2008年05月18日

「絶対」の探求 バルザック

バルタザールはその土地では名門の一族で富も名もあり、最愛の妻と幸せに過ごしていたのだが、ある日、館に泊めた貴族と化学の話をしているうちに、ある考えが彼の心を捉えた。それは「絶対」物質という観念である。その日から彼はその情熱に取り付かれ、財産も家庭も顧みないような生活が始まったのだった。
人が自らを賭けて何かを追い求めるという行為はしばしば賞賛の対象になる。そしてそれは天才という名声を伴うこともある。
が、それは恐ろしくも険しい道のりである。周りからは「錬金術士」と嘲られ、財はすべて実験材料を手に入れるために投げ出し、家族は物質的精神的2重の意味で糧を奪われてしまう。
では、何かを追い求めるのをやめてしまえばいいのだろうか?
この小説では実験をやめても、やむにやまれぬ情熱は抑えきれないことを描写している。
「絶対」を手に入れられれば一夜にして金やダイアモンドなど手に入れ放題になる、といって借財を重ねたり、家族のことはおざなりに、化学のことばかり考えていたり、ここに描かれてる男はまるで何かの依存症のようである。
まるで聖女のようで、生きてるときには自分の苦しみを夫にはぶつけず、いつも思いやりを持っていた妻はやがて心労と失意の内に死んでしまうが、死ぬ間際にバルタザールに今まで苦しんできた思いのたけを打ち明ける。
彼はそのときはショックで止めても、また再び家庭を食いつぶしながら実験をはじめて、とうとう民事死というまるで禁治産者みたいな扱いにまで落ちぶれてしまうのだ。
この悪魔とまで言われた「絶対」追求への執念は読み応えがある。
娘マルグリットの活躍が痛快。
「絶対」の探求 (岩波文庫)
「絶対」の探求 (岩波文庫)バルザック Honor´e De Balzac 水野 亮

岩波書店 1978-04
売り上げランキング : 66182

おすすめ平均 star
star永遠、それは太陽に溶けた海…
star人間の崇高さと愚かさ。
starジョゼフィンに哀悼の意を表しつつ

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
タグ:人の業
posted by てけすた at 21:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 本のこと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする