2007年11月30日

仕掛人藤枝梅安シリーズ3冊 池波正太郎

仕掛人シリーズ後半3冊一挙まとめて感想
この後半3冊は先の「梅安針供養」で対立してしまった白子屋との攻防戦がずっと続く。1つ別の話の短篇が「梅安乱れ雲」に収録されてるだけで、あとは長編が「梅安冬時雨」まで続いてると考えてもよい。
白子屋から刺客が次々放たれるのを梅安たちがどう立ち向かってゆくのか目が離せない展開に思わず一挙に読んでしまった。
昨日の味方も明日は敵かもしれない。仕掛人たちの容赦なき世界がさらに描かれている。
この話は完結することがなかったので、最終的に梅安たちがどうなるのか知ることができない。とても残念だ。

梅安乱れ雲―仕掛人・藤枝梅安〈5〉 (講談社文庫)
池波 正太郎
講談社 (2001/06)
売り上げランキング: 18830
おすすめ度の平均: 4.5
4 白子屋との死闘
5 長編

梅安影法師―仕掛人・藤枝梅安〈6〉 (講談社文庫)
池波 正太郎
講談社 (2001/07)
売り上げランキング: 59783
おすすめ度の平均: 5.0
5 シリーズ最高傑作では。
5 長編

梅安冬時雨―仕掛人・藤枝梅安〈7〉 (講談社文庫)
池波 正太郎
講談社 (2001/07)
売り上げランキング: 62119
おすすめ度の平均: 4.5
4 なんと表現したらよいのか・・・
5 未完で終わったのは、残念です。
5 続きが読みたい!
タグ:時代物
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2007年11月29日

持病を愚痴るついでに禁煙についての自分語り

ふむう、このところ調子がいまひとつ良くない。この間病院いって普段の吸入薬のほかにシングレアも処方してもらって服用していたのだが、薬が切れた。シングレア飲んでるときはまずまずでそのうち持ち直すだろうと思っていたのだが、服用しなくなったとたんPF値が下がりまくるのであった。
あーまた薬もらってこないといかんのかなあ、でもシングレアって高いんだよな。あの薬は効く人と効かない人がはっきりしていて、私はものすごく効いたのである意味良かったとは思うけど。
だって、そうじゃないっすか、薬が効かないと最悪よ、喘息って。(読点多用するとまるで発作起こしたときのしゃべりみたくみえるな)

ところでたばこと喘息についてなんだが、どうもあれは病気になったからといってやめられるものじゃないということが某所喘息関係書き込み処を読んでいて思った。そこは喘息とタバコについて書き込みしてる場所である。理論武装する人の中にはタバコは少しながら気管支拡張力があるのだからいきなりやめるのは危険だ、とかいってるし。この人ちゃんと薬もらってないんだろうか?気管支拡張剤なら病院でいくらでも処方してくれるのだからたばこに頼らなくてもいいのになあ、なんて思ったがそこには書かず。その書き込みは別の人への返信だったので。
結局、やめられないと言ってるんだけれども、それは言い訳でしかなく、やめる気がないということなんだろうな。
別にやめられないのを非難してるわけではない。実際どんなことでも心の底からやろうという気にならなければ長続きしない。それが禁煙にもいえること。
一日の喫煙本数が関係してるのかどうかは知らないけれども、少なくとも最盛期は1日1箱半、節煙後1日7〜8本吸ってた私も吸ってるときは絶対やめられないよなあ、と半ばあきらめながら吸ってたんだが、今考えるとなぜやめなければならんのかという動機が弱かったのでやめられなかったということに思い至る。
だからといって、「絶対やめると誓ったのにまた吸ってしまった。私はやっぱり意志が弱い」と自暴自棄になることはない。
「絶対やめる」と誓えば禁煙が成功する、などとおまじないのように考えるのは本末転倒。それならむしろ「禁煙を成功させたいから」「絶対やめる」と考えたほうがいいのかもしれないしね(笑)
しかし、長々と書いたが喫煙が喘息には良くないという確かな報告を私は見ていない。アレルゲンが人によって違うように、煙草がアレルゲンでなければそんなに苦しくないものな。だから大丈夫というわけではないのはもちろんそのとおり。まあ、たばこの場合一番危ないのはCOPDですかね。あれは喘息とよく似た症状なので混同されることも多いのではないだろうか。
いや、そういえば禁煙の理由として喘息の薬代に当てるといったほかに喘息で息のできない苦しさを味わって、COPDはこれ以上きついのかもしれない、それはやだ、と思ったのもあったな。書いてて思い出したよ。
タグ:たばこ 喘息
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2007年11月27日

それってどうなの主義 斎藤美奈子

冒頭に「それってどうなの主義」宣言と称して、この言葉の意義を説明している。それによると、違和感を感じたときに「それってどうなの」とつぶやくことで“違和感を違和感のまま飲み込まず…(略)…言い出しにくい雰囲気に穴を開け、小さな変革を期待すること”なのだそうだ。
で、斎藤美奈子の「それってどうなの」はなかなかに溜飲が下がる。
最初の「日章旗のお取り扱い」から飛ばしてるものな。学校は日章旗の掲揚に伝統とか格式とか言ってるが、その扱いときたらまるでなっちゃいない。だからもう適当でいいじゃない、って論旨にはいいとこ突いてるな、とうれしくなってしまったし。
この著者が何かを論ずるとき、連想するのは無責任で言いたい放題の親戚(美奈子さん流でいうとオジオバ)への抵抗。言い換えればこれは世間の圧力への抵抗、ということになる。皮肉や揶揄がどうしても多くなるのは真っ向から反論しても埒があかないということを悟ってるからなのかもしれない。
というわけで、私はもう彼女の信者になりつつある。
それってどうなの主義
斎藤 美奈子
白水社 (2007/02)
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おすすめ度の平均: 3.5
3 少し物足りない
4 斎藤美奈子執筆誌(紙)探訪
5 ファン待望の斉藤美奈子節爆発エッセイ集
タグ:時事
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2007年11月23日

王の挽歌(上)(下) 遠藤周作

大友宗麟の一生を描いた小説。
戦国時代は領土を守り、さらに拡大していずれは天下をとるのが当たり前のように思われていただろう。最初に宗麟と秀吉が対面する場面がある。秀吉がまさにその具現ともいうべき人物としたなら、宗麟はそれとは対極にある人物だといっていい。
名門に生まれた宗麟は武芸があまり得意ではなく、学問などの方に才があった。大名には珍しくもないことだろうが、大友家にもお家騒動があり、それを見てきた宗麟は人間不信になる。人間不信になった場合、人はどう生きるのか、いろいろあるだろうけど、宗麟の場合はそれを宗教に求めたのである。禅も学び入道までしたがいまひとつ不信があった彼のもとにフランシスコ・ザビエルが現れ、彼の心に影響を与える。
宗麟は国を治めてゆくのに人を殺さなくてはならないという善をするために悪をなさねばならないことについて考える。また、自分自身の悪そのものについても考えるのであった。
既存の価値観に漠然と不満をもつものの立場上新しい価値観にも身を預けることをためらう、そんな宗麟の煮え切らなさと苦悩がよく描かれている。
王の挽歌〈上巻〉 (新潮文庫)
遠藤 周作
新潮社 (1995/12)
売り上げランキング: 145336
おすすめ度の平均: 5.0
5 「武将」でも「英雄」でもなく「人間」

王の挽歌〈下巻〉 (新潮文庫)
遠藤 周作
新潮社 (1995/12)
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タグ:戦国 切支丹
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2007年11月21日

シッダールタ ヘルマン・ヘッセ

「デミアン」といい、この「シッダールタ」といい、どうも魅了されるな。それはなぜなのかちょっと考えてみると、どちらも自分自身を生きることとはどういうことなのかを描いているからだろうと思う。
「シッダールタ」では主人公のシッダールタが真理を求め遍歴をしてゆくのだが、その流れはいささか常軌を逸しているものの、平凡な人間が経験するであろう、感情の流れが描かれている。高邁な理想をもったのに、やがて落ちて煩悩だらけになってしまう様などは、こんなに立派ではないがなんとなく身につまされるような場面でもあるな。
それなのに、なぜ私たち凡人はシッダールダと違ってしまうのか。凡人とは言いがたいが、友ゴーヴィンダとの会話にその答えがあるであろう。
して、その答えが結局はシッダールタが若いころ考えたこととあまり違ってないのが面白い。
シッダールタ
シッダールタ
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ヘルマン ヘッセ Hermann Hesse 岡田 朝雄
草思社 (2006/01)
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おすすめ度の平均: 4.0
3 ヘッセによる仏教への質問
5 真理がわかる小説
タグ:悟り
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2007年11月19日

梅安針供養(仕掛人・藤枝梅安) 池波正太郎

シリーズ4冊目は長編でこの1冊が1つの話になっている。斬られて瀕死状態の侍を助けたのだが、その侍は記憶を失っていた。一方、仕掛の話が持ち込まれるが、その相手と記憶喪失の侍にある共通点を見つけ出した梅安はその関係を洗ってみることになるが…
とうとうきたか。仕掛をやってる以上、いつかはくるんじゃないかと思っていたことが今回は描写されている。
小杉が今回も活躍し、もう彦次郎同様すっかり仲間のようである。
短篇も面白いが長編では突っ込んだ背景も描かれてるのでより話の内容に入り込める要素も多くなってる。
無駄なエピソードで紙面稼ぎしてるような文が見当たらないのは流石。
梅安針供養―仕掛人・藤枝梅安〈4〉 (講談社文庫)
池波 正太郎
講談社 (2001/06)
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おすすめ度の平均: 4.5
4 じっくりと、濃く描かれた長編
5 個人的には短編のほうが好きなのだけど
タグ:時代物
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2007年11月18日

安徳天皇漂海記 宇月原晴明

入水した安徳天皇は珠の中に閉じ込められて生き続けていた。その珠をめぐっての伝奇または幻想小説。
とはいえ安徳天皇が主役を果たすわけではなく、この珠を見た人物が数奇な運命をたどってゆく物語だ。
二部構成で第1部では源実朝の側に仕えていたという人物が実朝とその珠との出来事を語るのだが、この部分があまり物語を読むというより、事実関係を聞いてるような塩梅でちょっと読むのがつらかった。しかし、第二部を読み始めて、第1部で語られたことがわかっていないと話に没入できなくなるのがわかったので、きちんと読んでおくに越したことはない。
安徳天皇の琥珀の玉は日本の神話から遠く南海の果てまで読者を導き、エキゾチックで幻想的、そして滅びのシーン、など美しくよく構成されているなと感じた。
安徳天皇漂海記
安徳天皇漂海記
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宇月原 晴明
中央公論新社 (2006/02)
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おすすめ度の平均: 4.5
3 壮大に広がるファンタジーの世界
5 せつなくも壮大な歴史ファンタジー
5 伝奇小説の絶品
タグ:伝奇 幻想
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2007年11月17日

孤剣(用心棒日月抄) 藤沢周平

「用心棒日月抄」の続編。国許に無事帰った青江又八郎であったが、先般の藩主毒殺に絡んで、その証拠となるべき書類が持ち出されてしまった。その者を追うため再び江戸へ舞い戻ることになる。
密命のためまたもやその日暮らしの用心棒家業を務めながらの探索。
前作とはまた雰囲気が変わり、目的がはっきりしているせいでもあろうか、スピーディな展開で読むのを中断するのが惜しいくらい没入してしまう。
ただ、連作は8編あるのだが、それにまんべんなく藩の密命の仕事を絡ませなければならないという事情があったのだろう、やや中ほどのそこの部分に、話を引き伸ばしてるのかな?と思ってしまう部分があった。もちろんそれで面白さが半減されるということはなかったのだが、途切れなく一気に読んでいたせいでちょっと気になった部分。
孤剣―用心棒日月抄
孤剣―用心棒日月抄
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藤沢 周平
新潮社 (2003/10)
売り上げランキング: 27696
おすすめ度の平均: 5.0
5 またもや江戸へ、又八郎君。
5 サスペンスとユーモアの両方を味わえるシリーズ2作目です
5 又八郎、ガンバレ!応援したくなるせつなさ。
タグ:時代物 剣客
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2007年11月16日

高丘親王航海記 澁澤龍彦

7篇の連作短篇集で、高丘親王が同行の僧と天竺へ旅立つ場面から始まる。
親王が真珠をもらう場面がある。同行してる僧は真珠を「病める貝の吐き出した美しい異物」といってそれを忌避したがるが、親王は「この世にあるかぎり美しいものは大いに楽しむべきではないか」と考える。
この真珠はとある暗喩とも読めるのであるのだが、それとは別に物語の中で親王の体験する出来事そのものも真珠に例えられるのではないかと読み終えて思った。
とかくこの世はむごたらしいことも多いのであるが、親王のような魂をもつ人間を通してつむぎ出される物語はまるで真珠のようなのである。
折に触れ読み返したいような作品。
高丘親王航海記 (文春文庫)
渋澤 龍彦
文藝春秋 (1990/10)
売り上げランキング: 18153
おすすめ度の平均: 5.0
5 天の蒼穹へと融け入るような七つの夢幻譚
4 もっとお元気な頃に執筆して頂きたかった...
5 ただただ手を合わせたくなる作品
タグ:幻想
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2007年11月15日

乗り切れず…

今年も鼻炎になって薬をもらったのはいいが、それで症状が落ち着いてきたころ、PF値が急激に下がりだし、咳と喘鳴が出るようになってきた。
自転車もちょっと遠乗りすると厳しくなり、これはまずいかも、と思ったのが先週。でも今週になれば定期通院の日があるからそのときでいいや、と軽く考えてまずいモードになってから数日後に病院へ行く。
症状をひとしきり話してから診察を受けたが、
「うん、発作起こしてますよ。」といわれ、呼吸機能の検査を受けることに。
なんだかホースにマウスピースをつけたものをくわえて思いっきり息を吸ったり吐いたりするのだが、ただでさえ呼吸が苦しくなってるのに、これはつらかった。
結果。正常な人だと息を吐いたあと、肺の中の空気は全体の4分の1が残ってるのだが、私の場合半分も残っていて、
「思ってるより良くないですよ〜」ってことらしい。
ちなみに肺機能は100%でこちらは問題なし。昔喫煙してたわりにはいい結果だな。
まあ、それはともかく、そういうことでお薬増量となった。
色つきの痰も出るので抗生物質と風邪薬、シングレア、いつもの吸入剤、そして、とうとう発作止めメプチンが処方されてしまった。
初めて治療してから発作らしい発作を起こしてなかったのに、今回起こしてしまったからなあ。
喘息、ほんとに油断ならない病気だとつくづく思った。
タグ:喘息
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2007年11月14日

梅安最合傘(仕掛人藤枝梅安) 池波正太郎

仕掛人シリーズ第3弾。前作と同じように梅安や彦次郎の穏やかな日常生活と仕掛が渾然一体となってる。
今回の本ではいろんな事情が錯綜しており、請け負った仕事の裏に個人的な思惑などもからんできて第2弾の「梅安蟻地獄」より面白く読めた。
一方では人を助ける鍼医者であり、仕掛人との明暗がより濃くなってきているように思う。
許せない人物だから殺すのか?しかし、それは殺さなくてはならないのだろうか?
そんなことを考えさせられる「殺気」という短篇が心に残る。
仕掛人生活にはどこか無理がくるのは当然だろう。この本ではもう捕まったらそれで裁きを受けてもかまわない、とつぶやく短篇も登場する。
梅安最合傘―仕掛人・藤枝梅安〈3〉 (講談社文庫)
池波 正太郎
講談社 (2001/04)
売り上げランキング: 40128
おすすめ度の平均: 4.0
4 日本語は色っぽい
タグ:時代物
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2007年11月13日

チョコレートコスモス 恩田陸

珍しく、寝食忘れて読みふけった。演劇を始めたばかりだが、その演技力で周囲を驚かせる一見平凡な少女と、幼い頃から天才子役といわれ現在は将来を嘱望されてる若い女優の2人を軸に話が進む。
稽古場でのエチュードや配役を決めるオーディションの様子があり得ないくらい派手で、エンターティメントとしてかなり面白かった。
同じ演劇を扱って先行する作品に有名な「ガラスの仮面」があるが、両者ともその大げさぶりがよく似ている。
演劇を見ている人の反応がセリフを追うたびに克明に説明されていて、自分がそういう風に思う演技とはどんなものなのか、独自にイメージしながら読める点が小説の強みでもあるのだろうな。
欲をいえば最後話の途中で終わってしまった感があり。続編でも書く予定なのかな?
役者にスポットを当てた内容なのでこれでいいのかもしれないが、演劇のほかの部分にも少し踏み込んでもらえるとありがたかった。
チョコレートコスモス
恩田 陸
毎日新聞社 (2006/03/15)
売り上げランキング: 117614
おすすめ度の平均: 4.0
5 続きが読みたい
3 面白いです
3 惹かれるものあるが・・・
タグ:演劇
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2007年11月12日

未来からの手紙 カレル・チャペック

未来の国々を旅し報告するという形式で主にヨーロッパを中心に政治状況を風刺した「未来からの手紙」の他、言葉の使い方についていささか皮肉まじりで書いたような「言葉の批評」、ポルノグラフィーについての見解である「低俗的エロス」小話についての見解「小話の自然誌」の4本が収録されている。
いつもながらのことではあるが著者の観察眼の鋭さには敬服する。「未来からの手紙」は1930年代に書かれたものであるにもかかわらず、その国の気質みたいなものが浮かび上がっていて、今でも通用する部分が多い。
日本の、さまざまな権力は民衆を起源とすることが認められていて、その権力は神のようなものであるが、しかしミカドは国民の代表者だから国民はミカドの中に自分自身と自分の持つ神のような力をみるのだ、といった指摘は、結構今も変わらないものなんじゃないかと思ったりもする。
「言葉の批評」ではいくつか印象に残る文章があった。
“「誰かに真実を話す」といえばふつう、その人を罵ることを意味してる”とか
“われわれが人生で「自分の役割を演じて」いたら、現在のわれわれにはよくあることだが、これほど愚かで、道徳的にぶざまな者ではなかったかもしれない”等等。
それとは別に、役人というのはどこの国でも一緒だな、と笑った文章があるので引用しておこう。
【文化】の項目から。
“どうして!われわれ役人は詩や思想のためにほんのわずかなことしかしなかったというのか?そうだ、さしあたっての決定を示そう―遅滞なく設置すべきものは、1、詩と思想のための大学、2、詩と思想の収集と保存のための研究所、3、詩と思想についての所轄省のアンケート、4、―他にまだ必要か?―……”
未来からの手紙―チャペック・エッセイ集 (平凡社ライブラリー (159))
カレル・チャペック 飯島 周 Karel Capek
平凡社 (1996/08)
売り上げランキング: 442779
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2007年11月10日

用心棒日月抄 藤沢周平

国許で藩主暗殺の内情を偶然耳にし、そのことで人と斬りあいになってしまったため脱藩して江戸へ逃れてきた青江又八郎は口入れ屋から仕事をもらいながら生活している。刺客もやってくるという緊張を強いられる生活である。そんな中で請け負った仕事はなぜか同じ頃に起こった吉良と浅野の刃傷沙汰で起こった争いと関わっているものが多く、自然にその成り行きを見ることになる。
用心棒として請け負った仕事について描かれてる短篇的な部分と赤穂浪人たちが討ち入りを果たすまでの様子を町人たちの視点から捉えた部分、そして国許からの刺客と戦い、その日を生きながらえてる脱藩者としての物語の3つが絡み合った連作短篇集である。
その日暮らしの日常と刺客に備えなければならないという緊張、そのあたりが読んでいて引き込まれてゆく。また、又八郎を通じて赤穂浪士たちのその日までが第3者の視点で描かれて、忠臣蔵の裏舞台をのぞいているようでもあった。
用心棒日月抄
用心棒日月抄
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藤沢 周平
新潮社 (1981/03)
売り上げランキング: 30543
おすすめ度の平均: 5.0
5 歴史小説を好きになったきっかけの本
5 素晴らしい時代小説
5 用心棒稼業
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2007年11月08日

梅安蟻地獄(仕掛人藤枝梅安) 池波正太郎

「殺しの四人」に続くシリーズ第2弾。前作では梅安がこの裏家業に入ったきっかけや肉親とのつらい再会など梅安の個人的事情なども書かれていたが、この本ではそうしたことがあまり書かれてなく、仕掛そのものの話に絞られてきた。
梅安はただ頼まれたから仕掛けるという殺人マシーンではなく、彼なりにその仕掛ける人物の非道さに捨てては置けぬと仕事をするという筋立てが目立つ。
どんな理由であれ人を殺すことはやはり非道ではないかと思いつつもやっぱりやりたい放題でまわりが迷惑するような人物が仕掛ける相手なものだから気分的にカタルシスがあるのだ。
梅安がある子供を物陰からそっと伺って気にかけてるくだりがある。その子供は奉公先の主人から酷い扱いをされているのだが、梅安の気質がうかがえる部分である。
梅安蟻地獄―仕掛人・藤枝梅安〈2〉 (講談社文庫)
池波 正太郎
講談社 (2001/04)
売り上げランキング: 39499
おすすめ度の平均: 4.5
4 本作で形を成した梅安シリーズ
5 美しき作品群
5 短編集
タグ:時代物
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2007年11月07日

ヨブへの答え C.G.ユング

ヨブとは聖書「ヨブ記」に出てくる敬虔な人のことである。この人はヤーウェとサタンの賭けのお陰でとんでもない不幸に襲い掛かられ、一体なぜこんな目にあわなくてはならないのだ、と嘆く。
その「ヨブ記」についてユング独特の解釈を試みているのがこの本「ヨブへの答え」である。
実は最初この本を手にしたのは一年以上前のことなのであるが、聖書を読まないと全然話が見えてこないことが始めの数ページでわかり、そのままほったらかしにしていた。
それからしばらく後に外国の小説などを読んできて背景にキリスト教の思想に行き当たったりすることもいくらかあったため、これは一度聖書を読んだほうがいいのかも、と思って、今年の春から毎日少しずつ読んできたのであった。そして一通り読み終えて改めて「ヨブへの答え」を読み出したのだ。
まあ、それはどうでもいいですか。
本題に戻ろう。
ユングはこの本でヨブとヤーウェの対決はヤーウェが全能ぶりを延々と語り、ヨブが自分の無実を語るのをやめて口を閉ざしたとき、人間が神より道徳的優位に立ったと述べる。
そこから神が受肉して人となろうとする兆しが見え、やがてキリストという人物となって登場するのだと解釈する。
ユングは「神を信じますか?」と問われて「神を信じない、神を知っている」と言ったことがあるのだが、その意味はこの本を読んでわかる。
なるほど、確かにこういう解釈では「信じない」となるのも無理ならぬことではあるな。
それにしても、旧約聖書を読んだときに感じたヤーウェの横暴さと、新約聖書に出てくる神様の優しさとはえらい違いだったので、なんだろうなあ、と思っていたのだが、1つの見解が得られてためになった。
ヨブへの答え
ヨブへの答え
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カール・グスタフ・ユング 野村 美紀子
ヨルダン社 (1981/03)
売り上げランキング: 284726
おすすめ度の平均: 5.0
5 宇宙的真実に迫るおそろしい本
タグ:聖書
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2007年11月05日

アレルギーマーチktkr

ああ、タイトルが莫迦だ。ちょっと調子が良くないのでつい軽薄なことを、などと言い訳はよそう。
そうです、喘息が一息ついたと思ったら鼻炎がやってまいりました。
10月頃に風邪をひいたように思ったんだけど、頭いたいのとかは直って軽い鼻詰まりだけが残っていた、がそれはだんだんひどくなりとうとう口呼吸しないと窒息する状態にまでなってしまったのだ。
去年、私はやはり鼻炎で点鼻薬と抗アレルギー薬のお世話になったが、今年もまたそれらの薬に頼らなくてはならなくなった。
これではまるでアレルギーマーチ。いい年こいて。

アレルギーマーチとは
アレルギー疾患にかかりやすい人(とくに小児)が、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎などを次々と発症すること。1つの疾患を抑えると別の疾患が出てくるようになり、あたかもアレルギー疾患が行進して連なるような印象から、こう呼ばれることがある。
gooヘルスケアより抜粋
タグ:鼻炎
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2007年11月03日

花と火の帝(上)(下)  隆慶一郎 

徳川家によって無力化されようとしている禁裏の中でなんとか自由になろうと抵抗を試みる後水尾天皇に鬼の子孫と言われた八瀬童子である岩介が影から支援するという伝奇物語。今日でいう「超能力」を駆使した岩介と敵との戦いが熱い。
徳川に代表される武家が武力で頂点に立とうとするのに対し、後水尾天皇は今まで禁裏が無駄な殺し合いをしなかったことで人民の支持を得ていると岩介に語り、戦うときも相手を殺さないようにと命ずる。
その制約が敵との戦いでこの小説に面白みを加えているのではないかと思う。
殺さなければ自分が危うくなるという場面で岩介は途方もないような策を使って乗り切る。
残念ながら著者はこれを終わらせることなく世を去ってしまった。
これからどんなふうに展開するかもっとも興味を引かれる場面での中断だけに未完が惜しまれる。
花と火の帝〈上〉 (講談社文庫)
隆 慶一郎
講談社 (1993/09)
売り上げランキング: 160640
おすすめ度の平均: 5.0
5 なぜに未完・・・・・
5 もっと読みたかった
5 隆慶一郎と呪術

花と火の帝〈下〉 (講談社文庫)
隆 慶一郎
講談社 (1993/09)
売り上げランキング: 175454
タグ: 時代物
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2007年11月01日

発狂した宇宙 フレドリック・ブラウン

SF雑誌編集者キース・ウィントンは墜落したロケットの真下にいたのだが、彼は生きていた。
ただし、彼が今いるのは謎の紫色の生物が人間と同じように生活していたり、宇宙旅行が当たり前の世界なのであった…
少しネタバレになるけど、これは多次元宇宙論を使って構築した小説である。だが、これはそれだけにとどまらない面白さがある。
なんといってもキースが今いる世界についてなんとか情報を得て生き延びてゆこうとする努力の描写に読み応えがあるのと、後半、ここがどういう世界なのかわかったときの皮肉というかユーモアというか、ここまで読み進めるともう一度読み返したくなるような結末なのである。
なんというか「ブラウンさんもお人が悪いよねぇw」とつぶやきたくなるような話だ。
発狂した宇宙 (ハヤカワ文庫 SF (222))
フレドリック・ブラウン 稲葉 明雄
早川書房 (1977/01)
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おすすめ度の平均: 4.5
5 何度も読みたくなる金字塔。夢一杯、ナゾ一杯で魅力キャラ満載
5 多次元宇宙ものの傑作
4 誰にでもオススメできます
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