユングは、悪夢を見たとき、その怖いものをよく見ろ、と患者にいっていた。
実際、そうやって、戦争神経症の患者が悪夢を見なくなるようになり、神経症も回復していったというのを読んだことがある。
夢ばかりではなくて、自分の悪感情や不安にも同じことがいえるのではないだろうか。
タグ:AFPBB こころ
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2009年07月03日

吸入ステロイド剤の副作用

このところ、喘息は現れてないので、しばらく記事を書いてなかったが、久々に、「これは」と思う情報を読んだので、覚書しておく。

吸入ステロイド剤で月経に影響があるらしい。
http://blogs.yahoo.co.jp/aichanzw0725/2865200.html

薬なので副作用がないとは思わんが、月経異常とは意外だった。
でも、経口ステロイド剤の副作用も検索してみると月経異常が上げられてるから、ありうることなのかもしれない。
吸入ステロイドは体内に入っても肝臓で分解されるから全身症状が現れないという話だったが、そうでもないらしいぞ。
ということは、吸入ステロイドについてもステロイドと同じような副作用があるかもしれないということを認識しておいたほうがいいわけだ。
そういえば、どこでみた書き込みだっただろう?
しっかり思い出せない以上、書かないのがいいのかもしれないが、ちょっとそれも気になってはいたので、一応書いてみる。素人の記事であやふやなので、鵜呑みにしないで欲しいのだが、
パルミコートを使用してると鼻炎にも効く、というのを読んだことがあるのだ。それを読んで、鼻炎もちにこれはラッキーだ、と思っていたのだが、もしかするとそれは体内に吸収されて、鼻炎の部分に到達し、炎症を鎮めるのかもしれない、ということなのかもしれない。

まあ、だからといって、自己判断でやめるのはいけないが、それにしても、少しショックな記事ではある。とはいってもな、テオフィリンに頼るわけにもいかんし、病気になったら、損して得をとれといった気持ちで望まないといかんのかもしらんな、
などと、意味不明なうわごとなっとりますか…がく〜(落胆した顔)
タグ:喘息
posted by てけすた at 12:42 | Comment(0) | TrackBack(0) | 病弱日記(喘息とか)| edit | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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